無血王の執着
世の中は不穏。隣国との小競り合い、気弱な新王、どこかに潜伏して王座を狙っているという前王の庶子の存在。明日すらも不安な日々の中、リリィは怪我をしている男を見つける。自分の部屋に連れていって介抱すると、男は元気を取り戻し、キスとともに必ず迎えにくるとプロポーズをして去っていった。それから一年、革命が起きた。前王の庶子で無血革命を果たした新王ライアンは「無血王」と呼ばれて恐れられた。そんなある日、リリィは王宮に連れていかれる。目の前にいるのは無血王……だが、リリィは王があの時の男だとすぐに気づく。「会いたかったぞ。リリィ。俺を覚えているだろう?」「改めて言おう。俺のものになれ。リリィ」強引なライアンに戸惑うリリィは反射的に断ってしまう。その拒絶がライアンの執着心に火をつけてしまい、激しい肉体への求愛が始まった。
幼いころに両親を亡くしたフローラは叔父夫婦に育てられる。良い子にしていたら幸せになれると言われて信じていたのに、十八歳の誕生日に言われたことは、見るもおぞましい脂ぎった変態伯爵との結婚だった。「そんな……わたし、良い子にしていたのに」絶望するフローラに乳母が逃げるよう助言する。フローラは慌てて屋敷を抜け出したが、伴の者とはぐれてしまい、追手に捕まってしまう。そこに現れたのがティエルという名の正体不明の剣の達人。助けてもらったフローラは、ティエルから問題解決の提案をされる。帝城に行こうと。この正体不明のイケメンにボディガードになってもらい、帝城に向かうフローラだが、いつしかティエルに惹かれていることを自覚する。そして求められるままに身体を許し、ひとつに……だけどティエルって何者なの!?
昼は銀色の豹、夜は麗しい娘――フロイラインはそんな悲しい運命を背負った姫だった。物心ついた時には黒い森にある古城で家令のアイネイアスと二人きり。心は後ろ向きになるばかり。いつものように森の中を駆け回っていたら、美麗な男と遭遇する。珍しい人間との遭遇にフロイラインの心は弾み、つい彼の頬をぺろぺろと……。楽しい時間は束の間。夜の帳が降り始めるとフロイラインは慌てて古城に戻ってきた。ところが男は豹の足のフロイラインを追いかけ、古城にやってきた! 男は隣国の王子エーレンフリートと名乗り、フロイラインに優しく接してくれる。傍にいたい、必死の想いで真実を告げると、エーレンフリートはフロイラインを受け入れ、愛をささやき、優しく官能の世界へと誘ってくれる。すべてを委ね、処女を捧げたものの、エーレンフリートの祖国では異種な姿の動物は不吉と言われていて――。
父と二人の兄によって超箱入り娘に育てられたアイゼリア王女は、「男」という存在をほとんど知らない。物心ついてから目にした「男」は父と兄たちだけで、たった一度だけ、将来を案じた母がサロンに出席させたものの、恐怖のあまり気絶してしまう始末。そんなアイゼリアに隣国の皇太子ジュリアスとの縁談が決まった。母は一計を案じ、ジュリアスと瓜二つの双子の姉であるというジュリアを、「慣れ」させるため教育係として招待する。ところがどっこい、実はジュリアとは、女装癖のある困ったジュリアスの女名であった。正体を隠して伽の仕方を教えるジュリアス。純粋で一生懸命なアイゼリアに、ジュリアスは次第に「男」を抑えられなくなり……。国家の平和を巻き込んだ、このとんでもない二人の縁談の行方はいかに!?
