寸々
寸々
11ヶ月前
この漫画が描かれているのは数年前の韓国だが、2023年現在の日本でも、物流周りの深刻さは当時より一層厳しくなっている。 物流倉庫で働いていた作者の実体験を元にした作品ではあるが、単なるコミックエッセイではなく、かといって問題を情に訴えかける社会派漫画でも無い。 辛い労働環境を感情的に描こうと思えばいくらでも出来るんだろうが、"カデギ"という現場に対して適度な温度感を持って描いているように感じる。これは作者の狙ったところっぽくて良い。 逆にそのテンション感は、PC・スマホ画面のクリックひとつでモノを買ってしまう「消費者としての私」にジワジワと訴えかけてくるものがある。 韓国(特にソウル)は競争が激しい社会であることが知られているが、日本(の東京)もまた同じで、現代社会で働く「労働者としての私」という面にも刺さる描写ばっかり。 ソウルで生き抜く主人公の同士的キャラクターの女性が出てくるんだけど、これがロマンスにならないのも好きなポイント。 韓国の若者はラブロマンスに飽きているという風潮もあるらしく、それを汲んだもの?
たたみ
1年以上前
水、という素材は、料理マンガにもときどき出てくる要素ではあった。 ただそれは、あくまで副菜的ポジションであり、決してメインディッシュにはならない。 しかし、この巻では『水料理』という縛りで勝負が始まるのだ。 水という掴みどころのない素材をどのように活かすか……そこにキャラの特性が如実に現れる。 ライバルは『秀才型』で審査員をうならせ、対する主人公ジャンは破天荒な発想でそれを打ち破る。 少年漫画的お約束と言ってしまえばそれまでだが、完璧と思われたライバルの料理を、意外な素材で上回るという展開は痛快だ。 (ここからネタバレ) 勝負の序盤、外国産など各種ミネラルウォーターをずらりとならべ、硬水や軟水などの性質の違いを丁寧に解説してくれる、水ソムリエ的なライバル。 そこで読者は「美味しい料理には高級な水が必要」と刷り込まれる。 しかしジャンは、最高の料理をつくっておきながら、最後に使った水のことを「ただの水道水」と言ってのけるのだ。 「日本の水道水はすばらしい」というオチに、共感できない日本人読者はまずいないだろう。 ひとつ残念な点は、軟水硬水の区分を『ドイツ硬度』というおおざっぱな基準によって解説している部分だ。 あれは繊細な料理人にふさわしくない。 少なくともアメリカ硬度、WHOの飲料水水質ガイドラインを紹介して欲しかった。 そして日本の水道水であっても、一律軟水というわけではなく地域差がある。 季節による変動も大きい。 その数値は、地域の水道局によって検査測定がされている。 ジャンには『今日の○○地区の水道水は硬度いくつだから、この料理にふさわしかった」くらいの台詞を告げて欲しかったが、たぶん怪我をしていたため頭が回らなかっただけであろう……。
sogor25
sogor25
1年以上前
中学2年の時に告白されて付き合った相手から1週間でフラれたことで、相手からの好意を信じられなくなってしまった主人公の不思議 麻衣。 恋愛への憧れは持ちつつも心に空いた穴を埋められないままアラサーになってしまった彼女は、 ひょんなことから店員も客も店内で声を発しないというコンセプトの「サイレントカフェ」で働くことになります。 そこで麻衣が出会った4歳年下のスタッフ・上下 亮は、次第に麻衣に対して好意を抱き始めるのですが、 麻衣の繊細さを察知して慎重にアプローチをしようとした結果、 「いつも恋愛が上手く行かないから」という謎の言い訳と共にちょっと変わった提案をしてしまいます。 他のカフェの店員たちもキャラが濃くてかつ魅力的で、群像劇的な雰囲気も醸し出していますが、 その中で、クールな見た目ながら麻衣との接し方に手こずる亮と、 亮の好意をあっさりとは受け止めてくれない麻衣という2人のままならない恋模様が描かれる作品です。 1~2巻同時発売で一気に期待値を上げてくれるので、1話で気になった人は2冊まとめて買うのをオススメしたい、そんな作品です! 2巻まで読了