他人に触れるとその人の死に際の視界が見える御巫。しかし後輩刑事・小日向にだけはなぜかその能力が通用しない。特殊な力を持つがゆえ孤独だった御巫にとって、屈託なく懐いてくる小日向は特別な存在になり、やがてふたりは心の距離を縮めるのだが……!?
淡島農園の次男で、おいしい苺を作るべく、日夜研究に励む旭。ある日、旭は、淡島家に代々伝わる「苺石」の周りに、キラキラした花粉や小さな足跡を見つける。その夜、旭の前に現れたのは、苺色の髪と瞳の、苺の妖精。旭が「ミツ」と名付けたその妖精は、すぐに淡島家に馴染む。旭になつくミツに、旭もまたミツのことを……!?
ひとり暮らしを始めた大学生の遠江は、毎晩夢をみていた。ここではないどこか、今ではないいつか、自分は優しい「先生」に恋をしていた。しかし、戦争によって「先生」との悲しい別れが訪れ……。そしてある日、隣の部屋の新しい住人・須賀が挨拶にやってくる。遠江は彼を一目見た瞬間、とめどなく涙を溢れさせてしまい……!?表題作ほか、様々な恋を紡いだ読みきり作、描き下ろしも収録。
人間として暮らし、クラスメイトにも慕われている真面目な委員長・鬼野青は、ある日妖狐の血を引く天利に、鬼の子だと知られてしまう。「青の鬼」の血が流れているアオの頭には、角のなごりが生えていて、触られると体の力が抜けてしまうのに、天利は執拗にそこを触りたがって……。
薫は、ある日、黒ずくめの男に「昔子犬を助けたことがあるだろう」と話しかけられる。男はなんとその助けた子犬・クロで、恩返しのために「生き神様」に人間にしてもらったというのだ。もちろん、信じない薫だったが、男は薫しか知らないことも知っていて…。大切な人のため人間になった動物たちの切なく、幸せな物語。20P書き下ろし作品を同時収録。
虹色村でマッシュルーム農家を営むチロリは困っているものを見ると放っておけない優しい性格。今日も他人のために奔走するチロリに、幼馴染みのアキラは憎まれ口を叩きながらも陰でそっと見守っていた。しかし虹色村は大規模開発の危機にさらされていた。自然と共に慎ましく生きるチロリと開発計画に携わるアキラ。ふたりの想いと虹色村の行く末は……!?
考古学研究室の教授・鳩谷先生と、その助手を務める古鹿くん。いつも猫背で冴えない教授には秘密がある。その背中には小さな羽が生えているのだ。そして、鳩教授の秘密を知っているのは、たったひとり、こじかくんだけで……!?ある時、彼らの住む町にちょっとフシギな出来事が起こり始める。でも、その原因が実は……。
兄亡きあと、章生は〈アンダー〉の街で体を売って暮らしていた。ある雪の日、猥雑な街にまるで不似合いな紳士が現れ「君を迎えにきた」と告げる。栗須と名乗るその男に連れられ〈アッパー〉に建つ大きな屋敷を訪れることとなった章生。突然のなりゆきに戸惑う彼に、屋敷の主・総司郎は、風変わりな弟・久世の世話を命じる。人と関わることを厭うて庭いじりばかりしているという久世だが、章生のことはすぐさま気に入ったようで……?
事故で家族を失った若草秋緒は、遠い親戚の伝手で古道具屋を貰いうけることになった。右も左もわからぬまま商売を始めてみるが、店に持ち込まれるのはいわくありげな物ばかりだし、訪れる客もこの世ならざる者ばかり……。おまけに店には、友人の天宮そっくりの顔をした、自称からかさおばけの男色家・キッカという遊び人が住みついていて、なにかと秋緒にかまってくるのだが――!?