あらすじかつて私は、実の弟を誘拐した。植物館の職員として隠れるように生活していた大森日向子のもとに、突然、弟の夏樹が姿を現した。七年ぶりの再会により、胸に蘇る耐えがたき痛み。私はかつて、この弟を誘拐した―― あの時抱いた、甘く危険な感情。少年ではなく「男」になった弟。私たちは、禁忌を前に立ちすくむ。新鋭が繊細に描き出す、情念と愛の物語。
姉の思春期の"暴発"。決してそれは一時の気の迷いや「なんとなく」ではなかった、というのは彼女の今を見ればわかってしまう。 弟への想いは、俗に言う一線を越えてしまっているものと周囲に判断されるが…弟もまた決して姉をただの姉弟の関係だけと考えられなくなっていたとしたら? 当時その"暴発"によって周囲の人間として一家離散という経験をし、それ自体を赦すことが出来ない家族。 当時のソレへの後悔と懺悔と、それでも抑えられない自身のなんだかわからない"欲"に自己嫌悪に陥る。 当時から経過した時を悔やむように生きてきた彼女がそうならざるを得なかった「気持ち悪い」周囲の人間たちと、彼女のイマを見せられると、これは決してお姉ちゃんとイチャラブなどとは言えないのだ。