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夏のおわりのある日、佑太の親友のヒロが宮の沢の崖から落ちて死んでしまった。そこは佑太の父親の故郷で、山奥に誰も住んでいないあばら家が残っている。佑太と佑太の父親、そしてヒロが夏休みの1週間を一緒に過ごしたばかりの場所だった。葬式の日、始めてヒロの家庭の事情を知った佑太。一番の親友だと思っていたのに彼のことを何も知らなかった。悲しみで眠れない夜を過ごす佑太の前に、ある晩、死んだはずのヒロが現れた!?ユーレイでもいい、ヒロが会いに来てくれた、と喜ぶ佑太。そんな彼にヒロは「僕を成仏させてほしい」と言う。ヒロの願いを叶えようとした佑太は…!?●収録作品もうひとつの9月/COMINGOUT!/キチキチ
タイトルと表紙のエモさに惹かれて買ったやつ。初めて渡辺多恵子先生の作品をちゃんと読んだのですが圧倒的な絵のうまさと読みやすさに感動してしまいました…!
肌の柔らかさを感じさせるデフォルメと、(なぜ良いと感じるのか説明できないからどう褒めればいいのかわからないけど)とにかく「完璧」なコマ割りがたまらない。
表題作は8月31日に死んだ男子中学生とその親友の話。
その話の後に挿入された「MARCOの身辺雑記 同人活動は卒業!?の巻」によると、この短編の主人公・佑太は先生が同人活動されていたジャンルのキャラの影響を受けているのだとか(シ○ジくんのビジュアルに○ミオの性格)。
この雑記の中で、「狭い世界でシ○ジを描くより万人に向けて佑太を描く方がいい」と書いていらっしゃり、また最後に「新連載」風光るの宣伝をされています。
タイトルに書いたように、これは1997年の短編集なんですよね…なんか伝説の始まりを見たような気分になりました。
2作目は、妹が兄と好きな人がやってるバンドを応援する話「COMING OUT!!」。コンテストで(腐女子の)人気を集めるために、妹がノンケの2人にゲイだとカミングアウトさせることを思いつく。…この話は現在のコンプライアンス的に受け入れ難いなと感じました。
3作目の「キチキチ」は、チャラチャラしてる癖に優秀な兄に劣等感を抱く、優しさと素直さだけが取り柄の弟の話。弟は「キチキチ」という、自分が気づかないフリをしている醜い心の声を囁いてくる存在が見えるようになってしまい追い詰められていくけれど、かつて自分も同じものを見た兄に救われる。
発売から23年経った今読んでも絵に全く古さを感じない。渡辺先生のこの絵の強度の高さをぜひ味わって欲しいです。