あらすじ

1941年12月8日未明。数時間後に上海からアメリカへ発つ恋人・アンナのことを想い、文龍は埠頭に立って船を見つめていた。文龍から恋人のことを聞いた龍は、かつて自分も愛する女性と引き離されたことを語る。その時、上海港に火の手が上がり…。
龍―RON― 1巻

押小路男爵家の長男・龍は、武道専門学校校長・内藤の教えに感銘を受け、武道専門学校「武専」に入学することになった。その登校初日の朝、乱暴者たちとケンカをしている龍を見ている男がいた。「武専」で顔合わせを済ませた龍の前に、そのときの男が現われ…。男は部専教授・内藤高治だった。次第に戦争へと傾斜していく昭和初期の京都を舞台に、ひたすら剣の道を極めんとする男・龍の破天荒な生き方を描く!!

龍―RON― 2巻

押小路家を叔父の卓磨が訪ねて来た。彼に将来のことを聞かれた龍は、武の道を極めたいという。そんな龍を卓磨は祇園に連れ出す。そして龍の幼なじみで舞妓の小鈴のいる前で卓磨は龍にピストルを向け、武道がどれほどの役に立つのかと言い出すが…。

龍―RON― 3巻

武専生は即位礼=御大典の警護に当たることになった。剣道科の龍たちは、素手でも戦えるようにと柔道科に稽古を付けられる。だが、柔道科には、龍を異常に敵視する百鬼と言う男がいた

龍―RON― 4巻

龍の出生の秘密が明らかになる。龍は母・紅子が日本人だと聞かされていたのだが、実は中国人だったのだ。龍の父・一磨によると、彼が中国にいた頃に出会い、龍の妊娠と同時に姿を消してしまったという。そして一磨は、彼女が紫禁城後宮の女官らしい事を突き止めたと言うのだが…。

龍―RON― 5巻

女学校に通い始めたていは、学校の帰り道に龍と待ち合わせていた。そんなとき街中でヤクザにからまれる朝鮮人を見かける。そこに朝鮮人街の親玉シン・スンシンが現われ、ヤクザたちをあっという間に投げ飛ばした。シンの強さに感服した龍は、一緒にいたスションに、シンに会わせてくれるよう頼むが・…。

龍―RON―(6)

ていとの結婚に反対された龍は、家を出て職探しを始めた。しかし、まだ学生の龍はなかなか仕事にありつけない。なけなしの金をはたいて買った饅頭を橋の下で食っていると、横から伸びる手があった。浮浪者の老人と饅頭を賭けた龍は負けてしまい、その上、着物まで取られてしまう。

龍―RON―(7)

押小路の家に戻った龍は、自分が世間知らずだったと悟り、ていとの結婚のためにも勘当してくれと一磨に言う。だが一磨は二人の結婚を認め、三人だけの仮祝言を挙げることになった。しかし、ていを追って、警察の一団が押小路家を捜索にやって来た。

龍―RON―(8)

野上球子の子供を預かったていは、五人の子供を抱え生活に困っていた。そんなとき、突然訪ねてきた球子の夫に世話してもらい、映画撮影所の食堂で働くことになる。撮影所の食堂で働き始めたていは、スター女優の入沢たき子が台本の読み合わせをしているのを見ていたところ…。

龍―RON―(9)

初めて準主役を与えられたていは、脚本に疑問を抱いていた。監督から三日間の猶予を与えられ、演技プランを練るてい。そのような新人らしからぬ行為は、撮影所内で不評を買いかねない。ていはそれに演技で答えることが出来るのか!?

龍―RON―(10)

入沢たき子のプロダクションに入ったていは、入沢邸に住み込むことになった。女優のイメージ作りを最優先するたき子は、ていを龍から遠ざけようとする。その頃龍は、祇園に戻っている小鈴の家の前を通りかかり、家に上がって話をしていた。

龍―RON―(11)

溝田の映画で娼婦の役を演じているていは、悩んでいたシーンで完璧な演技を見せ、監督の絶賛を浴びた。女優の仕事に今までにない充実感を得るてい。一方、四国に向かった龍は、砂金採りは果たしたものの、依然、金鉱を見つけ出せずにいた。

龍―RON―(12)

今度の役、華族令嬢の役作りのため、入沢と東京の高級店で買物をして歩くてい。華族の出の入沢は、逆に役作りのために新聞の売り子をはじめる。入沢の付き人・関根はそれを快く思わず、レストランにていを残したまま、財布を持って店を出てしまう。困ったていは…。

龍―RON―(13)

映画の撮影中にも関わらず、ていは岡山時彦といっしょに温泉に行ってしまう。新聞は恋の逃避行と書きたてる。しかし、ていは岡山の体を気遣ってついて来てしまっただけだった。撮影が再開され、ていは見事な演技を見せることで、スキャンダルをささやく周囲を黙らせてしまう。

龍―RON―(14)

押小路の銅山が住田財閥に売れることになった。しかし、龍は住田の本店支配人・大薮に賄賂を送っていた蒲郡を辞めさせてしまう。小鈴の家で、叔父の卓磨に会った龍は、この収賄事件をリークしたのが父の一磨である事を知らされる。

龍―RON―(15)

思わぬスキャンダルに見舞われて大部屋の女優に戻っても、けなげに生きるてい。そんな彼女の元へ、一通の電報が届いた。そこには「チチキトク」の文字が…。故郷へ帰るため、会社の経理に給料の前借りを頼むていだったが、あっさり断られてしまう。