奪われた神の花嫁
清い体のまま、神の花嫁になりたい――そう願い、処女を守り、この六年間、修道院で献身的に務めを果たしてきたカトリーヌ。その資格を得られると喜んだのもつかの間、意地悪な義理の母と義理の妹の策略によって大商人ルカスとの政略結婚を強いられる。実家は男爵家ではあるものの、義理の母たちの散財によって没落寸前であったのだ。選択の余地なく修道院から連れ出され、ルカスと対面させられる。美丈夫なルカスに驚くものの、愛などない。むしろルカスの目的は男爵家の地位では……落胆するカトリーヌだったが、結婚の承認を行う領主のアランが救済の手を差し伸べてくれた。修道院に戻れる! そう思ったが、なんとそのアランが夜這いを! 大商人のルカスと領主のアラン、二人の男による奪い合いの中、神への愛を信じるカトリーヌは激しく動揺するのだが。
アメリカで名画を競売にかける――そんなプロジェクトに参加することになった美大生の茉莉。引き込んだのは外資系ファンドの日本法人社長の高邑仁。ふた回りも年の差のある仁は、知的で精悍、何にもまして目力があり、茉莉の心を鷲掴みにしてしまう。仁と共に渡米した茉莉は、そこで仁の別れた妻と彼女の夫に出会う。四人で話をすることになったが、英語が練達でない茉莉は疎外感を抱いてしまい、一人バーを飛び出した。ところが地下鉄で間違った線に乗ってしまったため、仁に多大な心配をかけてしまう。「よかった」安堵する仁に茉莉の心は激しく高まる。部屋の前まで送ってくれた仁におやすみのキスをすると、返されたキスは深くて濃厚。どうして? いつから? でも……。初めての海外、初めてのアメリカ。マンハッタンのど真ん中で愛しい人に求められ、茉莉はもう一つ、初めての体験をする。溺愛と蜜愛の日々、帰国、そして……。
それでも、私の愛をお前に伝えるには足りなさすぎる■過去、二度の結婚で初夜を迎える前に夫を兄に殺された公女レナータは、悲劇と兄の冷酷な仕打ちから心を守るため、感情を閉ざし人形姫と呼ばれるようになった。そんなレナータを政略の駒として使おうとする兄により、三度目の結婚が強引に決められる。相手はかつて兄と敵対していた国の傭兵公アレッシオ。兄と近親相姦の仲にあると噂されており、かつ、敵であった夫に歓迎されることはないと悲嘆するレナータ。しかし、アレッシオはレナータの処女を優しく散らし、熱く溺愛し、傷ついた心を解き放とうとする。政略結婚の妻として、兄に対する人質として、いつ殺されるかわからない。けれどアレッシオが愛しい。アレッシオの真意がわからぬまま、徐々に人としての心を取り戻していくレナータに、歪んだ憎悪と執着を抱く兄の陰謀が暗雲のように迫っていた――。
本当に互いを愛して、結ばれたんだと実感していたんだ■香奈は「ピアニストの卵」である優弥と付き合い始め、幸せな時間を過ごしていた。ところが優弥がワルシャワで開かれるコンクールに参加する決意をしてから二人の歯車が狂い始める。コンクールの結果は不発だったけれど、縁に恵まれてイタリアへ留学することになったからだ。連絡は次第に回数が減り、ついになくなってしまう。香奈は優弥へのつながりを完全に失ってしまった。泣いても、泣いても、悲しみが晴れることはない。だってこんなにも愛しているのだから。それから二年が過ぎ、香奈はようやく優弥のことを思い出にかえることができた――はずなのに、アルバイト先のお屋敷で優弥と再会! 優弥はピアノを捨て、水島グループの社長に就任していた。さらに女性と浮き名を流す遊び人の暴君と変わり果てていた。そんな優弥が香奈に強引に迫ってきて――。
渇愛契り
