マグメル深海水族館

深海魚専門の水族館飼育員達が贈るファンタジー風お仕事系作品

マグメル深海水族館 椙下聖海
カワセミ㌠
カワセミ㌠

タイトル+表紙でもお分かりかも知れませんがこの作品は普通の水族館とは全く異なる深海魚専門の水族館が舞台となった珍しい作品であり、深海魚は勿論ですが水等の絵のタッチが非常に綺麗かつ独特な雰囲気を放っており他の飼育員系作品とは一線を画す物語も相まって大変素晴らしい作品と強く実感しましたね まず深海魚についてですが魚本体に加え卵や体長・生息水域等の生態が非常にリアルに描かれており各エピソードの後の説明ページは【ぬまがさワ●リ】先生風に描かれていたりと大変見やすいかつ分かりやすく回を増す事に深海魚への興味が湧いてきましたね 次に世界観や登場人物達についてですが、まず通常の水族館とは違い地上ではなく文字通り海の底に建っておりより身近に深海と言う存在があるファンタジー要素まで含んでおりますがそれが何の違和感も無く馴染ませつつ読者の心までをも深海へ連れていく世界観の構築には毎回脱帽しましたね そんな不思議な世界観で働く人々の描写もまた素晴らしいのですが何故こんな変わった水族館に勤めるのか? 何故深海魚ではいけないのか? どう深海魚や生き方と向き合って行くか?と館長や飼育員やそこに訪れるお客さんまで問いかけや描写のシーンが用意されておりそのストーリー面もまたこの作品の面白さを引き立てる程に仕上がっております と長々と感想を書いてきましたが要約しますと絵やストーリー内容どちらも大変素晴らしい作品となっておりますのでご興味ありましたら是非マグメル深海水族館へお越しになられてはいかがでしょうか?

熱帯魚は雪に焦がれる

寄り添う孤独と瀬戸内の光 #完結応援

熱帯魚は雪に焦がれる 萩埜まこと
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

愛媛県大洲市長浜を舞台とするこの作品は、井伏鱒二の小説『山椒魚』をモチーフとした作品でもある。 小説の〈山椒魚と蛙〉となぞらえられる、二人の女子高生。閉じ込められるのは、孤独という名の岩屋。そこは暗く冷たいが、二人の外に広がる光景は眩しい。 穏やかな瀬戸内海は、いつでも心を癒してくれる。高校の水族館部の魚や水生動物は愛らしい。そんな光景の中で、孤独を抱える二人はお互いの孤独を知り、不器用に身を寄せ、言葉を交わす。 寂しいという感情を持つ人が「寂しい」と人に告げる事の困難さが描かれ、これは私の物語だ、と思わされる。 しかし私は、その先の光景を知らない。 二人が「寂しい」を告げた、その先の光景はとてつもない煌めきに満ちていて、私は己が体験した事の無いそれを、少しの寂しさと、大きな喜びで眺める。 他にも所謂「優等生」が抱く重圧や孤独について、私の実感と非常に近い物があり、これが描かれた事で私も少し救われた気がした。 二人の関係性に恋愛だの友情だの、区分をつけようとすると最後まで混乱するだろう。この二人はこの形なのだ。そんな事よりも、暗い孤独に共鳴する全ての人に柔らかな光を見せてくれるこの物語を、そのまま丁寧に享受したい。

水族館で働くことになりました

活き活きとホノボノを感じる「ちょうどいい」お仕事漫画

水族館で働くことになりました 日高トモキチ
名無し

第一話に「この本は事実に基づいたフィクションです」 と書いてある。 このフレーズを掲げる作品は危険だと思っている。 「ようするにフィクションだよね」 という話になりがちだから。 「手打ち風うどん」「本場風中華」 みたいなやつになりがち、とどまりがち。 それで面白い作品(例としてあげれば梶原一騎先生の作品) になっているならよいけれども、 たいして面白くもない、という作品も多い。 「水族館で働くことになりました」は 事実に基づいたフィクションという描き方を 最適に活用した面白い良作品だと思う。 別の言い方をすれば、 わざわざこのフレーズを書かなくても済ませられた かもしれないが、正直にあえて書いて、 そしてそれが正しかった漫画だと思う。 ノンフィクションには「真実という価値」があるが 真実には過激だったり不快だったりする面が 含まれていることもある。 そこを除外したり脚色すれば、 ノンフィクションという価値は 下がるか無くなってしまう。 水族館の仕事も、真実を忠実に描こうとすれば もっと肉体的にも精神的にもキツイ面を 描かざるを得なくなると思う。 早出・遅番・宿直のつらさ、衛生面や匂い、 怪我や病気や、潜水仕事などでの命の危険。 そして何より命を預かっているという重圧。 だがそれをノンフィクションで忠実に描くことは 水族館側が望むことでは無いと思う。 お客様には、生き物を飼育することが大変だと 知ってもらいたい面もあるだろうと思うが、 知ってしまったら、単純に楽しむことが 出来なくなるかも知れず、それは水族館としては 避けたいことだろう。 そこに配慮して「水族館で・・」は 事実に基づいたフィクションということで 上手く、そして面白くて、良い意味で 水族館側が望んでいる漫画にしていると思う。 その点で、日高トモキチ先生は凄く上手い。 主人公が活き活きと明るく仕事をしている。 大変なんだろうな、と適度には思わせながら。 読んでいるほうとしてはホノボノする感じを受ける。 愛嬌のあるキャラの仕草やセリフで。 そういったいかにも漫画的な手法で。 読んだら水族館は楽しいところだなと感じ、 飼育員さん大変だけれど頑張ってね、と思うようになる、 事実に基づいたフィクションだからこその とても面白いと感じる、お仕事エッセイ漫画だった。