僕の小さい頃の曖昧な記憶。ある日、道を歩いていると猫がいた。猫を追って近所の空き地に入ると、そこに猫はおらず僕より年上の女の人がいた。女性は自らをアンと名乗り、この世界の仕組みを滔々と僕に説くのであった。アンの言っていたことは本当だったのか。アンはどこへ行ってしまったのか。不思議な出会いから始まる、少年の夏の終わりのほろ苦い物語。
主人公、久住涼介は高校生。夏休みの補習に文句を言い、帰りがけに公園でジュースを買おうと自販機にお金を入れた。しかし出て来たのは飲み物ではなく変な格好をした女の人だった。女性は自らを異世界の姫と呼び、涼介は戸惑う。しかし姫の身の上の話をよくよく聞いた涼介は姫に少しずつ惹かれる。それとは別に姫の妹がまた自販機から登場し、ドラキュラは空から降臨しと亮介は騒動にあれよあれよと巻き込まれて行くのであった。少し笑えてほんのりしんみり出来るラブコメディ。
海原佳人は子供の頃から電柱の上に立っている人が見えていた。その人物は海原にしか見えないらしいが、海原は身近な存在として感じていた。大学を卒業し、アルバイト生活を続ける海原はそんなある日、電柱の人が見えなくなってしまった。海原は戸惑い、子供の頃から続けていた漫画創作活動にも手がつかない。そんな折、友人の板橋に叱咤され、電柱の人が再び見えるようになるため行動を起こす。自分を取り戻すための行動に出た海原は高校時代に好きだった女子、野崎さんと偶然再会しこのままではいけないと勇気を振り絞るが……。少し不思議でちょっぴりほろ苦い青春譚。
世界の終わりを告げるという放送が空に響きわたり、沖合で海の主と戦闘機が闘いを繰り広げる中、高校生の市原は学校前の浜辺で0点の答案を埋めていた。そこに隣のクラスの女子、佐原がやって来て「明日は文化祭ね」と告げる。全てが少しズレていてそれでいてそこにある現実を生きる二人の目眩のようなショートストーリー。
大学受験を控えた二人の少女、理香子と圭子は昼休みに学校の屋上で会話をする。二人は実の無い不毛な話を次々と繰り返し、恋愛や人間について問いを立てる。ちょっとブラックなショートコメディ。
体が弱く学校も休みがちな気弱な女の子の笹原有希子。夜、寝ていると家のチャイムが鳴った。ドアを開けてみると、そこにはとても背の高い人間が立っていた。その人間は「あなたはオリンピックの代表に選ばれました」と告げ、有希子を連れ出す。ふたりは静まり返った夜の中をひたひたと歩いて行く。途中で有希子の前に同じクラス同級生、清水くんが現れる。清水くんは有希子が片想いをしている男の子。有希子は清水くんにこの前学校で酷いことをしたと怯えだす。有希子と清水くんの間に何が? そして背の高い人の目的は何なのか? 少し不思議で甘酸っぱい青春ストーリー。
「あたしの名前は塚原めぐみ。ピッカピッカの高校生。骨折しましたトホホのホー」 オシャレをしようと貯めたお金でマントを買っためぐみ。調子に乗ってはしゃいでいたら腕を骨折。神様! しかも誰もマントを褒めてくれず地団駄を踏む日々。誰か気づけ!!あたしのこのマントに!!!! そんなめぐみのお姉ちゃんはめぐみの自慢の大人な女性。めぐみはある日同級生の男の子に告白され、それをお姉ちゃんに相談するが……。青春の甘さと酸っぱさと苦さが詰まった青春ラブコメディ。
同じ学校に通う高校生の紗良と誠一は幼馴染。とあることから2人はお姫様と従者の関係にあった。お姫様の紗良は小さい頃から従者の誠一のことが大好き。けれど気位の高い姫として誠一の前では素直になれず、いつも冷たい態度を取ってしまう。冷たい態度を取っても誠一は従順に紗良のことを慕ってくれる。でもこのままの関係でいいんだろうか…。時期的にもうすぐバレンタイン。紗良は一大決心して誠一にチョコを渡すことにする。果たして結果はどうなるか。
今から1年前の初夏の頃、学校の中庭にドーンと大きな音が響いた。仲良し女子4人組のうちの1人、二階堂紗弥香が校舎から飛び降りたのだった。彼女は何故飛び降りたのか。他の3人は紗弥香をどう思っていたのか。
静流とギビ子は高校生の頃からの知り合い。社会人になった今、久しぶりにギビ子から連絡がありお酒を飲むことに。ちょっとした2人の会話のコメディショートストーリー。おまけ1P漫画『おるすばん』収録。
ゆみちゃんがいつも通る短い橋。橋を通る度に来た道を振り返ってしまう。いつか振り向かなくなる日が来るんだろうか。短い短いほんのりなショートストーリー。
天文部の男子、中原はある日勢いに任せて以前から好きだった前島さんに告白するも、「変態!」と叫ばれ逃げられてしまう。意気消沈したまま後日部活に顔を出してみると新入部員として入ってきた前島さんの姿が。前島さんの意図は何なのか。学園青春譚。
