僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~

女性用風俗のセラピストという仕事 #1巻応援

僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~ 水谷緑
nyae
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最近、女性用風俗をテーマにした漫画が増えたなと感じていたけど、女性用風俗の店自体がコロナ禍をきっかけに急増したと書いてあり、そんなところにも影響があったことに驚きました。 「こころのナース夜野さん」を好きで読んでいたのもあり、同じ作者の新作として気になり読んでみました。 主人公のセラピスト(女性に直接サービスをするスタッフ)・悠はとても真面目に仕事に向き合っており好感が持てるものの、こういう人ばかりではないんだろうなと、風俗という業界である以上、警戒心は持ってしまいますね。一方で、女風きっかけで生活に様々な影響が出ている女性たちを見ると、コントラストの強い光と闇がある奥深い人間模様が描けるのは風俗業界特有の面白さだなと思います。 サービスをする側にも悩みはつきません。半年も持たないことが多いというセラピストの仕事を3年も続けている悠の今後も気になります。 ちなみに作者がこのテーマで漫画を描こうと思ったきっかけのひとつに渡辺ペコさんの1122があったといい、確かにいたな!と思い出しました。あまり詳しくないですけど、セラピストを重要なキャラに持ってきた1122って先進的な漫画だったのかなと思いました。

私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記

老成せざるを得ない子供の悲しみ、辛み

私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記 水谷緑
兎来栄寿
兎来栄寿

「ヤングケアラー」という言葉を知らない方や、自分が実際にそうである・そうだったという人に切実に届いて欲しい一冊です。 「ヤングケアラー」とは、「介護や病気、障がいや依存症など、ケアを要する家族がいる場合に大人が担うような責任を引き受け、家事や看病、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」のことであると幕間のコラムで解説されています。 発売から3ヶ月が経ちましたが、本日発売の電子ストアもあるということで、改めてこのタイミングで推薦しようと思います。 本作は、さまざまな子供たちの実際のエピソードを元にして作られたあるヤングケアラーの少女のお話で、単なるフィクションではないことが明示されて始まります。 統合失調症の母によって物理的にも精神的にも傷付けられる日常を送る主人公・ゆい。父親も弟も助けてくれず、認知症の祖父もおり、家事は自分がやって当然。年相応に遊ぶことが生業である同級生たちとは、まったく違う生活を強いられていますが、なかなか自分の境遇が特殊であるとは当事者は気付きにくいものなんですよね。それがたとえ、妄想の中では何度も母親を殺したり、ぬいぐるみを破壊しては直したりして何とか心を保っているような、危うい状態であったとしても。 また、そんな窮状を何とか大人に伝えられる機会があっても、事勿れ主義の権力を持つ輩によって闇に葬られてしまい、子供一人ではいかんとも動かし難い状況の絶望感も描かれます。助けを求めることすら諦めてしまうようになる、そんな悲しいことがあるでしょうか。 私も認知症の祖父を自宅で介護したり、一親等以内ではないですが統合失調症の身内がいて途方もない大量の妄想を子供の頃からじっと傾聴したりして生きてきました。また、幼い頃からネグレクトやDVその他により強い殺意を抱かされ絶対にこの遺伝子を後世に残さないと決意させられた父親とは、若い頃に絶縁して久しいです。なので、多少形は違えど共感できるポイントが多々ありました。 本当の自分の感情を切り離して辛い事象をワンクッション置いて俯瞰的に捉えるやり方などもそうですし、冒頭のミヒャエル・エンデの『モモ』を読みながら「夜 皆が寝た後一人で本を読んでいるのが安心で安全な時間」と綴られるモノローグは正に自分と重なりました。バラバラになりそうな心を繋ぎ止めてくれてたのは、私にとってはマンガを始めとする物語やキャラクターたちでした。 恐らく、この本を読んで初めて「自分も助けを求めていいんだ」と思える子もいることでしょう。そういう子たちに届くように、ぜひ色々なところに置かれていて欲しい作品です。当事者の子供にも読めるように、と総ルビになっているのは素晴らしい配慮です。 また、現実に存在する個々別々の地獄を知っておくことは、社会でさまざまな人に出会った際の想像力の助けになります。そういった意味でも、広く読まれる意義のある作品です。

