あらすじ

秋葉と結婚する瞳。TV・舞台に高い評価を得て、幸せの絶頂で妊娠する。だが秋葉は、ニューヨークに向かう飛行機で事故に遭い、死んだ。瞳はショックで早産する。母子とも助かったが、茫然自失のまま。秋葉の葬式後、皆が復帰を切望して、山本が瞳のための脚本『秋桜の咲く丘』を書いた。それを読んで、女優に戻る決心をする瞳。今では瞳の良き理解者となった阿久津のプロデュースで、若森と真紀が共演したスペシャル・ドラマは大成功した。瞳と真紀は、日本を代表する女優に成長する。だが仕事が忙しくて構って貰えない息子・秀一が、次第にグレていくのを、瞳は止められなかった。
女優(1)

幼い頃から女優になることを意識していた浅倉瞳。16歳になって連続ドラマ主演女優オーディションに応募した。合格者はすでに大手芸能プロが推す上原さやかに決まっていたが、最終選考に残った瞳は審査員を唸らせる演技を見せる。その才能に注目したプロデューサーの白石は、瞳をスカウト、独立して事務所を立ち上げた。スナックをやっている瞳の母は、高校を出ることと20歳まで処女でいることを条件に、芸能界入りを許可。高校を卒業するまでしっかりレッスンを受けた瞳は、スペシャルドラマ『春嵐』でデビューを果たす。その間に先の主演ドラマで演技の拙さを酷評されたさやかは、芸能界から消えていた。

女優(2)

ドラマ撮影で瞳の演技力が皆に認められる。『春嵐』が放送され、大人気になり仕事依頼が瞳に殺到した。瞳は『春嵐』で演じた清楚で控えめで健気な薫のイメージを守っていくことを決心する。プロデューサーの阿久津は、瞳を使って局内での出世を狙い、来年の春からの連ドラを用意した。その前に映画をやりたい瞳は、『青春の空』に出演の決まっている矢作に、映画の共演を頼む。演技派俳優であるがプレイボーイの矢作に抱かれかけるが、母との約束を盾に拒んだ。矢作も瞳が一人前になるまで待つと約束。阿久津は白石の願いに瞳が映画に出てから連ドラ出演をすることを承知するが、条件として瞳の処女をよこせと要求した。

女優(3)

映画プロデューサーの榎に会う白石と瞳。ヒロイン幸恵役が日向真紀に決まりかけていたことを知る。それは何と、さやかだった。本格女優として、演技を勉強し直してきたのだ。2人で演技テストを受けることに。榎たちからの課題は、『挫折』の表現。瞳は母の挫折を手本に決め過去を聞いた。大部屋女優だった母、脇役だった男と付き合い、その男から仕事を取るためにある脚本家に差し出され、強姦される。冷酷な世界に絶望して去った後に、妊娠を知った。どちらの男の子供か判らない。しかし産まれた瞳を、生きる希望としてきたのだ。瞳は母の挫折を演じた。しかし結果を待つ間に、瞳は榎と矢作がバイ・セクシュアルであることを知る。

女優(4)

幸恵役を勝ち取った瞳だが榎と矢作の関係で獲れたかも知れないという疑問は残った。真紀は別の役を貰い、『青春の空』の撮影を開始する。すぐに矢作と主演の黒田が、瞳を巡って反目する。矢作の部屋に行き演技の助言を受けた瞳は、姦られかけるが、矢作がバイだと知った事を明かし、危機を脱した。しかし戻る途中に黒田に会い、矢作との仲を誤解される。黒田は瞳に冷たくなり、そこへ瞳のスキャンダルを知りたい真紀が接近して、肉体関係を持った。主な共演者を全て敵に回してしまった瞳。矢作と瞳のことを黒田から聞き出した真紀は、今度は矢作にモーションを掛けて、抱かれるのだった。

女優(5)

黒田に冷たくなる真紀。真紀と瞳が凄まじい演技をぶつけ合った映画は、クランク・アップした。黒田は矢作と瞳が出来ていると、トップ屋の仙石にチクる。週刊誌に記事が載って、大騒ぎになった。矢作のゲイ疑惑まで出てどんどん悪くなる状況下、あくまで純粋で健気なイメージを守る方策を練る瞳。阿久津は早く瞳を抱かせろと、白石に迫った。記者会見で矢作との結婚を発表することで、瞳は清純派女優のイメージを守る。そして阿久津に処女を与え、全てのトラブルを回避した。映画『青春の空』は大ヒット。瞳は最優秀新人女優賞を獲得した。真紀も助演女優賞を獲る。こうして、瞳の十代は終わった。

