小学館文庫の感想・レビュー17件吉野朔実で特に好き恋愛的瞬間〔文庫版〕 吉野朔実starstarstarstarstar瀧儚く繊細な絵に秘めた危うい雰囲気、本当にガラス細工のような漫画を描く作家ですね女版ボーダー天使派リョウ 狩撫麻礼 中村真理子starstarstarstarstarかしこ序盤は二段ベットに寝てるOLとフリーターの姉弟が主役だったけど、途中から元舞踏家のカヨさんが主人公になっていきます。このカヨさんがまさに女版ボーダーという感じで個人的には蜂須賀さんより好きかもしれません。野良馬が現れてからの自宅出産シーンには圧倒されました。会社で厄介者扱いされてたトキエが金粉ショーに出演して別人のように垢抜けたり、印象的なエピソードは他にもたくさんありました。中村真理子先生の絵柄が可愛いので女性におすすめです。タイトルが秀逸!!11人いる! 萩尾望都starstar_borderstar_borderstar_borderstar_border酒チャビンなんかすごいサスペンスやミステリーを孕んだストーリーが期待できる、雰囲気のあるタイトルです!!! が、内容はそこまでドキドキ・ハラハラはなく、読んでいて先が気になってページを捲る手が!!!みたいなこともありませんでした。短編集で、1作目が表題作、2作目が「続・11人いる!」だったのですが、それの20ページ弱くらい読んだところでリタイアさせていただきました・・・ SFとかサスペンスとかっぽい作り・アイデアなのですが、どうもドタバタ人間模様としか感じなかったので・・・ 他の方の感想を見ると、結構楽しんで読まれている方も多数ですので、人によるんだと思いますが、わたしはいまいちのめり込むことはできませんでした。 ちなみに萩尾望都先生の作品は、短編集ばかりですが、これで3冊目で、1勝2敗。その1勝もギリギリ薄氷の勝利だったので、もう諦めようと思います。 さらば少女漫画の神様!楽しかったよ!!!良いですね!!!山へ行く 萩尾望都starstarstarstarstar_border酒チャビン別の萩尾先生の作品で、少女向けのものはわたしにあまり刺さらないんではないかとの不安を感じていたのですが、この作品はとても良かったです!! 特に、生方さんの子供がマタタビ(飼い猫)のお産の際に背中をさすっていたところ(会話中で出てくるだけですが)!!わたしも小学生の頃、飼い猫の出産に立ち会い、夜を徹しておなかをさすっていたので、すごく親近感が湧いて、一気に面白く感じられました!! また、手塚先生の火の鳥復活編が引き合いに出されたところもすごく興奮しました!!! 他の方のレビューを見ると、「柳の木」の評判が高いようでしたが、私は良い話とは思いつつも、そこまでの感動はできませんでした。これもわたしが子供を産んでないためかと思います。 萩尾先生の作風がわかってきたので、次は大長編ものにチャレンジしてみたいと思いました! 動物のお医者さんによる新本格★館シリーズ月館の殺人 佐々木倫子 綾辻行人starstarstarstar_borderstar_border酒チャビン動物のお医者さんというマンガが、我々動物好きとしては気になっていたのですが、12巻あるので手が出しづらかったんですよね。 それで何度もカゴに入れたり出したりしていた時に偶然見つけたこちらの作品!なんと、気になっている「動物のお医者さん」の作者の方と、わたしも好きで全部読んでる本格ミステリー小説「館シリーズ」の著者の方とのコラボ作品!!!しかも2巻とサクッと読めそう!しかも綾辻先生にしては珍しめの鉄道系ミステリー!? ということで読みました。 ミステリーマンガということで、金田一くん的なものを想像していたのですが、完全に裏切られました。佐々木先生、めちゃくちゃ個性強くないですか?? 独特すぎる世界観で、途中まで「これは本当にミステリーのマンガなのだろうか・・?」と何度も不安になりました。いい意味です。 ミステリー系なので、過度な説明は避けますが、一度ビビる仕掛けがありました。 