※ネタバレを含むクチコミです。
これの前作の「もっけ」では日本の妖怪を描いてましたが、 今作は近代中国を舞台にした、道教における仙術・妖怪漫画です。 ざっくり説明すると、大好きな姉を蘇らせたい主人公が、道教の世界に足を踏み入れる、という物語です。 中国の道教の世界観が本格的に描かれているので、日本でお馴染みの仙人やキョンシーとはイメージが大分異なります。 仙術や世界観について細かい説明はされないですが(そもそも道教とは明確な定義が無いらしい)、それ故に道教へのリアリティを持たせているように感じます。 巻末などの参考文献を見る限り、作者の熊倉隆敏氏は妖怪に対する深い造詣を持つだけでなく、道教についても相当調べられているように思います。 まぁ道教の知識がなくともマンガは楽しめるのですが、それだと魅力が伝わりきらない可能性はあるかもしれません。 図書館などで参考文献の本を借りて読んでみたり、ネットで少し道教について調べるだけでも、より深く作品を楽しめるのは間違いないです。言葉では説明できないような奇想天外な展開ばかりですから。 仙術バトル以外にも、ぎょっとしてしまうようなエログロも多いので、やや読者を選ぶタイプの作品かもしれませんが、全4巻で伏線もきっちり回収し、綺麗に終わっていて読後感の良い作品です。
音楽でもそうなのですが、トリビュート企画というものが好きで、クリエイターが自分の才能と愛で持って新たに作り上げる作品はまた違った魅力を見せてくれます。 この本を実際に手に取って貰えれば分かることなのですが、一流の漫画家さん達が「蟲師」という作品にがっぷり4つに組み合い、自分達のアレンジで、新たな作品を産み出しています。 外れの無いアンソロジー集であり、作者の手を離れた蟲師として一読の価値があります。
彼方の世界の住人達、 モノノケ、妖怪、アヤカシ。 彼らは善悪や敵味方の区別も明確でないままに 突然に現れて人間に、人生に関わりあってくる。 例えそれがどんなに唐突で理不尽であろうとも。 関わらない防御術も、オールマイティな解決策もない。 そんな一見(というか普通の人には見えないが) 怪しく危険で魑魅魍魎が跳梁跋扈する百鬼夜行の世界。 なにが善悪で誰が敵味方か判らない世界。 触れるべき部分と触れてはいけない部分を 認識して守りつつ、というか守っていると 思いつつ生活するしかない世界。 「もっけ」はそういう世界という設定になっている。 だが、それはごく普通の世界だとも言える。 リアル現代社会だって実はそんなもんだ。 見えている人や見えていない人、 見えているようでいて見えていない人がいて、 見えているからといって解決できるわけでもない。 何をどうしてもしょうがなく憑かれてしまうこともある。 だから、自分が強くなるしかないのだ。 怪異な存在が見えてしまう姉。 憑かれる体質の妹。 祖父が祓いの術をもち、彼方の世界の存在も理解しているので 助けてはくれるが、けして無敵な存在ではない。 なので姉妹は互いを想い助け合う。 だが、結局は自分が強くなるしかないのだ。 家族に保護されている幼年期をへて、 学校に通うようになり、親元を離れていく。 それはリアルな世界だ。 人は誰でもいずれ、何が善悪で誰が敵味方か判らない世界へと 飛び込んでいき、一人で生き抜かねばならない。 「もっけ」は怪異が共存する異世界を描きながら じつはリアルな社会を生きていく姉妹の成長譚を 描いていると想う。 むしろ世の中が理不尽で魑魅魍魎が跋扈する世界で あることを、怪かしが干渉してくる世界に置き換えることで より判りやすく面白くマンガとして描いているように感じる。 結構ホラーな展開やシーンもあるけれど、 けして陰鬱な救いようがない気分で終わることなく読めるのは 主人公姉妹の純粋で明るいキャラによるものだろうか。 面白くて深い漫画だと想った。
妖怪が見える姉・静流と、憑かれやすい妹・瑞生と、カッコいいお祖父さんのお話。都会から片田舎に越してきた姉妹は、性格は違いますが、日々妖怪と遭遇してはトラブルに遭います。その道のプロであるお祖父さんの元、妖怪とうまく付き合っていく方法を少しずつ教わり、次第に成長していく姉妹を見守る親戚のような気分になります。妖怪ものですが、派手な「妖怪退治」するわけではなく、妖怪自体はこちらから働きかけなければ悪さはしない、あくまで昔から、自然にいたものとして描かれています。民俗学や民間伝承に則っているからこそ、妖怪の存在というものに対して、逆に真実味が出ているように思います。
一般的にマンガという表現方法はミステリーには不向きだと言われてるけど、登場人物が多くてかつ会話劇がメイン、そして視覚情報自体が状況の理解には一役買うけども事件の伏線を示す上ではそこまで寄与しないということもあって、この作品に関してはコミカライズはかなり合ってたんじゃないかと思う。 登場人物が多いだけに掘り下げる要素も多くて、実は2巻まではかなりスローペースに感じていました。ただ最終3巻、事件の種明かしから幕引きに至るまで一気に転がっていく展開は心地よい。 全3巻読了済。
トリビュート作品って、今まで面白いモノに出会ったコトが一度も無かったんですが、自分が寄生獣好きってのもあるけど、ムッチャクチャ愛に溢れてて良かった。 萩尾望都先生のスピンオフとかホント天才的っす。 平本アキラ先生のは大爆笑しましたw
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