戦闘員、派遣します!

剣と魔法のファンタジー世界を侵略しよう

戦闘員、派遣します! 暁なつめ 鬼麻正明 カカオ・ランタン
ゆゆゆ
ゆゆゆ

地球の征服を目前にした悪の秘密結社は、地球以外の人類が住める星を求め、ついに剣と魔法のファンタジー世界へ。 選ばれた下っ端隊員は、女幹部からやたら愛されている、生き抜くしぶとさは一人前な「戦闘員六号」&サポート用美少女アンドロイド。 悪行を為せば得られるポイントと引き換えに、ハイテク機器を剣と魔法の世界へ持ち込み、あっという間に制圧!! なんてうまい話はなかった。 悪の秘密結社なので、相手が嫌がる悪いことをしたらポイントが貯まる。 「悪行ポイント」のおかげで、助平な行為も正当な行い。 局部を徐々に露出してキャーッからの、スカート捲り、セクシーポーズ撮影、さらにはお姫様の寝室に侵入して何やってるのよ!! 戦闘員六号は、そんな悪行でポイントをちまちま貯めて貯めて貯めて、貯めたのに、なんでそんなことに使っちゃうんだ?!?! 暁なつめ先生による他の作品「この素晴らしい世界に祝福を!」と比べると、少年誌お色気枠のようなシーンが多い。 悪行ポイントが貯まるから、仕方ない。 ただ、戦闘員六号だからこの展開になるのか、秘密結社キサラギだからか。。 科学の使徒であるアンドロイドのアリスが、魔法を科学的に解明し、神や悪霊を信じない様子もまたおもしろい。 暁なつめ先生が生み出すキャラクターやコメディと感動が合わさったストーリーはとても好きなのだけど、この作品も同じようにおもしろくて好きだ。 ゲスだけど、やるときはやる男っていうのが良い。 本作だと悪の秘密結社の戦闘員という、ゲスくても許される属性付き!

つれづれダイアリー

つれづれなる青春

つれづれダイアリー 草野ほうき
名無し

勉学に励んだりスポーツに打ち込んだり、 若いときにしか出来ない人生経験を積もうとしたり。 そういう青春を尊重し正しく美しいと評価する。 それは世間的には当たり前であり正論だと思う。 では、友達を作りたいと思い、そのために釣りを始める、 そういう青春を世間はどう評価するだろうか。 概ねで微笑ましくは見守ってくれるとは思うが、 「もう少しなにか」とか「もっと大事なものも」とか、 「遊んでばっかりだね」とか言われそうな気がする。 「釣りもスポーツですけれどねえ・・」とか。 しかしながら、むしろそっちのほうが普通の青春であり 普通の青春時代の過ごし方ではないかとも思うのだ。 童話のアリとキリギリスとかウサギとカメとかが説くところの 「真面目が正義」はある意味でまさに童話だ。 実際には人は日常生活の中で楽しそうなものや 興味を持ったものを優先する。 多感な時期ならなおさらに。 それが普通であり本能だと思う。 そう考えれば「つれづれダイアリー」の登場人物は 現実的で正直に素直に青春を謳歌している。 興味を持ったクラスメイトと仲良くなるために釣りをはじめ、 釣りの魅力にもハマっていく森野アリス、 普段は人と接しようとしないが、釣りを介すれば 饒舌にも親切にもなる橘音々子。 釣りに興味が無かった子と釣りしか興味がなかった子が 出会ってすこしづつ距離を近づけていくという ごく日常的な女子高校生生活漫画。 二人はこの出会いで学力やスポーツ能力を とくに高めるわけでもない。 だがこの漫画は、さして変わらぬ日常が 釣りと友達?というものにちょっと関わるだけで とても楽しくなるということ、 青春時代って、ちょっとしたことをとても楽しく 嬉しく感じることが出来る時代だということ、 そういうことをこの漫画は思いださせてくれた。 また、釣り知識とアルアル体験談、それと魚料理に関しては 楽しみながら勉強になる漫画でした(笑)。

ささめきこと

残酷な世界は二人を祝福するか?