楽しめはしましたが、このタッグで続編が出たとしたら、多分「動物のお医者さん」と「館シリーズ」を読むと思います。いい意味です。恋愛漫画というより心理サスペンスのような鋭さ恋愛的瞬間〔文庫版〕 吉野朔実かしこヤマシタトモコ先生の違国日記が好きな人は多分好きになるんじゃないかな?タイトルに「恋愛」というワードがあるけれども、要は他者との関係性の中で自分を最も見つめ直すことができるのが「恋愛的瞬間」なのだ、という話だと思うので…。心理学者の森依先生の講義を受けてる学生達やクリニックを訪れる患者達の悩みの多くは恋愛関係のものですが、それらの原因は家族関係や幼い頃のトラウマだったりするのです。セリフやモノローグにハッとさせられることが多く、少女漫画を読んでるというより心理サスペンスを読んでる気分にもなりました。吉野朔実先生は本当にすごい!実は全120ページの短い作品11人いる! 萩尾望都かしこ読まねば…読まねば…と思いつつ未読だった名作「11人いる!」ですが、実は全部で120ページの短い作品だったんですね!なんと手に取りやすい。 舞台は宇宙大学受験での最終テスト。10人一組で宇宙船に乗り込み53日間、誰一人として欠けることなく生き延びること。しかし船の中には…11人いる!!という話。密室に招かれざる人物がいるなんてハラハラドキドキの最高にサスペンスな始まりで一気に引き込まれました。 他の方もクチコミを書かれていましたがフロルが可愛いですね。「続・11人いる!東の地平・西の永遠」、番外編「タダとフロルのスペースストリート」と可愛さがどんどん増していくのも見どころでした。 完全版は紙で買って、こっちを電子書籍のバックアップとして買う歩くひと 谷口ジローhysysk風景がたまらなく愛おしい。体験したことがないはずなのに、何となくこんな日があったような気持ちになる。僕らが歴史的な風俗画を眺めて昔の人ってこうだったんだなぁとしみじみ思うように、200年後の人が読んでも面白いんじゃないだろうか。「夜泳ぐ」について歩くひと 谷口ジロー名無し※ネタバレを含むクチコミです。トーンの魔術師歩くひと 谷口ジロー影絵が趣味『歩くひと』完全版の発売にともない、その一話の『よしずを買って』が暑い季節がらもあって大変話題になっています。喜ばしいことです。『歩くひと』ひいては『よしずを買って』は、谷口ジローの数ある作品のなかでも、もっとも谷口ジローらしいというか、彼の真骨頂が発揮されている一作だと思います。 サイレント映画ならぬ、サイレント漫画とも言うべき、台詞の一切ない『よしずを買って』は、いかにも谷口ジローらしい。もともと谷口ジローの描く作中人物はどちらかといえば寡黙な人物が多い。お茶の間にもっとも迎えられた『孤独のグルメ』の井之頭五郎を筆頭に、いちばんコンビを組んだ狩撫麻礼の作中人物もザ・寡黙という人ばかりです。あるいは『坊っちゃんの時代』の夏目漱石にしても寡黙な人として描かれ、漱石が語るのはなく、漱石が世相を"見る"ことで物語が運ばれてゆきます。 そう、夏目漱石の代表作といえば『吾輩は猫である』ですが、これにも全く同じことがいえて、猫は喋れませんから、猫が世相を観察することで小説が持続してゆきます。この漱石の猫をもっと健気にやってみせたのが、大島弓子の『綿の国星』になると思います。 このことは谷口ジローの作風にとても深く関係していると思います。このことから、漫画家でありながら、原作を置くことをまるで躊躇わない谷口ジローの立場というものが明らかになると思います。ふつう、作者心理としては、イチから全部みずからの手で作りたいという想いがあると思うのですが、谷口ジローにはあんまりそういうところがない。たとえば、黒田硫黄や、最近では田島列島なんかは映画作りの側から漫画に流れてきた人です。彼らは他人との共同作業ができなくて、全部みずからの手でやらなければ気が済まなかったんですね。 なるほど、映画作りは分業制です。