広田さんは夢見がちな女の子。いつも楽しい空想をして過ごしている。最近はクラスの望月君のことが気になり、望月君のことばかりを空想していた。そんなある日、放課後の教室で女子が望月君と付き合うという会話を耳にしてしまい、広田さんは……。淡い恋の物語。
赤いろうそくの炎はゆらゆら揺れる。それはとある少女のぼんやりとした想い出。少女は二体に分裂し、それぞれが今までの人生を振り返る。少し物哀しいサイレント漫画。
青年は電車に乗り、物思いに耽る。頭に浮かぶのは彼女とのこと。彼女は、うつろで、儚げで、でも美しくて。思い浮かぶのは、彼女が言ってたジキボリンという言葉。電車の終着駅で、彼は何を見るのか。
幼馴染の圭一と穂之香。圭一は穂之香のことが好きだった。やがて二人が中学生になった時、世界中の空にUFOが現れた。しかし圭一はUFOに興味を示さず、ただ穂之香のことを考えていた。圭一と穂之香のもどかしい距離の物語。
昼休み、小学生の海原は友人達からミニ運動会に誘われる。運動が苦手な海原は気が重く、母と姉とに相談すると特訓をしてくれた。そしてやってきたミニ運動会当日。会場の広場に行ってみるも誰もいない…。悲嘆にくれ泣いていた海原は、ジリリリリという音が鳴ったと思うと月だけがぽっかり浮いている何も無い空間にいた。ちょっぴり不思議な物語。
とある山に囲まれた田舎町で薬屋を営むチカの元に、代々薬師を務める一族の跡取りと称するフレンが現れた。チカは幼いフレンが一人旅をしている境遇に同情し、しばらく面倒をみることにする。言葉少ななフレンの真の目的は何か? ほんのりサスペンス風味のファンタジー。
主人公の行原圭一は高校一年生。ある日夢に少女が出て来て「明日女の子が話しかけて来るから仲良くしてやれ」と告げられる。翌日本当にその女子、海堂美千花が話しかけて来た。美千花はいつも人形を持ち歩いており、その人形を「お姉ちゃん」と呼ぶ。夢に出て来た少女の目的は何なのか、行原と美千花の恋の行方は。ちょっぴりサスペンスタッチの青春譚。
代表作『さくらちゃんがくれた箱』『あたし、時計』を収録した短編集。恋愛、ファンタジー、コメディからホラーテイストのものまで少し不思議な物語を20編収録。【収録作品】 ・カラー口絵 ・電柱の人が見える僕の話 ・僕、女の子とは付き合わないからね ・みんなのうた ・帰って来た魔法使い ・さくらちゃんがくれた箱 ・名も無き種族のお姫様 ・僕の小さい頃の曖昧な記憶 ・みっちゃん 第一話 ・みっちゃん 第二話 ・あたしはマントをひるがえし ・夜、遠くへ向かう ・ヒュールルルーのガーガーガー ・少女は屋上で会話する ・あたし、時計 ・なぜ!?なに!?人体のひみつ ・短い漫画たち ・星々は健在なりや ・誰も知らない物語 ・祈り、遠浅にて ・なんだかんで悩みは多いよ ・作品あれこれ ・あとがき ・おまけ:カバー下表紙漫画
とある時代のとある国の物語。子供の将来の夢を叶えるのが仕事という魔法使いがやって来た。魔法使いの名はディー。ディーと出会った少女マリはその話を聞いて大喜び。しかし子供の頃にディーに出会ったことがあるマリの叔母であるリサはディーに対して少し身構えたような態度をとる。ディーが再びこの地にやって来た理由は何か。昔一体何があったのか。子どもたちの夢と昔子どもだった大人たちの想いが交錯するちょっとミステリアスなファンタジー物語。
何も無い真っ白な空間に一つだけあるベッドにぽつんと横たわる少女。そして少女を訪ねる女性。女性は「欲しかったでしょう」と少女に機械を渡す。機械には「1年後」「2年後」…「10年後」とだけ書かれたボタン10個とスピーカーが付いているだけ。少女は喜んで機械の「1年後」のボタンを押す。機械は未来の少女からのメッセージを話し出す、「あたし今幸せよ!とっても幸せよ」と。そして少女が「10年後」のボタンを押したその時……!! ヘンテコなのに寂しくて、それでいてどこか懐かしい気持ちを味わえる不思議な物語。
小さい頃、仲の良かったさくらちゃん。そんなさくらちゃんが引っ越しでお別れする時に僕にひとつの箱をくれた。月日は流れ、高校卒業間近の僕。押し入れをあさっていたら偶然その箱を発見した。さくらちゃんを懐かしみ早速開けてみると、中から出て来たのはなんと子供のままの姿のさくらちゃんだった。2021年5月に舞台化もされた著者の代表作品とも言える少し不思議でホロリとする物語。
「あたしは時計、時計です。いつも休まずカチコチと、村の外れに立っている、ちょっとのっぽな時計です」 山に囲まれた田舎の小さな村に立っている時計「あたし」は休まず働き、村の人のために毎日一生懸命時報を告げる。そんな時計が一人ぼっちで悩む子供と話したり、隣村のキザな時計と話したりしているうちに少しずつ「あたし」について考えて行く。自己の役割について問うた時計は真の自分を思い出す。そしてその時に起こったこととは!? 物語は怒涛のラストへ! ほんの少しメルヘンタッチでほんの少しサスペンスタッチな物語。