魔法陣グルグル

ユニセックスのスクエニを決定づけた作品

魔法陣グルグル 衛藤ヒロユキ
ピサ朗
ピサ朗

少年ガンガンを筆頭に出版部門を持つスクウェア・エニックスは、どーもファンタジーものではあるが少年漫画とも少女漫画とも言い難い、ユニセックス的な漫画が数多い出版社というイメージがあるのだが、そのイメージを決定づけたのはこの作品だと思う。 世界観は実にRPG的なファンタジーものであり、現在でこそなろう作品を筆頭に数多くあふれているが、当時は割と珍しかった。 また主人公も男女二人制で物語を引っ張っていくのは男性のニケだが、ラスボスである魔王との因縁はむしろ女性であるククリの方が多く、ともすればシリアス方向に行きそうな要素も多いのだが、全編に渡りギャグが散りばめられていて、少年漫画的な痛快さと少女漫画的な繊細さを吹っ飛ばすほど強烈なギャグが多い。 全体的にはRPGの「お約束」を逆手に取ったり茶化したりと、ゲームに対するツッコミがボケ化しているような部分が多いが、言葉遊びのセンスが凄い部分も多い。 とにかく笑えるのだが、根底には少年少女の成長や旅の出会い等の王道的な冒険要素も多く、読んだ後は意外と心地よい読後感…にもギャグを叩きこんできていて、暗く重い雰囲気はとにかく薄い。 この明るく軽い雰囲気は現在でも独特な物があり、絵柄は安定しないが全体的には可愛い系で、女性も読む少年漫画という当時は独特な地位を持っていた。 一迅社系等ユニセックス的な漫画は現代では珍しくも無いが、スクエニ漫画のそういうノリを築いたのは、タイミングや内容的にもかなりこの作品の影響がデカいのではないかと思う。 後半は若干息切れというかギャグのバランスが崩れている部分も有るが、ストーリーはしっかり完結していて爽やかに終了している。 …のに、続編が出ていて、その爽やかさすら笑いにしていたりするのだが。

おはよう!スパンク なかよし60周年記念版

泣ける・・動物との友情物語!!

おはよう!スパンク なかよし60周年記念版 雪室俊一 たかなししずえ
酒チャビン
酒チャビン

子どものころアニメをやっていたのか、なんとなく印象にはあったのですが、内容はほぼ知らず、ただ主人公のスパンク(犬)が昔飼っていたうさぎを彷彿とさせるところがあったので、なんとなく気になって読んでみました。 結果・・面白い!!アニメの記憶では、なんとなくスパンクのルックスからして、ドタバタ生活コメディかと勝手に想像していたのですが、全然違いました!少女漫画らしく、飼い主の甘酸っぱい恋愛話などもあるのですが、メインは飼い主とスパンクとの尊い友情の物語だと思います。スパンクが信じられないくらい愛くるしく、性格もすごく良いので、大ファンになりました!(けっこう昔のマンガ特有の、悲惨でシリアスな状況に追い込まれがちな描写もあります) ちょっと調べたところ、ちょうど今発売中のなかよし2022年9月号から期間限定新れんさいで続編のような4コマが掲載されているのと、なんと「おはよう!スパンク HAPPYステショセット」(ポーチ、シャーペン、定規)がついているとのことで、思わず今日朝イチくまざわに購入しに行ってしまいました。 ゆるキャンのようなほんわりとした作品が好きな方や、感動ものが好きな方には全員にオススメできる作品です!!ぜひ試し読みでもいいので読んでみてください!!!