とくに映画産業がもっとも盛んだった1920年代から40年代ぐらいの映画監督は往々に職業監督と言われ、つまりは映画会社お抱えのサラリーマン監督として、会社が求める映画をその通りに撮っていました。当時の映画監督はどっかの知らない脚本家が書いた脚本をその通りに忠実に撮っていたのです。たとえば西部劇でよく知られるジョン・フォードという人がそうで、それこそ会社の要請で馬車馬のように西部劇を撮りまくり、100本以上の映画を監督しています。現代の優れた映画人の代表のように言われるクエンティン・タランティーノですら10本そこらしか監督していないのですから、この本数の差はあまりにも如実というほかありません。では、当時の映画監督が手抜きで質の悪い映画を量産していたのかといえば、必ずしもそうではない。これは私見ですが、ジョン・フォードの任意の1本は、タランティーノの10本を束にしても勝てないと思います。それほどまでにジョン・フォードの映画は美しい。そして、その美しさは谷口ジローの美しさにもよく似ていると思うのです。 職業監督とはいっても、腐っても映画監督です。どっかの誰かの脚本をその通り忠実に撮るとはいっても、その撮影現場でカメラが何を映すのかは監督に委ねられています。そういう意味で、職業監督は喋ることのできない猫によく似ている。語ることはできないけれど、カメラの目で映すことはできる。そう、たとえば、脚本にはそんなことが一切書かれていなくても、撮影現場に煌めいている木漏れ日の光や影を映すことはできるのです。 谷口ジローの仕事も、まさしく彼の目に見えたものを丹念に描き映すことに捧げられています。彼が一番影響を受けたと語っているメビウス(=ジャン・ジロー)は、メビウス名義で自由で独創的な作風のものを描き、ジャン・ジロー名義では40年間『ブルーベリー』という硬派な西部劇を描き続けました。ひとつのジャンルにあえて固執し続けるということは、自ら拘束着を身にまとい、寡黙に徹することにひとしいでしょう。メビウスに影響を受けたという漫画家が多いなかで、谷口ジローは『ブルーベリー』のジャン・ジローに影響を受けたという数少ないひとりでした。おそらく、語ることよりも見ることに自身の芸術性の発露を感じるジョン・フォードや、ジャン・ジローや、谷口ジローのような作家は、環境が不自由であるほうがむしろ都合が良いということがあるのではないでしょうか。たとえば、散歩をしていて、頭のなかであれこれと考え事をしているときは、周囲の風景が目に入ってこないものです。同じように語ることと見ることは同居が難しいのではないでしょうか。 ところで、『よしずを買って』は、夏の陽射しをトーンで見事に描き映していますよね。トーンの魔術師とは、『絶対安全剃刀』で世にでた高野文子に当てられた言葉ですが、谷口ジローのトーンもじつに素晴らしい。高野文子は何から何まで全部自分でやらなければ気が済まないほうのタイプだと思いますが、やはり、まずテーマがある。よし、ここはひとつトーンを使って漫画に革命を起こそうじゃないか、そういう気概でもって漫画を描いて、しかも、いちど称されたテーマをその一回限りで暴力的に使い果たしてしまう。同じトーン使いの極致とはいっても、谷口と高野ではアプローチの仕方がちがいます。谷口には良い意味でも悪い意味でも発端となる語りのテーマがなくて、丹念に夏の陽射しを描き映した結果があのような見事なトーンとして表現されているように思えるのです。 いま、谷口ジローの境地に近い存在として、『ちーちゃんはちょっと足りない』の阿部共実がいると思います。連載中の『潮が舞い子が舞い』は、寡黙というよりは、むしろ、コマを台詞で埋め尽くしていくのですが、これが逆説的に寡黙のような作用をしているのです。そして時折、たとえば谷口や高野のような素晴らしいトーン描写が挿入される。なんだか話がだいぶ逸れてしまったので、この辺りで切り上げたいと思います。 こういう旦那がいいよね歩くひと 谷口ジローやむちゃ特に、話の筋があるわけでなく、「歩くひと」の視点を通じて鳥や木々や花や動物、子供…生活を丁寧に描いた漫画です。