理不尽はあっても救いはない、剣はあっても魔法はない、ヨーロッパ中世を模したファンタジー世界。大陸との海峡からほど近いとある街に、ひとりの女商人が店舗を構えていた。その女商人――リアノンは冷徹なやり手として名を馳せていたが、同業者に陥れられて無一文に転落。さらには贋金作りの濡れ衣まで着せられてしまう。おとなしく絞首刑を受けるか、高額の補償金を払って特赦を受けるか。有罪を宣告された法廷で、決断を迫られたリアノンは……!?
「このあいだの疫病の原因知ってる? 魔女の呪いですって……」 大陸で幾度も猛威をふるった疫病が、終息したばかりの16世紀ドイツ風ファンタジー世界。帝国自由都市ヴェルバーデンで暮らすミーナは、知り合いの印刷工房が最近発行しはじめた「新聞」に興味津々。七年前に魔女狩りで母を失った彼女は、人々に事実を正確に伝えることの重要性を誰よりも強く感じていた。 そんなある日彼女は、魔女が疫病をばら撒いたという不穏な噂を耳にする。ふだんは善良な市民が、迷信やデマに踊らされない社会を創るため……、ミーナは自ら新聞記者になることを決意する。 行動力抜群、けれども技術と経験が圧倒的に足りない新米記者が、悪意のない噂や無責任な流言が交錯するアフターパンデミックの時代を奔る!
その庭は女性が生きるための、17世紀のシェアハウス———(ミステリーボニータ2023年5月号)