オタクばあちゃん

イベント最前で心を燃やす85歳のおばあちゃんが素敵

オタクばあちゃん 伊達しのぶ
兎来栄寿
兎来栄寿

自分が何歳まで生きるかは定かではないですが、年齢を重ねてもこのバイタリティを保ちたい。随所で笑いながら楽しませてもらったのが、こちらの作品です。 85歳のおばあちゃん・チヨとその孫の孝が主人公ですが、チヨさんはただのおばあちゃんではありません。スマホPCタブレット4台で特典を巡る予約合戦をガチり、イベントでは最前に並び、同担拒否し、自担を貶す輩には10分間の説得で推し変させるほどのガチオタクとなってしまったおばあちゃんなのです。 彼女とオタ友になるホストや、孝のクラスメイトの女子など、さまざまなオタクが登場します。 本誌で脇役の推しが登場しない期間の飢餓感、推しの命が危機にさらされることで自分の命脈にも連動するさま、はたまた推し活が報われて爆発する瞬間などは推しがいる人は強く共感できるところでしょう。 基本的にはギャグなのですが、孝のクラスで孤立するオタクの沼田に対して、 「あのね オタクになれるってだけで人類最強なんだよ  オタクになれるのはものすごい熱量を持った限られた人間だけなんだから!!」 という言葉は、悩めるオタクへの最高のエールだと思いました。 個人的にはばあちゃんが『H2』でバッティングセンターに通ってバッティング技術を得て、『YAWARA』で柔道教室に通い技を習得したところや、 「黙れ小僧」 「肉食系女子にもなりきれぬあわれな娘だ」 の件も好きです。 また、巻末の描き下ろし「チヨの初恋」は純粋に上質な少女マンガとして楽しめるお話で大変良きでした。

パワー・アントワネット

ベルサイユのバルク

パワー・アントワネット 縞 西山暁之亮 伊藤未生
兎来栄寿
兎来栄寿

突然ですが、漢字テストです。以下は何と読むでしょう? 1.筋肉 2.武術服 3.希望 すべて、この作品の中での読み方ですが答は…… ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1.フランス 2.ドレス 3.プロテイン です。 応用で、「筋肉万歳」は「ヴィヴ・ラ・フランス」となります。 他にも 「ゴリ押し」と書いて「シャンゼリゼ」や 「堅牢さ」と書いて「バリカタ」、 「身に余る光栄です」と書いて「ナイスバルク」など、 『忍者と極道』ばりのルビ芸が繰り広げられます。 そう、これは鍛え上げた筋肉によりすべてを解決しフランスを革命していくマリー・アントワネット改め、パワー・アントワネットの物語。襲い来るギロチンは所詮バーベル以下。何なら武器に加工して闘います。 「パンがなければ己を鍛えなさい」 「常に筋肉は上品で優雅たれ」 など文字通りのパワーワードも連発。 1話では太眉かわいいシャルル=アンリ・サンソンが登場。2話からはローズ・ベルタンも登場しますが、彼女は現代的ギャルキャラに(ローズ・ベルタンのことをしっかり知りたい方は『傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン』もぜひ)。まだ登場していないフランス革命周りの主要人物がどのように描かれていくのかも楽しみです。 筋肉が好きな人、圧倒的パワーですべてを解決していくカタルシスを得たい人にお薦めです。

アイドル地獄変<完全版>

尾玉なみえ絶頂期の作品

アイドル地獄変<完全版> 尾玉なみえ
toyoneko
toyoneko

尾玉なみえ先生は、赤塚賞準入選をとりながら、打ち切りの山を築いたギャグ漫画家です。 週刊少年ジャンプで「純情パイン」や「少年エスパーねじめ」を連載したあと(ともに打切り)、 ビジネスジャンプに移籍して「アイドル地獄変」「スバル・たかし」を連載し(ともに打切り)、 講談社(シリウス)に移籍したあとは、「マコちゃんのリップクリーム」を長期連載しました。 初期作品(「純情パイン」や「少年エスパーねじめ」)は、ギャグがキレキレではあるものの、癖が強すぎて、かなり読者を選ぶ作風でした。よくこれをジャンプに載せたなと思います。 講談社移籍後の作品(「マコちゃんのリップクリーム」など)は、かなりポップになって読みやすくはなったものの、その分ややインパクトに欠けます。 これに対し、「アイドル地獄変」は、ギャグのキレとポップさを両立している、尾玉なみえ絶頂期の作品です。 読んだことのない方は、ぜひチェックしてみてください。全1巻で読みやすいよ! なお、ストーリーは、主人公がアイドルを目指して頑張るお話ですが、本筋には全然関係ない話が抜群に面白かったりします(添付)。 ちなみに、同時期の「スバル・たかし」も同程度に面白いのですが、こちらはなぜか電子化されていないので、古本屋などで見つけたら保護しましょう。