ささめきこと いけだたかし
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

百合作品には大きく二種類あります。一つは女性ばかりの世界で、同性愛が当たり前とされる物。もう一つは異性愛者が多い世界での同性愛を描く物。『ささめきこと』は後者です。 『ささめきこと』は同性愛を「異質」とする、少し古く見えて今もそう変わらない現実世界を描きます。愛らしいコメディタッチの中に、時折キツい正拳突きを繰り出します。 女子に恋した主人公は、空手の猛者で可愛さとは無縁。主人公が恋した女子は同性愛者で、その事で傷ついた過去を持つ反面「可愛い女子が好き」と公言して主人公を傷つける。 さらに同性愛に理解の無い人、興味本位な人は二人を傷つけ、そして浮かれた味方も二人をかき乱す。しかしそんな人々は決して「悪い」とは描かれません。 一方傷つきたくなくて相手に踏み込まない二人はもどかしいけれども、その大きすぎる傷を想像すれば致し方ない。臆病な二人もまた「悪くない」のです。 誰も悪くないのに、無理解と無遠慮に満ちている。そんな現実世界を描く、残酷な作品です。でもその残酷さの果てにはどんな恋愛漫画よりも大きな感慨と、本当は「悪くない」周囲の人々の祝福が待っているのです。

つれづれダイアリー

ツレない釣り女子に釣られる乙女

つれづれダイアリー 草野ほうき
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

初心者との釣行はメンドクサイと、ある釣り人から言われた事がある。 教えながら自分の釣りをするのは大変だ。大抵の釣り教師は、自分の釣りを半ば諦めている。なので初心者は、教師が目を輝かせて釣りの蘊蓄を語るのを、きちんと聞かなければならない。教師はそうやって、語り合える釣り仲間を増やしたいと思っているのだから……だそうだ。 十年以上前に聞いたこんな言葉を、『つれづれダイアリー』を読んでいてふと、思い出した。 ★★★★★ 橘音々子は、女子高生ながら極端な釣り至上主義者。人との交流を一切断ち、釣りのためだけに行動する。 そんな彼女を気に入ってしまった、同級生の森野アリス。何とかしてお近づきになりたいが、名前も覚えてもらえない。 しかし、アリスが「釣りに興味を示した」瞬間だけ、音々子が反応する。そして釣りについて滔々と話し、釣り方をレクチャーする。 独りで釣りをしたいという「釣り愛」と、釣りに興味のある者を無碍に出来ない「釣り愛」のせめぎ合いの結果、音々子はアリスに遭うと「チッ」と舌打ちしながら(恐っ)釣りを教えてしまう。 音々子の釣法の説明は丁寧で、魚の食べ方まで詳しい。釣りの教科書として初心者から、割とできる人でも楽しめる内容。(『週間つりニュース関東版』掲載の出張四コマが巻末にあるが、色々な釣りのあるあるが満載)陸っぱりの釣りにはかなり詳しくなれるので、初心者の方はこれを読んでから経験者と釣行すると、話が弾んで喜ばれるかもしれない。 描かれるフィールドは浜名湖。汽水域の広がる好漁場で魚種も多く、楽しそう。ウナギにまつわる回はひたすら音々子がかっこよく、必読! そして、あくまでアリスに興味が無い音々子を、アリスは少しでも振り向かせることが出来るか?という、ちょっと「片想い百合」的な楽しみ方も出来る作品でもある(出張四コマの二人の、本編との落差……これはアリスの妄想なのかも)。

あの娘にキスと白百合を

新たな百合マンガの金字塔

あの娘にキスと白百合を 缶乃
sogor25
sogor25

中高大一貫の名門女子校、清蘭学園を舞台に様々な少女たちの物語が描かれるオムニバスストーリー。 中心となるのは成績学年1位、品行方正の優等生、白峰あやかと、高校から編入してきて白峰さんから成績1位の座を掻っ攫った、奔放なのに一匹狼な振る舞いの黒沢ゆりねの物語。2人は対立しながらも徐々に関係性を深めてゆくという王道の物語が展開されます。 しかしながらこの作品の特徴は、メインの2人の物語と平行して、2人の周りの様々な登場人物の恋愛模様が描かれる点。2巻以降の各巻で異なるキャラにフォーカスが当たる構成ですが、登場人物ごとに関係性の深さ、濃淡が様々で、仲の良い友人関係のような組み合わせからお互いががっつり恋愛対象として見ている2人まで、まさに「少女たちの数だけ、物語は存在する」というキャッチコピーに相応しい、たくさんの表情を見せてくれる作品です。 そして最終巻では白峰さんが黒沢さんとの関係性に対して結論を出します。その過程でこれまでに登場したキャラが再登場し、黒沢さんとの関係性に悩む白峰さんに助言を与えていきます。再登場したキャラにしっかり焦点をあてつつ、最後に白峰さんと黒峰さんの物語に収束していくという見事な構成で、まさに万感胸に迫る最終巻。 各巻単体で読んでも、作品全体を通して読んでも素晴らしい、百合マンガの金字塔といえる作品だと思います。 全10巻読了