足利義昭……室町十五代将軍として無理矢理担がれ、織田信長に翻弄され、姑息に諸大名を動かそうとしながら尽く裏切られた将軍として、織田信長や明智光秀の物語では情けなく描かれる人物。 その基本路線は、この作品でも踏襲されている。ただ他と違うのは、この物語が足利義昭の立場に立っているという点。たったそれだけのことで、義昭にあっさりと感情移入できてしまうのは、描かれた彼の心情に「勝者ではない」私達に響く普遍性があるからだろう。 一握りの勝利からこぼれ落ちた私達に必要なのは、敗者の物語……敗戦後を充実して生きるための指針なのだ、と作者は宣言し、どこまでも英雄とはかけ離れた義昭の、出立から敗走後の人生までを、現在と過去を行き来しながら辿る。 何しろ義昭は、状況に翻弄されすぎる。将軍にならなければ死ぬ他ないという、究極の選択。その中で必死に立ち回るうち、したたかに、しかし次第に狂気を伴って、小物ながらそれなりの人物になっていく物語は、同様に小物である私達に消えない爪痕を残してゆく。その敗北に塗れて歪んだ人生も、覚悟を決めて駆け抜けた義昭には上々だったのだろうかと、考えさせられる。 義昭の最期と作者の旅の終点には、お仕着せの感動の代わりに、淡々とした感傷がある。
あうしぃ@カワイイマンガ
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将軍足利義昭 信長を一番殺したかった男

しょうぐんあしかがよしあきのぶながをいちばんころしたかったおとこ
ジャンル:歴史
最新刊:
2020/05/12
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将軍足利義昭 信長を一番殺したかった男
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