貴女がいい! そう言っただろう? 私は貴女自身を欲したと■紅陽国宰相の娘、美麗は幼い頃、不幸な事故によって母と乳母を失ってしまう。その事故の原因が美麗にあると思い込んだ父は、それ以後美麗を憎み、遠ざけたことにより、離れの離宮で孤独な生活を送る。寂しさに心が枯渇する日々。いつか父から逃れ、自由に生きたい――そう思い、身分を隠し、母の親友が商う妓楼で舞姫として働き、給金をためていた。そんな美麗は、近頃足しげく通ってくれる貴人に心惹かれるようになる。ときめく心を知られぬように、そう思えば思うほど焦ってしまう。いつもは舞だけを所望する彼は、今夜、美麗が身を売らぬ舞姫と知りながら求めてきた。一度は断るものの、部屋に戻るところを待ち伏せされ、激しく求められて抗えず許してしまう。この時から、彼の執拗な求愛が始まった。
愛してる。独りぼっちになっちまった俺が、最初にお前を見た時からずっと■ドゥハ国の末姫ラティーファは、ジャラームビ国で行われる「花嫁選びの儀」に出なければならず、その際、唯一の希望として父王に、自らが育てた愛しい獅子ザジの同行を強く願った。渋る父王を説得し、ザジと共に砂漠を渡って皇太子ヘイルのもとへと向かう。ザジもまた愛しいラティーファのために、静かに寄り添い、その言を忠実に守っていた。到着したジャラームビ国でザジはひょんなことから、花嫁はすでに決まっていて、選ばれなかった姫は侍女になるか妾になるかしか道はなく、祖国に帰ることも誰かに嫁ぐこともできないと知り、激しく憤る。しかし己は獅子。人の言葉は解すれど話せず、人でない身は姫を愛することもできない。そんなザジの前に、自らを魔女と名乗る女が現れ、「相手がお前を愛してくれれば、お前は人間になれるがどうする?」と、魔の契約を結ぶかどうかを尋ねてくるのだが――。
報酬がバージンなんて! 愛の力で奇跡を起こせ! ■家業のピンチを救うため、「わずか10日」で自動車運転免許を取得する必要に迫られた美由紀。それをサポートするのは元F1レーサーの恭太郎。イケメンで、地元富豪の御曹司でもあった。そんな強引御曹司恭太郎は、なんと報酬に美由紀のバージンを要求してきた。「なにー!」とは思っても、背に腹は代えられない。こうして「もう一日も無駄にできない」教習がスタート。教程をクリアするたびに蕩けるような“キスのご褒美”が。恭太郎のドライブ&ラブテクニックに翻弄されながら、美由紀は奇跡に向けて着実に進んでゆく。そして恭太郎への愛も着実に深まって……。恭太郎が、実は兄・正人の同級生で、幼いころから美由紀のことを遠くで見守っていた、なんて“秘密”も告白され、美由紀と恭太郎の心と体の距離を縮めていった矢先、恭太郎を追放した米国チームのオーナー令嬢キャシーが彼を迎えに来る。どうなるの、この恋。それに報酬は?
あなたのために生きる、愛の種を宿して――命がけの「逃避行」■暴君として君臨するギュスターブ王を父にもつナディアは、革命派を振り切り、父王とともにからくも王宮から逃げ出すことに成功する。山の麓のさびれた廃屋にて身を隠して暮らすナディアだったが、間もなく王宮警察隊に捕らえられてしまう。絶望したナディアは崖から冷たい海へと身を投じ、自ら命を絶とうとした。ところが王宮警察隊の隊長であるクローヴィスによって救われる。素肌と素肌を振れあわせ、互いを温めあううちに、ナディアは自らの体の深いところが痺れ、疼いてくるのを感じる。クローヴィスもなかなか温まらないナディアを救おうと、体の内側から温めようと試みる。生きるために結ばれた二人の肉体。このままクローヴィスに寄り添って暮らそうと思った矢先、ナディアを追う二派があることが判明する。一方はナディアと婚約関係にあると言い、王位継承権を主張するレイナード卿と、それを阻止しようとナディアを亡き者にせんとする改革主流派。これらから逃れるためには法王庁に逃げ込むしかない。かくして法王庁を目指し、逃避行が始まった――。