※ネタバレを含むクチコミです。
トムソーヤと呼べるドラマ性には欠け、シナリオ展開も乏しいのが残念でした。沖縄民族学、海洋古代史等の探究に比重が大きく、にわかに信じ難いオカルト路線なのもあって、いまいち入り込めなかったです。
実在する美味しい手土産のガイドとして「役に立つ」ところに最初は目がいったのだけど、それだけでなく文学などのリベラルアーツがどのように「役に立つ」かが鮮やかに描かれている。 主人公の寅子は人を尋ねる際に手土産を持っていく。そしてその手土産には作られた背景や愛され方にストーリーがあり、「おもたせ(手土産をもらった側が持ってきた側に出すことらしい)」として一緒に食べながら話していくうちに、相手の心に引っかかっていた悩みが解きほぐされ、少し前向きになる。 リベラルアーツが「役に立つ」と言ってしまったが、これは道具のように「役に立つ」という意味ではない。会話を続けるためのネタではないし、ましてや知識の豊富さを誇示するためでは決してない。「誰と何を食べ、どんな話をするか(あるいはあえてしないか)、という全体」を作り上げるものなのだ。 そういった人格を備えたキャラクターとして寅子は魅力的だし、「コミュニケーショングルメ漫画」とはなるほどそういうことかと思った。
美味しいものをお届けに行くだけならこんなにおもしろい漫画にはなってない。 誰と何を食べるか、何のお酒を合わせるか、どんなお話をするのか、そこまで揃って「おもたせ」であるという美学を感じる。 和服をモダンに着こなし、文学と美味しいものに対する愛と知識に溢れた寅子の存在が魅力的なので、ついつい一緒におもたせを食べたくなってしまうんだろうなあ。 歴史的資料なんてものはうちにはないけど、寅子とお酒を酌み交わしたい! 美味しいものの情報も簡単に調べられるし、対面でものをお届けしたりするのも難しい今日この頃だけど、素敵な文化はなくならないでほしいなあ。
チクッとした痛みもあるけど心地よくて、今まさに体感しているようなシズル感もある作品集でした。 生温い水や乾いた風の温度まで伝わってきます。酸いも甘いも知った上に成り立つ瑞々しさ。重くないけど軽くもなくて、爽やかだけじゃない後味が残ります。 1番好きなお話は「青空ファインダーロック」です。 カメラマンである主人公が高校の同級生だったグラビアアイドルのレタッチをやるお話です。 青春って青春真っ只中にいるときに感じるものじゃなくて、過ぎ去った後の甘い痛みこそ青春なんだよな。なんて思いました。 過ぎ去った後の甘い痛みを感じてるこの瞬間も、後に青春だったなあなんて思うのかもしれません。屋上でのシーンの空の青さが印象的でした。カラーで描かれている訳じゃないのに。 「パラレル」は長嶋有さんの原作を読みたくなりました。全然違う印象になりそう。 とにかくどの作品も素晴らしいのでぜひ読んでほしいです!
家事と育児を両立する日々に悪戦苦闘しているエッセイコミックです。読むと母親って本当に大変だなぁって思いますね。常に男性よりも女性のほうが、責任が重いし大変な思いをすることが多いのは少々不公平だなと。でもこの漫画はそんな不公平感よりも、ポジティブに突き進んでいるお母さんの姿に心打たれました。 2匹の飼い猫も仲が良くて赤ちゃんを守ろうとしている様子が伺えて、猫好きとしては羨ましい限りです。 イマドキの育児事情が分かって勉強になるし、その合間にユーモアがあって面白かったです。
好きなことを仕事にすればこその ヤリガイや苦しみもあるだろう。 まして仕事に関わる人それぞれに 立場や考えの違いはあるのだから。 ゲーム製作の現場を舞台にした漫画。 ゲーム製作者でクオリティに拘る天川と 契約条件厳守、とくに納期に拘る星野。 二人の葛藤に更に会社や業界の事情が絡んで ドラマが進んでいく。 そのドラマはとても面白かった。 だが自分としては同時に 「ああ仕事に関するスタンスは 自分とは結局違う人たちのドラマだな」 とも考えさせられた。 自分としては仕事は「納期を守るのが最優先」 だとは思うので、どちらかというと考え方は星野寄り。 やはり天川にはイラついてしまった。 だが地味だが更にイラついたのは、 元請け?販売会社の責任者の仙水だ。 仙水が映画監督を例にして疑問を提示した 「クリエイターはワガママなほど優秀だという奇妙な価値感」 という言葉や 天川に言った 「お前はパトロン付きの芸術家じゃないんだ」 という言葉。 それらには共感した。 だが全然共感できなかったのは 納期を延ばすことに関して 「みんながちょっとづつ嫌な思いをするだけだから」 といったこの言葉。 そしてこれとほぼ同じ言葉を後に天川も 天川なりの言い回しで使っていた。 そのちょっとづつを自分もしたくないし、 他人にもさせたくないから 普通の人は仕事を頑張るんだよ、と思ってしまった。 勿論、仙水も天川も言いたいことの本質はそのことではなく、 言葉のアヤだったともいえる一言ではある。 それはわかる. わかるこそ、というか、とどのつまりというか、 クリエイターとして優秀な天川と、 現場と客の間で調整に悩む星野、 管理職として優秀な仙水、 そして普通に現場での下っ端営業仕事が中心の さして優秀ではない自分とでは 「やっぱり考え方は違うわけだよな」 と思ってしまった。 身につまされた。 そういった、自分とは違うなと考えさせられた点や イラついたりした点も含めて、 東京トイボックスという漫画は面白かった。
かつては憧れましたよ、ゲーム業界。実は私、憧れただけじゃなくて初めて就職したのは大手ゲーム会社だったのです。ただ、オリエン時に「新しいゲームセンター」というお題で、「海上を移動する島状施設」というのを考え、移動は島を大巨人が頭に乗っけて行う、というのを絵付きでプレゼンしてしまうような輩がごろごろしていた世代で…。で私はドロップアウトしてしまったわけですが、今でもゲーム業界ものを読むといろいろと思うことがあります。この作品でもそうですけど、モノを作っている人たちにはある種の”熱”がある。困難にぶつかっても安易に流れず、理想を求める気質がある。本作の主人公的存在の天川は、前作よりそんな青臭い部分は控えめだけど、魂のある仕事っぷりはあいかわらず。つい、昔のあいつらはまだこんな気持ちをもち続けてるかなあなんて思ったりしてしまいました。また、一般サラリーマンにも当てはまることも多く描かれているので、こういうことはどんな仕事してても忘れちゃいけねえなあ、と自分にも言い聞かせてみたり。少し元気が出る作品です。
うめ先生の新作『東京トイボクシーズ』の舞台は、高校のeスポーツ課! 天才ゲーマーの少年と、彼をとりまく大人たちの思惑が絡み合い、序盤からワクワクがとまらない! 最新のeスポーツについても勉強になりますよ! (冒頭に出てくる頭の固そうなおじさんを反面教師にしたいところ……)
※ネタバレを含むクチコミです。