※ネタバレを含むクチコミです。
『妄想フライデー』の石田ゆうさんが、これまで描いた短編5つを雑誌・出版社の垣根を越えて収録した短編集です。 「光のゆくえ」 やっと就職できて半年働くことを続けられたと思ったら、大規模な電波障害により街の人々と共にみんなスマホが使えなくなり途方に暮れているところで「ネットを使える場所を知っている」というバニーガールに出逢う一夜の話。 「美人は三日では飽きない。」 大学を中退し就活23連敗中の25歳フリーターで、美人にトラウマと嫌悪感を持つ青年が新たに美人と出逢う話。 第84回ちばてつや賞ヤング部門大賞。 「犬も喰わない僕」 8年ぶりに東京から帰ってきた地元で、昔馴染みの画家を目指す20歳の女の子に自分は今漫画家であると偽る天才になれないアシスタントの青年の話。 ヤングマガジン月刊賞入選作。 「彼女とわたし」 外国人のような風貌の転校生が、クラスのアイドル優子の一言をきっかけに不登校になり「魔女」と仇名されるようになって、本来カーストは下なのに優子のグループに属する主人公が同じ団地に住んでいる魔女とある契約を交わす話。 「ブルーブルースプリング」 高校卒業以来7年ぶりに学校の制服を着て遊んでいたら、夜の公園で女子高生と知り合うお話。 個人的には『コミックビーム』に載っていた「彼女とわたし」がとても好きで、去年読んだ読切の中でも特に印象的だった作品のひとつです。 かわいくて穏やかなのに端々から性格の悪さを感じさせる優子ちゃん。彼女を中心とするグループに必死にしがみつく主人公。学校生活における人間関係の息苦しさのリアルさ。脆い尊厳を容易く踏み躙られた悔しさや悲しさ。それでも、そこから始まるシスターフッドの美しさ。 写実的な画風で、全作品を通して背景や小物も緻密に描かれているのもリアルさを底上げしています。生きることに向いていなかったり自分や他人を受け入れられなかったり、それぞれに思い悩む現代の人間たち。おのおのの蟠りを煮詰めながらも、最後の「ブルーブルースプリング」と巻末のおまけで読後感はすっきりとしています。 若々しさ溢れる部分もあり、今後のさらなる活躍も楽しみになる1冊です。
こういうことが起きるのを学校という場所のせいにするのもなんか違うか…と思いつつ、主人公の2人くらい刺激的で濃厚な関わりができるのも学校という場所特有だなとも思う。優子ちゃんみたいな人間が"勝ち"とされてしまうのはどこでも一緒だし。でも2人のこれからの未来は純粋に楽しみですね。
魔女、いいね。 読切のボリュームに合った内容なので無理に深くもないストーリーと設定で、描写が丁寧で、絵も上手くて、なんか背景がきれいなのが「そのぐらいの年齢の頃こう見えてたかも」って思った。 いいなぁー
地味なフリーター男(25歳・大学中退)と就活中の美人という人間関係の絶妙なパワーバランスがすごく良かった。 美人に偏見を抱いたり嫌悪するのは「本当は美人の彼女が欲しいから」っていうのは真理なんじゃないかと思う。本当に美人に興味がなければ、袖にされようが高い飯奢らされようが「次行こう」で忘れて切り替えられるはず。それができずに根に持ったり偏見を持つってことはやっぱそういうことなんだろうな。
※ネタバレを含むクチコミです。