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中上健次は、戦後文学界に突出した小説家である。 漱石や鴎外、谷崎や三島に比肩するほどの、我らが時代の作家だ。 その中上が、漫画原作のためオリジナルに作品を書き下ろす。描き手は『迷走王 ボーダー』(原作:狩撫麻礼)のたなか亜希夫…このニュースに触れた時、心が震えた。「真正の小説家が、本気で漫画に立ち向かうのか。遂に漫画は“そこ”まで来たのか」と。 結果は、拍子抜けするような失敗であった。 だが、これ以降現在に至るまで、中上健次のような才能が、真っ向から「漫画」に挑んだことはない。 その意味で、本作は「伝説の失敗作」である。 作品内に乱反射するテーマを見れば、中上が本気であったことは間違いない。たなかも渾身の仕事で応えている。 しかし、マイク・タイソンまで繰り出したその「漫画」は、まるでこれまで存在した劇画のパロディのように上滑りした印象のまま、未完に終わった。 たなか亜希夫であるなら、盟友・狩撫麻礼との諸作は当然として、石井隆と組んだ『人が人を愛することのどうしようもなさ』や、ヒット作『軍鶏』(原作:橋本以蔵)のほうが、明らかにそのマリアージュは成功している。 なぜ中上健次ほどの巨大な才能がこんなにも不格好な空振りをしたのかを考えるのは、興味深い比較文学論になりえるだろう。 とにかく、これだけははっきり言える。 「漫画は“そこ”をとうに超えてしまっていたのだ」と。 アクション・コミックス版『南回帰船』1巻のあとがきに、中上は書いている。 “「南回帰船」はオデッセウスのように自己発見の旅に出るその少年の叙事詩である” 刊行当時、自分はこの一節を読んで、「おお、これは狩撫麻礼×谷口ジロー『LIVE!オデッセイ』へのオマージュ、あるいは挑戦なんだな」と思った。狩撫とのコンビで有名なたなかと組んで、「オデッセウス」とか「自己発見の旅」というなら、当然そうなんだろう、と…。 だが、それは間違っていたようだ。 中上健次は、たぶん『LIVE!オデッセイ』を知らなかったのだろう。 惜しい。 もう少し中上が、自らが挑むジャンルへの知識と執着を持っていれば、結果は違っていたかもしれなかったのに。 フォークナーがハワード・ホークスと組んで、ヘミングウェイの原作を映画化した『脱出』やチャンドラー原作の『三つ数えろ』が出来たような、そんな「伝説」になっていたかもしれないものとして、自分は今も『南回帰船』を忘れられずにいるのです。 以下は、余談として。 『南回帰船』の原作は、散逸していた中上の原稿を収集した「劇画原作小説」として単行本化されており、その監修者である大塚英志による「解説」もネット上にはある。中上が目指した「劇画」と大塚原作の資質は随分と異なるのだが、検索してみるのも一興だと思う。
(とりあえず)名無し
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南回帰船
南回帰船
たなか亜希夫
たなか亜希夫
中上健次
中上健次
あらすじ
出会いは都会のゲームセンター。ここから熱い物語が始まった── 母をたずねて放浪する混血児・竹志、中国人でカンフーの名手・継革(チグ)、レーサーをめざす元暴走族・順、順の恋人・ジーナ。芥川賞作家がコミック界に初めて書き下ろした、広大なスケールと熱きロマンの青春巨編‼
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かぶく者

かぶく者

舞台上の役者心理や、目に見えぬ芸の深奥までも言語化&視覚化! 話題騒然の歌舞伎漫画! かぶく快感! 「かぶく」とは、歌舞伎役者がご見物(観客)の心をつかみ、意のままに揺さぶる事をいう。それは無上の快感なのだ!面白がらせりゃ、勝ちだよな?見る者を「かぶく」天才・新九郎(しんくろう)が、伝統と格式の歌舞伎界に殴り込み! 伝統も格式も関係ない、ただご見物(観客)を“かぶく”のみ!駆け出し役者の市坂新九郎、新宿でのストリート歌舞伎を手始めに芸の道をわがまま気ままに突き進む!!
軍鶏