私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記

老成せざるを得ない子供の悲しみ、辛み

私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記 水谷緑
兎来栄寿
兎来栄寿

「ヤングケアラー」という言葉を知らない方や、自分が実際にそうである・そうだったという人に切実に届いて欲しい一冊です。 「ヤングケアラー」とは、「介護や病気、障がいや依存症など、ケアを要する家族がいる場合に大人が担うような責任を引き受け、家事や看病、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」のことであると幕間のコラムで解説されています。 発売から3ヶ月が経ちましたが、本日発売の電子ストアもあるということで、改めてこのタイミングで推薦しようと思います。 本作は、さまざまな子供たちの実際のエピソードを元にして作られたあるヤングケアラーの少女のお話で、単なるフィクションではないことが明示されて始まります。 統合失調症の母によって物理的にも精神的にも傷付けられる日常を送る主人公・ゆい。父親も弟も助けてくれず、認知症の祖父もおり、家事は自分がやって当然。年相応に遊ぶことが生業である同級生たちとは、まったく違う生活を強いられていますが、なかなか自分の境遇が特殊であるとは当事者は気付きにくいものなんですよね。それがたとえ、妄想の中では何度も母親を殺したり、ぬいぐるみを破壊しては直したりして何とか心を保っているような、危うい状態であったとしても。 また、そんな窮状を何とか大人に伝えられる機会があっても、事勿れ主義の権力を持つ輩によって闇に葬られてしまい、子供一人ではいかんとも動かし難い状況の絶望感も描かれます。助けを求めることすら諦めてしまうようになる、そんな悲しいことがあるでしょうか。 私も認知症の祖父を自宅で介護したり、一親等以内ではないですが統合失調症の身内がいて途方もない大量の妄想を子供の頃からじっと傾聴したりして生きてきました。また、幼い頃からネグレクトやDVその他により強い殺意を抱かされ絶対にこの遺伝子を後世に残さないと決意させられた父親とは、若い頃に絶縁して久しいです。なので、多少形は違えど共感できるポイントが多々ありました。 本当の自分の感情を切り離して辛い事象をワンクッション置いて俯瞰的に捉えるやり方などもそうですし、冒頭のミヒャエル・エンデの『モモ』を読みながら「夜 皆が寝た後一人で本を読んでいるのが安心で安全な時間」と綴られるモノローグは正に自分と重なりました。バラバラになりそうな心を繋ぎ止めてくれてたのは、私にとってはマンガを始めとする物語やキャラクターたちでした。 恐らく、この本を読んで初めて「自分も助けを求めていいんだ」と思える子もいることでしょう。そういう子たちに届くように、ぜひ色々なところに置かれていて欲しい作品です。当事者の子供にも読めるように、と総ルビになっているのは素晴らしい配慮です。 また、現実に存在する個々別々の地獄を知っておくことは、社会でさまざまな人に出会った際の想像力の助けになります。そういった意味でも、広く読まれる意義のある作品です。

こころのナース夜野さん

3巻から一気に引き込まれた

こころのナース夜野さん 水谷緑 山登敬之
ひさぴよ
ひさぴよ

1巻を読んだ時点では、良い漫画だとは思いつつも、深刻な心の悩み(特に自殺願望、リストカットの心理とか)にそこまで共感できず、しんどすぎてもう続きを読むことはないかなと思ってたところ、作者さんの最近のツイート(https://twitter.com/mizutanimidori/status/1603767672566530048 )「暴力を振るう男性が何を考えてるか」を目にして、この回のテーマが刺さりすぎて衝動的に一気に完結まで揃えて読んだ。3巻は「男の生きづらさ」がテーマなのだが、自分も男性である以上、まったく他人事とは思えない内容だった。 https://manba.co.jp/boards/106869/books/3 そして精神医療の世界は決して”向こう側”の話ではなく、想像していたよりも地続きの問題であり、深刻でないにしても、メンタルや依存症問題に興味があれば、読んで非常に勉強になることが多かった。男性の加害問題だけでなく、5巻では女性側のパワハラ・DV加害も取り上げられていて、こちらも「なぜ人に怒るのか」というプロセスが明確に説明されており、今まで感じていたモヤモヤが晴れたような気持ちになった。 その他にも語りきれないほど多種多様なテーマが盛り込まれている「心のプロ」を仕事とする人々描いた作品。 この先も、心が不安定になることがあったら読み返したい。