百合分野で力のある作家達が、中村たいやき先生という「親子百合」分野のスペシャリティのもとに集まったアンソロジー。様々な内容の作品にはプリミティブな感情が共通して存在しています。 娘が母に抱く、お母さん・ママと呼び求める幼いままの愛着。そして母が娘に最初に抱く、小さな命を慈しむ感情。それが「恋」になるとは多くの人は思わないから「近親者となんて」と眉をひそめる。 しかし、百合好きなら皆「当たり前」なんて無いと知っている。だから普遍的な親子の情が「恋愛」に否応なくなだれ込むのも、柔軟な心で受け入れる……のかもしれません。 受け入れればそこには、強い感情と近すぎる距離感がある。背徳感も安心感も何もかもが強すぎる。私は一つひとつの物語から母を、娘を乞い、思わず呼ぶ声を聞いて胸が締め付けられるのでした。 #マンバ読書会 #いいお母さん
新女子大生が、入学初日に出会った5人の女性と次々に恋に落ちてしまう物語。そしていずれも両想い!という事で、第一話から大変さと甘さに脳をかき乱されたのですが……。 個性的な5人の女性が、主人公に惹かれるポイントは様々。声、手触り、匂いetc.フェチポイント多彩ですが、それぞれの性的惹かれが強く描かれて、恋というのが理屈じゃないんだなぁ、というのが分かります。 そう理由は無くても、恋は恋。 主人公・空池(そら行け!)メイは、5人の女性に同時に恋し、何なら付き合いたいと思ってしまう「人倫にもとる」状態なのですが、でも、恋が理屈じゃない、と知っている私にはそれも仕方ないことだと分かる。 色々制御できないメイは、どの人とも出会って二ページで恋に落ちる(少し誇張あり)。でも性的・恋愛的惹かれってそういうもんだよね?色々こねくり回した「恋に落ちる」表現より、この作品の"光速恋落ち"描写の方が私には腑に落ちるのです。 後半、学内でメイに群がる女性達。1巻にして大混戦!全員を好きすぎて絶対一人なんか選べないメイ、どうするんだよー!とソワソワして、いてもたってもいられなくなる感じ。 本当に 結末が わからない
さすが沼編。作家さんにとっての「沼」を暴きながら、私を百合沼に引き摺り込む、強力な誘引力。 全体の半分を占める「はじめてハマった百合沼」と「今ハマっている百合沼」は、作家さん毎にセットになっていて、各作家さんの「癖」が見える興味深い内容となっています。 続く「三角関係百合」もディープな作品が並び、スイーツ多めな「アイドル百合」「おっぱい百合」と来て、最後の「結婚百合」でかなり重いパンチを受けます。 そこでは同性パートナーに関して多様なアプローチが見られますが、作品下のコメントを読めば作者さん達の本気度……同性婚が受け入れられる世の中への願いが見え、この「百合ドリル」という企画に重みを与えています。 初参戦の先生方が多く、個人的にはまだ作品を知らない先生も結構おられたので、好みの作風を見つける楽しみも沢山ありました。 私の百合は、これからだ! 注:TS百合と銘打った作品がありますので、ご注意を。
イェーイ私アリサ!目が覚めたら目の前に美人のお姉さんが。何か私、三年間の記憶失っててお姉さんは恋人なんだって!ウソーお姉さんめっちゃ好みだし私よくやった!でもどんな風に同棲してたか思い出せない〜! ♡♡♡♡♡ 概ねこんなノリで、アリサは記憶喪失をモノともしないポジティブさで、年上のマリさんとの同棲を再開。 関係を再構築しようとする二人に立ちはだかるのは、元の関係の「捻れ」。 年下で記憶の無いアリサを引っ張らないといけないマリさんが、何故かモジモジしている。どうやらかつてマリさんは「引っ張られる」方だった様で、キスの仕方すら忘れているアリサと向かい合って固まってしまう……みたいな様子は初々しくも焦ったい。 アリサはおバカだけれど超ポジティブ。真面目なマリさんを引き摺り回して、周囲も明るく認めさせて、関係を前進させる様が楽しくて気持ち良い。しかしこと「性」に限っては、十代の知識と恥じらい。そしてマリさんにガンガンエロい事していた「昔の私」に嫉妬する羽目に……可哀想だけれどウケる。 記憶喪失は重くは描かれないが、二人の捻れは意外と尾を引く。互いに好きすぎて、体の関係も持ちたいのに、望む形になれなくてあたふたするエロコメディは、見ていてあ゛ーーってなる(語彙力… アリサのおバカテンションにソワソワしっぱなしになる作品。お願いだから、二人のエロを暴露するのはやめてあげてよ!
