たか
たか
1年以上前
異世界モノがブームとなってから相当な時間が経ちますね。フィジカル最強の大統領が転移したり、昏睡状態のセガ大好きおじさんが目覚めて異世界から戻ってきたり、ヤクザが異世界の素材でタピオカ作って儲けたり、公務員のお父さんが悪役令嬢に転生したり、転生してエルフになってからも生前の借金返済に追われたり。画期的な設定が次々と生み出され、いつの間にやらこのジャンルはものすごい発展を遂げました。 そして!ついに!ようやく!ここに来て初めて! 残された遺族の辛さを真正面から描くお話が登場しました……なんか感慨もひとしおです。 そもそも異世界転生はなろうやラノベの得意分野。 エロ・チート・ハーレム・スローライフ・婚約破棄・追放・ザマァなどなど、気持ちいい要素で楽しませることがとにかく重要で、正直それ以外の記述(現実に残された遺族の気持ち)は邪魔なだけで読者も作者も求めてないんですよね(エロ漫画と一緒。細けえことは今はどうでもいいんだよっていう)。 作者も読者も、現実から遠く離れた異世界に思いを馳せてとにかく楽しく夢想したい。 だから「転生者の遺族視点」という誰にでも思いつくような簡単なアイデアなのに形にする人が今まであらわれなかったんですよね。 こんなシリアスな話、もし本職のラノベ作家だったら書けないですよね……楽しさ全部載せのチーレム作品みたいにボンボン売れるわけないですし。 『私の息子が異世界転生したっぽい』 この作品の作者がかねもと先生だと知ったとき「ああ、この人だったら絶対タイトルどおりのすごいやつ描いてくれるだろうな」と思いました。 勇者パーティで働くワーママの辛さを真剣に描いた「伝説のお母さん」の作者さんなら、ラノベでは都合よく省かれてる「親」という存在を真剣に掘り下げられるはず。 そして実際読んでみて、全くその期待通りの内容でした。 残された母親の苦しみが正面から描かれていました…。 オタクコンテンツと縁のない若い美人なお母さんと、ラノベオタクな元同級生。 2人は異世界に行く方法を探して同じ時を過ごすなかで、今生きているこの現実を捉え直していく。 「ファンタジーとエンタメ」重視のラノベ業界では決して描けない「現実と痛み」の物語で読んで良かったです。 常日頃異世界モノを読んで現実逃避してる身なので、たまには真剣に残される側がどんなに辛いかを考えるの大事だな…としみじみ思いました。 こちらのかねもと版では旦那がほとんど出て来ず、この先お母さんはどうやって生きていくんだろうと気になります…。夫婦の決着が現在連載中の『私の息子が異世界転生したっぽい フルver.』で描かれるのを楽しみにしています。
異世界モノがブームとなってから相当な時間が経ちますね。フィジカル最強の大統領が転移したり、昏睡...
六文銭
六文銭
1年以上前
高校くらいに、1度読んでどハマりした作品。 正直、失礼を承知で言うと、その時まで絵柄が合わないと読まないくらい、絵を重視していたのですが、何気に絵がアレでも初めてハマった作品が本作です。 それくらいストーリーにひきこまれていきました。 当時は、駆け引きとかよりも、少年ジャンプ的な勧善懲悪、努力の後に正義は勝つ的な漫画ばかり読んでいたので、本作の最後、兵藤との一戦後は、衝撃でした。 正義(主人公)は必ずしも勝たない、大人の世界を体験させてくれたので、今でも大事な1冊で、こうして度々読み返すんですね。 そして、やっぱり面白い。 ゲーム性もそうなんですけど、勝利や敗北を通した「勝負の美学」が、 やっぱりグッとくるんですね。 勝つために、それこそイカサマをやってでも手段を選ばない姿勢。 死力を尽くして負けた後の、受け入れて、ごまかさない態度。 人間の尊厳 とも言うべき美しいプライドを、それぞれのキャラが魅せてくれて、すごい格好良いんですね。 昔の武士のような、生き様です。 まぁ、やっているのは債務超過の底辺人間同士の博打なんですけどね、だからこそ、輝くのかもしれません。 続く作品も、どれも面白いのですが、やはり原点は濃度が違うように感じます。 ギャンブルという一ジャンルとして閉じず、上記の人間ドラマも是非味わってほしいです。