爆音列島
爆音の虜になる奴ら
爆音列島 高橋ツトム
さいろく
さいろく
地雷震、スカイハイ、ヒトヒトリフタリ、鉄腕ガール、blue heaven、SIDOOH… 90年代後期のアフタヌーンで自分にとって1番魅力的な絵を描くマンガ家だった高橋ツトムの、まるで自伝のようだと思える漫画(勝手なイメージです。でも族上がりのマンガ家は多くはないと思うので貴重ですよね) 振り返って読み直したところ、ヨンフォアの値段に愕然とする。新車がこんなもんだったんだ、あのバブルの時代に、と。旧車の中でもHONDAでは1番人気と言えるであろう主人公が乗るこの「ヨンフォア(cb400f)」は今やプレミア付きまくりで250万ぐらいしてしまうのです。 そのぐらい憧れの単車だったし、名機だということですね。 ちなみに特攻の拓のマー坊くんが乗ってるのと同じ、だと思う(たぶん) 連載自体が90年代だったはずなのでバイクの価値としては当時もすでにちょっぴり貴重になってたはずなんですが、やはりそれでこそ憧れるわけで、少年達がなんとかして手に入れようとする様には共感を憶えます。 爆音列島も例に漏れず、奔る事に命をかける少年達の物語。 ヤンキー漫画としては意外とメジャーじゃない?と思うんですが、個人的には好きな作品。ギャグ要素が全くないのがホンモノの当時の学生ヤンキー達にウケなかったのはあるかも(あとアフタヌーンだったから月刊だしちょっと高いし?とかあったのかな) ヤングキングで復刻連載したぐらい名作ではあるんですが、それは割と最近(2016年だった…)なので、今の時代から見ると「懐かしい」「あの頃は良かった」みたいな感想になりがちで少し勿体ないですね。 あ、男子は必読だと思います。
鉄腕ガール
女子プロ野球に、太陽は昇るか。
鉄腕ガール 高橋ツトム
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
【世界と戦うアスリート漫画①〜スポーツコラム風に】 1934(昭和9)年、あのベーブ・ルースを擁した米国選抜チームを相手に一人、気を吐いた日本人投手がいた。その年、彼を中心に日本初の男子プロ野球チームが誕生する。 彼の名は、沢村栄治。背番号14。 学生野球が盛んな日本にようやく生まれたプロ野球の中心で、彼は自ら輝き、日本中を熱中させた「太陽」だった……というのは史実。 ★★★★★★ そしてここからは架空の話。 例えば太平洋戦争敗戦後に日本で女子プロ野球リーグを構想するとして、もし沢村栄治のような「太陽」が女子にいたら、どうなっただろう? カフェの女給を寄せ集めたチームの中に、ずば抜けた身体能力と負けん気を持った女がいた。彼女は化粧品会社の女性社長のチームで、日本を代表する豪腕……まるで沢村のような……に成長する。 彼女の名は、加納トメ。背番号14。 その豪速球とマウンド度胸は、周囲に夢を見させる。しかし彼女を待っていたのは、プロリーグではなかった。 女性社長と彼女の弟はプロリーグ構想を骨抜きにし、米国資本との賭け試合を仕掛ける。米国との「経済戦争」は日本中を熱狂させるが、その先に待っていたのは……。 プロリーグとは縁遠い場所で、加納トメは全身全霊で戦い続ける。勝負の場を作るために自ら前線に立ち、女が野球をやる権利を賭けた大博打を打つ。そして圧倒的な才能にも関わらず、常に格上に挑み、負けて当然のギリギリの闘いをする。 その姿は時に清々しく、時にひどく見苦しい。しかし彼女は周囲を惹きつけ、「太陽」として日本を明るく照らし、現代の我々の網膜にも忘れ難い影を焼き付ける。 ★★★★★ ……という強烈な印象を残す本作。その現実離れした物語は実際のスポーツ興行には参考にし難いと思われるかもしれない。しかし私達は本来、現実離れした圧倒的な才能・物凄いプレイを観たくて、競技場に足を運び、ニュースに一喜一憂するのではなかったか。 例えば『1518! イチゴーイチハチ!』の環会長や、『球詠』の選手達が将来飛び込む女子プロ野球の歴史に、もし加納トメがいたら……と想像するのはとても楽しい。それは彼女達が加納トメというとんでもない才能を目標にし、いつか凌駕し、歴史を上書きする瞬間を見せてくれることを期待するからだ。