様々な国の、10歳の少女達に降りかかる抑圧を描いた本作では、必ず最後に思いを胸に、押し黙る少女達が印象的だ。 サウジアラビア、モロッコ、インド、日本、アフガニスタン。各国の少女達は、女性に対する差別への苦しい思いを抱く。 差別は男性からも、そして女性からも押しつけられる「ように見える」。それは社会構造が差別的であるためだし、人の内面にこびりついて剥がれないものもある。差別を内面化するしかなかった女性も描かれる。 どこまでも苦しい現実。しかし、少女達は押し黙りながら、未来をぼんやり考える。 昨日まで幼かった、しかしあと数年で結婚も視野に入る、10歳という年齢。溌剌さと、挫折を知る前の純粋さで、これから世界と対峙してゆく少女達の、真剣な眼差しは強い。 辛い気持ちも、割り切れなさも、闘う気持ちも、彼女達と共有して、せめて共闘したいと願う。
河井克夫の原作を女性漫画家が作画する面白い試みの漫画(ひとつだけ逆のパターンもある)。コラボして面白くなってるツボが違うので一番好きな作品とかは特にない。どの作品も面白かったです。 「蛍の僧都のこと」近藤ようこ 近藤ようこさんが描くことを念頭に置かれて作られた原作だそうで、むしろ原作が存在しないんじゃないかってくらい近藤さんらしい漫画だった。 「5人いた」二宮亜子 ヨーロッパのお屋敷で旦那様が殺される事件が起こり、3人のメイドを事情聴取するが…という話。何重にもオチがあって面白かった。 「アムステルダム」安永知澄 一番独創的な作品でした。小学生達が遠足でアムステルダムにやってきてマリファナ入りのパンを食べてしまう話。色んな幻覚を見ます。 「米の回路」原百合子 当時まだ学生だった原百合子先生が描かれた作品。もしかしてこれがデビュー作なのかな?ストーリーうんぬんよりも現在の原先生の絵の上達っぷりに感動した。 「猫又」おくやまゆか 1500年生きて猫又になった小梅と元飼い主のあかねさんの都々逸対決。すごくコミカルで面白かった。 「サンクチュアリ」やまじえびね いつものやまじえびね先生とテイストが違うけど、先生がノリノリで描いたことが伝わってきた。 「片岡一郎の一日」横浜聡子 これだけ女性映画監督が原作を担当して河井克夫先生が作画をしている。起承転結の転になるようなことは何も起こらないのに面白い。片岡一郎の違う一日も読んでみたくなった。
どの話にも心に傷を持った女性が登場します。その傷は簡単に癒えることはありません。もしかしたら一生そのままかもしれません。やまじえびね先生の作品を通して見るとまるで血の流れないサスペンスのようです。そうして尚更に彼女達の痛みを感じることが出来ます。中でも表題作の「I'M NOT HERE」は重みのある話です。主人公は心理カウンセラーですが彼女自身も幼少期に兄から性的いたずらをされ、母に打ち明けても取り合ってもらえなかったことを悩み続けカウンセリングに通っています。優しい恋人と身体の関係を持つことはありますが、いつも行為の途中で意識が飛んでしまうのです。実は数年前に事業の失敗で兄は失踪しており、その心労が重なった為に母が急死します。全ての苦しみから解放されたように思われましたが、恋人との行為の時の症状は治ることはなく、タイトル通りの悲しくてシリアスな結末に終わります。シンプルなようでいて絵にもストーリーにも深みがあります。どちらがきっかけでも構わないので気になった方はぜひ読んでみて下さい。
※ネタバレを含むクチコミです。
18歳で死んじゃったミーナ。人生最後のピクニックで出会った見習い彫金師の青年への片思いを、死後も叶えようとする。つまりミーナは亡霊…。 やまじえびねさんだから肝が冷えるホラーな展開もありそうで、いろんな意味でドキドキします。「かわいそうな」だから悲しい話になるのかな。
気に入った女の子を故意に自分の恋人達と一夜を共にさせ、性的に開けていく様を嬉々として観察するミステリアスな女。この普通じゃない女に惹かれていく女の子。不思議な設定だけど読んでいて違和感がないし、まったく下品じゃない。むしろこの世界観にどんどん飲まれていく。女同士でしか得られない快楽のムードなのかな?タイトルにもなってる短編は幼い頃に性的虐待を受けていた女性のお話。あまりにも辛い経験をしていると素直に泣きも怒りも出来ない。誰にも言えない秘密みたいなことが漫画になってて感嘆しました。
様々な国の、10歳の少女達に降りかかる抑圧を描いた本作では、必ず最後に思いを胸に、押し黙る少女達が印象的だ。 サウジアラビア、モロッコ、インド、日本、アフガニスタン。各国の少女達は、女性に対する差別への苦しい思いを抱く。 差別は男性からも、そして女性からも押しつけられる「ように見える」。それは社会構造が差別的であるためだし、人の内面にこびりついて剥がれないものもある。差別を内面化するしかなかった女性も描かれる。 どこまでも苦しい現実。しかし、少女達は押し黙りながら、未来をぼんやり考える。 昨日まで幼かった、しかしあと数年で結婚も視野に入る、10歳という年齢。溌剌さと、挫折を知る前の純粋さで、これから世界と対峙してゆく少女達の、真剣な眼差しは強い。 辛い気持ちも、割り切れなさも、闘う気持ちも、彼女達と共有して、せめて共闘したいと願う。