定額制夫の「こづかい万歳」 月額2万千円の金欠ライフ

なにごともストイックに取り組む姿は美しいですね。

定額制夫の「こづかい万歳」 月額2万千円の金欠ライフ 吉本浩二
酒チャビン
酒チャビン

節約にストイックに取り組む人々の群像劇です。 節約を描いたマンガとしては「つるピカハゲ丸」が最高峰ですが、それを覆すポテンシャルを秘めたマンガです。いや、すでに抜いているかもしれません。 あちらはセコさをギャグに昇華して見せるスタイルを採り、「つるセコ」というオリジナル概念で流行語大賞目前までいきましたが、こちらはとことんストイックなところをリアルに細かく描写(作画自体はリアルでも細かくも無いですが)して心情を揺さぶってきます。そういう意味では、大きな枠組みとして捉えれば、本作もスポ根マンガと言えるかもしれません。 会社の経費の立て替えでポンタポイントを貯める人や、家飲みを突き詰めた結果、キッチンが居酒屋っぽく改装されてしまった人など、相当高みを極めた(というかヤバい)方々が登場します。2巻とか相当やばかったですね。 ただやはりその対象が何であれ、何かを極めんと欲して試行錯誤する姿は純粋に美しいものですし、我々の心を打ち、日々の生き方を変えてくれる(つまり世の中を変革する)もので、作者をはじめ、本作に登場される方々には尊敬の念を抱かずにはいられません(ホメてます)。 読んでいるときの心情としては、尊敬5、感動3、クスクス(ギャグ要素)2、くらいのイメージです。

お金さま、いらっしゃい!

姿勢も境遇も真似できない

お金さま、いらっしゃい! 高田かや
野愛
野愛

初心者に節約術とか財テクとかを教えてくれる漫画っぽい表紙なのがなんとも憎いです。何も知らずにうっかり読んだらお金よりカルト村のことが知りたくなるはず。 対価0円で毎日労働、物は共有で金銭のやりとりはない、そもそもお金を隠し持っていたら没収されてしまう。 そんなカルト村で育った高田かやさんが一般社会でどのようにお金と向き合ってきたかを描いた作品です。 ・お金に触れる機会がほぼ無かったから、お金に対して強い憧れがある。 ・ものを買うという経験がないから、自分の欲望と消費が結びつかない。 一般社会で育った者からすると、こういう感覚は自分にないもの。貧乏で我慢しながら生活していた人ともまた違う感覚だと思います。 安くていいものと高くていいものの見極めができるようになったり、共有ではなく個人で所有する感覚を掴んだり。 何気ない日常にも新鮮な喜びや学びがあるのだなと感じました。 旦那さん達の金銭感覚にはちょっとモヤるけど、かやさんが受け入れて幸せなんだから凄いよな……。 環境や他人のことを責めずに、自分が幸せであるために努力できるのは素晴らしい。 素晴らしいけど……それは村で育ったおかげなのか?という考えが一瞬よぎってしまうので、やっぱりカルトは恐ろしい。

定額制夫の「こづかい万歳」 月額2万千円の金欠ライフ

お小遣いを通した人生観が垣間見える

定額制夫の「こづかい万歳」 月額2万千円の金欠ライフ 吉本浩二
六文銭
六文銭

話題になっていたので、読んでみましたが、身につまされました。 結婚して家庭をもつと、特に、意識しなければならないのはお金のやりくり。独身のときよりも自由に使えるお金が減りますからね。 なので、毎月のお小遣いも、必然的に制限されます。 本作は、そんなお小遣いをやりくりする夫の話で、世の中の所帯持ちの男性は参考になるのではないでしょうか。 特に、自分もお菓子が好きなので、筆者の少ないお金で最大限の幸福を追求する姿勢は、唸るものがありました。 ただ、添付のように夫婦間でセコイ喧嘩をするシーンがあり、 カルピスを多く飲んだくらいで、また味ごのみを1袋食べたからって、そない怒らんでも(ってか、勝手に食べちゃいかんでしょ)と思いました。 貧しくても、心まで荒むのはよくないすよね。 貧乏や苦労話のジャンルが個人的にトラウマなので、色んな人の小遣いをやりくりする話が続いて気が滅入りそうになりますが、 さっきの、夫婦喧嘩の仲直りの仕方が粋だったりと、読後感は総じて良いです。 金銭的な苦労話が中心ですが、ストーリー全体で暗くならないのが、本作の魅力かなと思います。 また著者の持ち味である人情系のエピソード(小遣いを通した家族の絆的な)もあって、これがすごく良くて、何度も読みたくなります。 お金の使い方はその人の価値観がでると言いますが、すなわち、お小遣いもしかりです。 お小遣いを通した人生観が垣間見える、そんな作品ではないでしょうか。