女優(6)

矢作と挙式する瞳。阿久津との約束、連ドラ『夢の彼方』の撮影開始。これも大ヒットした。瞳のその後の作品は未定だったが、真紀の方は文芸大作『浪漫』の主演に抜擢される。白石は瞳を、ポルノ映画を撮っていた神林に引き合わせた。脚本に感動した瞳は、『どこまでも』に出演を決意する。TVの連ドラに出た矢作は、共演者の加奈と浮気した。それを週刊誌にスクープされ、ドラマを降ろされてしまう。映画『浪漫』と『どこまでも』は、共に大ヒット。しかし『どこまでも』の方が観客動員記録を伸ばし、主演女優賞は瞳が獲得した。だがその後作品に恵まれず、低迷が続く。一方干されている矢作は、丹張商事の詐欺商法に取り込まれていた。

女優(7)

瞳の母が子宮癌で入院し、手遅れだと判る。暴力団とも組んでいる丹張商事に出資者になることを勧められた矢作は、勝手に瞳の名も出資者に連ねてしまった。全ての仕事をキャンセルし、母の看病をする瞳。そこで遂に父の名を聞き出す。一人は名脇役のベテラン俳優・沢村拓二。そしてもう一人は、人間ドラマの巨匠、脚本家・山本宗一だった!まず沢村に会った瞳は、彼が無精子症だと知った。母が亡くなった後山本に会った瞳は、父娘の名乗りを果たした後、彼に脚本を依頼する。償いとして書くことを承知した山本の脚本を受け、瞳のドラマ『めぐり愛』は制作開始した。しかし丹張商事に警察の手が入る!矢作や、出資者にされていた瞳にも…。

女優(8)

清純女優のイメージを守るため、矢作に助けを求める瞳。矢作はドラマ撮影が終わった後、記者会見で全ての責任を被った。また瞳も、全財産を被害者救済に投げ出すことで、世間の非難を回避する。ドラマで共演した山本の娘・千賀子とも姉妹の名乗りを上げ、公にはしないで助け合っていくことを誓った。ドラマは大成功し3年後、人気実力派女優の地位を不動のものにした瞳は、舞台『鬼嫁鬼姑』に出ることになった。若手天才演出家・秋葉秀介のオファーである。舞台一筋の大女優若森照子にしごかれるが、足を挫きながらも立派に舞台を勤めあげたことで認められた。その間次第に秋葉に惹かれていく瞳。初恋と言っていい感情だった。

女優(9)

秋葉と結婚する瞳。TV・舞台に高い評価を得て、幸せの絶頂で妊娠する。だが秋葉は、ニューヨークに向かう飛行機で事故に遭い、死んだ。瞳はショックで早産する。母子とも助かったが、茫然自失のまま。秋葉の葬式後、皆が復帰を切望して、山本が瞳のための脚本『秋桜の咲く丘』を書いた。それを読んで、女優に戻る決心をする瞳。今では瞳の良き理解者となった阿久津のプロデュースで、若森と真紀が共演したスペシャル・ドラマは大成功した。瞳と真紀は、日本を代表する女優に成長する。だが仕事が忙しくて構って貰えない息子・秀一が、次第にグレていくのを、瞳は止められなかった。

女優(10)

最終巻。高校生になった秀一が、傷害事件を起こす。母を恨む気持ちはエスカレートし、不良仲間に入ってコカインにも手を出し、逮捕されてしまった。瞳はマスコミのバッシングを受け、世間全体が敵になる。心を閉ざした息子に母の演技が通じるか?瞳は一世一代の勝負に出た。女優を引退し、秀一と白石の3人で沖縄に移り住む。母としての闘いをドキュメンタリーに収めながら、遂に秀一の心を開かせることに成功した。放映されたドキュメンタリーは大評判になり、瞳は女優復帰。白石と30年愛を結実させて結婚した。仕事においても、私生活でも、清純派女優としてその半生を全うした天才女優。その名は、浅倉瞳。