こんな風に、素直にいろんな物を受け入れたり感じることができるってすごく素敵なことだと思うんです。 シンプルだからこそ皆さん好みが分かれると思いますが、私は第8話の長い道が好きです! 初っ端からキムジョンウンっぽく見えると笑ってしまうので注意です。山へ行けなくても恩寵にあふれている山へ行く 萩尾望都影絵が趣味導入の、母のひとコマ、父のひとコマ、娘のひとコマ、それから、それら三人に息子を加えた朝の忙しないリビングを俯瞰で描いた大コマ、もうたったのこれだけで十二分に素晴らしい。 「サトル、ニンジン食べて!」という母に、 「ボク、サトルって名前 キライだ」とかえす息子。これで一頁。 なかなか衝撃的なセリフではあるけれど、テンポがいいのか、なんなのか、あまり悲壮感のようなものはなく、むしろ恩寵にあふれている。 父は日常の忙しなさから逃れるために山へ行こうとする。ところが道行く先々でひとに捕まってしまい、なかなか山へ辿り着けない。けっきょく今日も忙しくなってしまい、泣く泣く山は諦めることに。でも、山へ行けなくても、このマンガの端々に恩寵がひっそりと息づいていることは山をみるより明らかである。過剰な豊穣A-A' 萩尾望都(とりあえず)名無し※ネタバレを含むクチコミです。 少女漫画の読書革命を起こしたい人へ恋愛的瞬間〔文庫版〕 吉野朔実せのおです( ˘ω˘ )あらすじにもあるように、"恋愛心理学"という視点から様々な登場人物の恋愛を描いているので、 "恋愛"をテーマにした少女漫画の中でも一味、いや十味ほど違います!笑 タイトルにも書きましたが、なにか新しい少女漫画の衝撃が欲しい方、少女漫画がマンネリ化してきた方は、今作だけでなく吉野朔実先生の作品をとにかく読んで欲しいです。フロルが可愛い11人いる! 萩尾望都名無し実は米澤穂信の「古典部」シリーズのヒロインがコスプレしていることでも有名な?作品。内容は王道を行くSFもの。この時代にこのテーマ、この画力はやはり素晴らしかったんだろうな。スピリッツらしからぬ作品天使派リョウ 狩撫麻礼 中村真理子starstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男途中までは主人公「リョウ」とバブル末期の世界観がメインになる「カヨ」が登場するあたりから狩撫っぽさが一気に出てくる。「カヨ」と「トキエ」の会うエピソードと狩撫っぽい台詞回しだし。 大山くんのボクサー編や浮浪者の調査など色々あってまとまりがない感じもする。 最後の方のトレンディドラマを見て救われるって話は妙に好き 綾辻行人と佐々木倫子のコンビが魅せるコミカルなミステリー月館の殺人 佐々木倫子 綾辻行人渚ブルーミステリー作家の綾辻行人が原作、『動物のお医者さん』の佐々木倫子が漫画を担当するコミカルなミステリー。 女子高生の空海(そらみ)が夜行列車「幻夜」の車中で起こった殺人事件を、乗り合わせた鉄道オタクたちと真相を解明していきます。2005年に月刊IKKIで連載していたらしいです。 「犯人は誰か?」「殺した方法とは?」この二つの謎を巡って物語が進んで行きます。鍵となるのは走行中の列車に忍び込む方法ですが、綾辻行人によるミスリードが仕込まれています。これにハマってしまうと、読者は空海とともに大前提から認識を改めなければなりません。私もまんまとやられました。 また、事件が起きる前はもちろん、人が死んでからも鉄道オタクたちのギャグが連発されるので「みんなが空海を騙そうとしているだけで、殺人事件に見せかけたドッキリでは?」という疑問が何度か頭をよぎりました。 鉄道ギャグは「乗る」「撮る」「時刻表」など多岐にわたっています。鉄道に明るければオタクたちに共感できると思いますし、そうでない人も勉強になると思います。殺人やミステリーが苦手な人でも、クスリと笑える佐々木倫子のギャグが豊富なので楽しめますよ。
儚く繊細な絵に秘めた危うい雰囲気、本当にガラス細工のような漫画を描く作家ですね