北大路衛は「営業部の王子様」と呼ばれるほど社内で人気者。対して、周囲から孤立している無口な総務の黒根さん。ある日、北大路は会社帰りの公園で猫の面倒を見つつ尋常じゃなく楽しそうにしている黒根さんを目撃してしまう。秘密を共有する社会人男女のアフター5は、そこからひとときの癒やしタイムになる。
俺のお受験
大手出版社・壇講社で週刊誌の編集者として働く小谷宏平は、小学校受験、いわゆる「お受験」の記事を担当することになる。無名大学卒の宏平は就職活動で苦戦したが、アルバイトとして壇講社で働き、長年雑用をこなした努力が実って契約社員として編集者になった経歴がある。そのためか、周りで働く高学歴社員の学歴自慢には辟易としていて、お受験にも否定的。だがある日、そんな宏平の育児観を変える大事件が勃発して…!
大正10年、東京市――。女中としてお屋敷で働く24歳のふきは、帝国第一高等学校進学のために帰京した橘家の子息・勇吾と再会。婚約が破談となっていたふきは、「嫁探し」を命じられているという勇吾の求婚を受ける。結婚に親の許しが必要だった時代、健気な女中とエリート学生の身分差・年の差新婚生活が始まる。
ネコサツ
イラストレーター・sakiyamaが手掛ける、待望のフルカラーコミックス! ようこそ“奇怪”で“愉快”なサテツ島交番へ…。警察官として大失態を犯し、離島の交番に左遷されることになった笹見。通称「サテツ島」と呼ばれる、ちょっぴり不気味なその島で出会った先輩警察官は、なぜか“猫”の姿をしていた――。都会とはひと味違う住民たちに囲まれながら、複雑怪奇な島の事件を解決していくサテツ島交番の面々。大の猫好きの笹見は、次第にこの不思議な環境に馴染んでいくが………。
オッサンin姫!? しがない洋食屋の店主が挑む魔物だらけの異世界“限界”グルメ! 下町のしがない料理人・ケンゴは、客とのトラブルが原因で、気が付くと異世界の“姫”に転生していた。姫に恋する騎士のオーギュストと共に遭難してしまった彼は、極限の状況下、限られた食材=魔物で料理をすることに――。一筋縄ではいかない異世界食材たちを美味しく食べるため、そして現世に戻るため、料理人のプライドを懸けてケンゴは究極の“異世界メシ”を生み出していく!
盆百千栽
盆栽とアンドロイドには共通点がある。それは人よりずっと長い時を生きるということ。アンドロイドのカンナは、盆栽屋・季風園の「先生」に盆栽を教わっていた。盆栽の素晴らしさを語る「先生」を、カンナは不思議そうに見つめていた…。長い年月が経ち、カンナだけになった季風園には、また新たな人が訪ねてくる――。これは悠久の時を生きるアンドロイドと盆栽が織りなす、全く新しいヒューマンドラマ。
母国・中国では規制のため、自由にBL漫画が描けず悶々としていた、漫画家の卵・夢言。日本の雑誌で好きなBLを思う存分描きたい! そんな思いを強くした矢先、夢言にお見合い話が舞い込んだ。相手は、同級生だった致遠。彼には中学生の頃、自分のBL漫画を否定されたことがあり、いま一番会いたくない相手だった…。中国と日本、文化も慣習も違う2つの国を行き来しながら、自分の夢を叶えようと奮闘する中国人女性の葛藤と冒険を描く第1巻! 2023年春に「モーニング」に読み切り版が掲載され話題となり、「モーニング・ツー」で連載化となった作品です。
普段は意識せずごく当たり前のものとして享受していることが、少し時や場所が変われば当たり前ではないということはままあります。本作は、日本でデビューを目指すBL作家を通してそういった当たり前の大切さを気付かせてくれる作品です。 小6で男性同士の恋愛シーンに出逢って目醒めた主人公・夢言(ムゲン)。26歳になった現在もBLを愛好し漫画家として活動しているものの、中国国内において表向きBLは禁止されている状況で、担当編集にもBLを描けないとダメなら切ると言われ本当に好きなものを堂々と描けない苦しみを受けます。 かつては好きなようにマンガを描いてpixivにアップロードしていたものの、国の規制でブロックされてしまいVPNを使っても繋がらないことが増えてしまったという現状。 しかし、そこに日本の編集者からのメッセージが届きます。それと同時に、かつて自分の描いたマンガを破り捨てた幼馴染の致遠(チエン)との縁談が持ち上がり、夢言の運命は一気に加速していきます。 日々さまざまなマンガやアニメ、ゲームや小説、映画やドラマなどに触れている私たちですが、日本に住んでいると政府による検閲や表現規制、インターネット規制がごく当たり前に行われている社会がすぐ隣にあるということは忘れてしまいがちです。アジアを見渡しても、まだまだ各種表現への規制は厳しいところが多いです。 それらは決して対岸の火事ではなく、一歩間違えれば日本もこれから同じようになっていってしまう可能性があります。さまざまな理由で表現を規制しようとする人と、たとえ自分が嫌いなものであったとしても表現の自由は守ろうという人が日々鬩ぎ合っています。 街の書店でBLマンガを買って読んで、同じものを好きな人とネット上で知り合い語り合う。日本人なら当たり前のようにできるそのことが、どんなに難しくて稀有なことなのか。逆に言えば今この日本における状況がどれだけ恵まれたものなのか、ということを改めて思い出させてくれます。 この作品は、作者の史セツキさんが自身の体験も基にして描いているので、日本の作家ではなかなか出せないであろうリアリティが随所から滲み出ています。 興味深かったのは序盤の「双親角」。子供を結婚させたい親同士が互いの子供について情報交換をする場所のエピソードです。そこでは年齢・身長・卒業大学・仕事・年収が訊かれる様子が描かれているのですが、こういう場でも身長が特に重要なステータスとして出されるのだなぁと。中国人は面子を重んじるので身長も高いことが尊ばれ男女問わず身長が低いと侮られやすいとは聞いていましたが、特に女性に関してはそこまで身長を気にすることはない日本人からするとなかなかの文化の違いを感じさせられます。 『魔道祖師』などのように、国境を越えて大人気を博していく作品がこれからますます生み出されていくことでしょう。しかし、この作品の夢言のようにそれが叶わず苦心している人も世界にはまだまだたくさんいるはずです。そうした人たちが堂々と自身の才能を世に発していけるような世界を作る一助になるために、より一層仕事を頑張りたいと思わせてくれた作品です。