【あの娘と目が合うたび私は】 はるかわ陽先生「マスキングレディ」 漫画が上手い!!!今までチェックしていなかった作家さんに出会えるのがアンソロジーの良いところですね。 テンポよく展開し、両(片)想いの甘々百合。少女漫画系の絵柄もストーリーとマッチしていてとてもよかったです。 瀬田せた先生「メーターストップ」 百合ギャグといえば瀬田せた先生!この作品もかつてのライバルだった同僚と再会するストーリーですが、しっかりギャグ要素があり笑わせてもらいました。 くるくる姫先生「先輩社員をひーひー言わせたいっ!」 “するときは業績が上のほうがする”……社会人百合の良さが詰まったセリフです!!!!!!!天才的アイデアに乾杯……!!!!! 社会人百合ですが中には先輩後輩以上に年齢差があるものもあり、バリエーション豊かな1冊です。
『百合ドリル 自由研究編』はいつもの形と違っている為か、amazonでも誤解しているレビューが見られて残念なのですが、確かにお題はありませんが、きちんと固定フォーマットがあります。そこが自由研究編を謳う所以でしょう。 最初に4pの漫画があり、最後に1p締めがあるのですが、それが夏休みお馴染みのアレなので、ああ……と納得すると共に、オチに来るそれを上手く使って意図や方法論、そして百合愛を語っている先生方が楽しそうで……。 好きなことを懸命に調べたら賞状を貰ってしまったような、作者様の見事な創意工夫と熱意を堪能したいですね!
実力派百合作家達が、お題に沿った1ページの百合漫画を描いていく「百合ドリル」シリーズ。同じお題に対して、各人様々な成分を配合してギュッと凝縮した、十人十色の百合表現。甘酸っぱかったり、ちょっと辛かったり、ひたすら甘ったるかったり……それぞれ魅惑的な味の飴玉のような掌編が、無印・応用編・難問編合計で235編。 あまりに濃厚なので、ページ数の割に読み進めるのに時間がかかる。ゆっくり読むもよし、時々引っ張り出してちょっと読むもよし。百合成分が不足してるな……という時に、すぐに補充できる、やっぱり飴玉アソートパックのような、おいしい作品集。 【無印】 基本的な百合のジャンルに沿ったお題。基本と言いつつ、すでに超濃厚。これだけでもしばらくは楽しめるが、そのうちもっと欲しくなる(何かやばいものを勧めているような気がしてきた……)計117編。 (内容)学生百合/同棲百合/姉妹百合/年の差百合/社会人百合/ファンタジー百合/幼なじみ百合/先輩×後輩百/最高に興奮する百合 【応用編】 1ページの漫画を元に、発想を広げた数ページ〜20ページ程度の漫画が描かれる。発想の広げ方が様々で面白いし、百合成分が広がっていく様は、濃厚なアロマオイルを部屋にミストで充満させているようで、豊かな気分になれる。計16編。 (内容)学生百合/同棲百合/姉妹百合/年の差百合/社会人百合/ファンタジー百合/幼なじみ百合/先輩×後輩百合/最高に興奮する百合 【難問編】 お題が難解になるも、テンションは全く変わらず、1ページに繰り出される百合は尊い。ただ、感情がより複雑になって、中毒性は強いかも(だからやばいものとかではなくて……)計102編。 (内容)学生百合/大人の百合/キスのある百合/吸血鬼百合/いけないとわかっているけど…な百合/本当にあった百合/バトル百合/となりのお姉さんとなにかする百合/ベッドにおける(※敷き布団も可)百合/未来の百合/後世に残したい尊き百合
百合分野で力のある作家達が、中村たいやき先生という「親子百合」分野のスペシャリティのもとに集まったアンソロジー。様々な内容の作品にはプリミティブな感情が共通して存在しています。 娘が母に抱く、お母さん・ママと呼び求める幼いままの愛着。そして母が娘に最初に抱く、小さな命を慈しむ感情。それが「恋」になるとは多くの人は思わないから「近親者となんて」と眉をひそめる。 しかし、百合好きなら皆「当たり前」なんて無いと知っている。だから普遍的な親子の情が「恋愛」に否応なくなだれ込むのも、柔軟な心で受け入れる……のかもしれません。 受け入れればそこには、強い感情と近すぎる距離感がある。背徳感も安心感も何もかもが強すぎる。私は一つひとつの物語から母を、娘を乞い、思わず呼ぶ声を聞いて胸が締め付けられるのでした。 #マンバ読書会 #いいお母さん