軍鶏

【コミック1~3巻分収録】真昼の昼下がり、少年は両親を殺害した。エリート銀行員の父と美しき母の、まとわりつくような愛情が、自分のすべてを吸い尽くすという妄執にかられ、少年は凶行に及んだ。収監された少年院で、少年は「空手」と出会い、その牙と爪を研ぎ続ける。何者にも自分自身を奪われないため、何より、殺されないためにーー。
リバースエッジ 大川端探偵社

リバースエッジ 大川端探偵社

東京・浅草…隅田川沿いの雑居ビルに、小さな探偵社があった――。『オールド・ボーイ』『湯けむりスナイパー』のひじかた憂峰、『軍鶏』『かぶく者』のたなか亜希夫。常に“人間”を描き続けた唯一無二の原作者と、漫画界随一の画力で驚異的な描写を続ける稀代の絵師。名作『ボーダー』で多くの信者を生み出した黄金コンビが、20年ぶりに奇跡の復活!!
ネオ・ボーダー

ネオ・ボーダー

80年代のバブル絶頂期の時代に、マーケティング社会の行き着く果てを喝破し、絶大な支持を得た『迷走王ボーダー』。20年を過ぎてもなお、青春のバイブルとして奇跡の漫画が、ついに復活。蜂須賀、久保田、木村の名トリオが復活したのは、なんと平安時代末期。作者は作・ひじかた憂峰(狩撫麻礼の別ペンネーム)、画・たなか亜希夫のゴールデンコンビ!!
Glaucos

Glaucos

激闘の舞台は海へ! もう1m記録を伸ばせばその分、空気のある海面までが遠くなる! ただ一息でどこまで深く潜れるかを競うフリー・ダイビング。その死に直結した恐怖のバトル世界、壮絶な戦いに、イルカに助けられ生まれた少年・シセが挑む!! この少年こそ、海の神に選ばれし者だった。世界のトップ選手もそのリアリティを絶賛した、フリー・ダイビング漫画を、『迷走王ボーダー』、『軍鶏』の鬼才たなか亜希夫が描く!!
ア・ホーマンス

ア・ホーマンス

記憶喪失の男の正体を探っていく表題作と他2作品を収録した狩撫麻礼&たなか亜希夫の傑作集。愛人からエッチをせがまれたノーパン喫茶の店長は、地下街にたむろするホームレスの中から背広姿の背が高い男をアルバイトに雇い、2~3時間で戻るといって店から抜け出す。その後、店で働くノーパン嬢から名前を聞かれた背の高い男は、名前をどうしても思い出せないと語って……!?
リバーエンド・カフェ

リバーエンド・カフェ

宮城県石巻。あの震災から数年が経ったこの地に住む高校2年生・入江サキはある夜、謎の男と出会う。不埒な輩に絡まれていたところを助けられたサキ。北上川の中瀬に灯る明かりに誘われ、少女は不思議なカフェへと辿りつく。そこで出されるコーヒーには、人生の楽しさや悲哀が入り混じっていた――。石巻出身のたなか亜希夫が震災後の故郷を描く最新作、1・2巻同時発売!!
迷走王 ボーダー

迷走王 ボーダー

家賃三千円だと言う住まいは、なんとアパートの元共同便所! 10年間大陸をさまよい続けたこの男には世間のルールは通用しない! そう…本当は冴えた男なのに、世の中のうっとおしいことをパスするために、馬鹿を装ってブラブラしてる…。現代社会に棲む“集団意識”という名の悪魔に食われそうになっても、決して物事の本質は1つではないということを忘れないで欲しい。世を撃つ、奇跡の人生哲学マンガです!! ※双葉社刊行のコミックス第1巻を分冊しております。