龍―RON―(16)

小田安次郎監督の映画『息子よ』の杉子役をもらったてい。ていは、二年ぶりの主演となるこの映画に、全身全霊を傾けていた。だが監督は、何度も何度もテストをくりかえし、なかなかOKを出さない。そして、監督は自分を無にして演じることをアドバイスする。

龍―RON―(17)

鳳花のいた京劇の稽古場、科班(コオパン)を鳳花と共に見学に来た龍。鳳花は世芳との立ち回りの中で、自身の過去を思い出していた。鳳花の冷酷なまでに鋭い剣さばきに怯え切ってしまった世芳に、鳳花は役者の道を優しく諭す。そんな鳳花を見て、龍はある決意を固める。

龍―RON―(18)

京劇役者鳳花と知り合い、京劇の魅力にとりつかれた龍は、日中友好のために京劇招聘に動く。ていを起用したポスターを貼ったり、飛行機を使ってビラを配ったりと派手な宣伝活動をした。この龍の行動を見た卓磨は、龍を呼び出し、押小路グループの幹部会議で決まったことを伝えるが…。

龍―RON―(19)

中国皇帝の秘宝が、各国の争いの種になってしまうと恐れた龍と鳳花の母・高瀬紅子こと趙紅華(チャオホンホア)は、その秘宝を隠してもらうため一磨に手渡した。一磨が秘宝の在りかを知っていると聞いた鳳花は、押小路家を襲撃する。しかし、一磨の答えは「すべて燃やしてしまった」だった。

龍―RON―(20)

脱獄した龍をかくまった後、家に戻ってきた小鈴の元に卓磨から電話が入り、突然、神戸の別荘に来るように言われる。龍と一夜を過ごした後すぐに卓磨と会う気にはならなかった小鈴ではあったが、卓磨が龍の逃亡先を知っていることを知り、神戸の別荘に向かうことにするが…。

龍―RON―(21)

ある日、文龍は雪の中で瀕死状態の龍を発見した。文龍の必死の看病のおかげで、すっかり回復した龍。しかし、自分の名前以外、過去の記憶を失っていた。自分が誰なのか分からない龍は、ボーッとしているかと思えば、突然「自分は前世では皇帝だった」と言い出したりして…。

龍―RON―(22)

小説家を目指し、上海で学ぼうとする文龍は、記憶を取り戻そうとする龍とともに上海に行くことを決意する。上海への旅を始めた龍と文龍の二人。杭州の村で、一人の老女が中国兵に乱暴されているのを見た龍たちは老女を助けようとするが…。

龍―RON―(23)

龍を探していた田鶴ていが、日本兵の慰問団の一員として上海を訪れていた。慰問を終え、工藤少将の招きで、満映期待の新星・林香琴とともに上海一の繁華街、南京路へ向かう途中、日本軍による検問で香琴が通行証を求められ…。

龍―RON―(24)

ギャングの世界に身を投じ、上海の「娯楽の殿堂」大世界の警備副主任の職を得た龍。ギャングが上まえをハネ、彼らも承知の上で行なわせていたスリやカッパライ…日常茶飯事となっていた悪事を、龍は許さなかった。大世界の治安をよくするため、小悪党たちを一掃しようとするが…。

龍―RON―(25)

1939年の上海。そこでは、日増しに激化する抗日テロ活動と、対・抗日テロ機関との死闘が演じられていた。龍は、同じ上海ギャングの幹部・沈鷹(チェンイン)に、市民を巻き込むテロ活動には、反対の旨を告げる。と、その時、龍と沈鷹は路上で突然の襲撃を受ける。

龍―RON―(26)

上海の地で遂に再会した龍とてい。同時に、龍は失っていた記憶を取り戻すが、日本へ戻らず中国で生きていくことを心に決める。そんなある日、ていのもとへ、満州映画協会からスカウトの話が舞い込む。その話を固辞するていに向かって、龍は結婚しようと告げる。

龍―RON―(27)

秘宝・黄龍玉璧を追って、ていとともに列車で北京へと向かう龍。北京で別れる予定のていと、しばしの幸福な時を過ごす龍だったが、同じ車中にはその命をねらう刺客が!日本憲兵による荷物検査をかいくぐり、暗殺の機会をうかがう刺客に対し龍は…。

龍―RON―(28)

満映の映画に疑問を感じたていは、現地の人間が集まる地元の映画館を見て回る。そこで目にしたのは、上海製の中国映画に熱狂し、涙する観客たちの姿だった。翌日、ていは満映の甘粕理事長の部屋へ呼びつけられる。満映の映画の問題点に気付いたていに、甘粕が命じたのは…。

龍―RON―(29)

息子・冬馬のふとした表情に龍の面影を求めつつも、卓磨との親子三人の時間に幸せを感じる小鈴。一方、龍が生きていることを小鈴に言えなかったていは、龍に「どこかに自分の子どもはいないか」と尋ねる。日本から脱出した時の記憶を失っている龍は、はっきりと答えることができず…。

龍―RON―(30)

てい監督作品「狼争虎闘」の巡回上映班に加わった龍と曹徳豊は、満州国内を移動しながら秘宝を持ち去った鳳花の行方を追っていた。同じころ、満映の甘粕理事長は、龍の叔父・卓磨と財界の実力者・愛川を呼び出し、秘宝探しの資金援助を依頼する。