完結したマンガの感想・レビュー16032件<<4041424344>>誰しもが陥る可能性のある陥穽 #1巻応援ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ 魚豊starstarstarstarstar_border兎来栄寿アニメ化も発表された『チ。』や、『ひゃくえむ』の魚豊さんによる待望の最新作1巻が発売されました。 今回は、いわゆる「陰謀論」マンガです。単体でも挑戦的でまさに現代に相応しいテーマなのですが、それを『チ。』の後にやる。人間の知的探究心がいかにして世界を切り拓き動かしていくかという物語をやった後に、それが間違った方に転がったらどうなるかという危うさを描く。素直にすごいな、と思いながら1話から楽しみに、一方で恐ろしく思いながら読んでいました。 現代社会には、情報が蔓延しています。し過ぎています。現代人が1日に触れる情報の量は江戸時代の人間の1年分・平安時代の一生涯分に相当するとか、2002年のインターネット上の情報を10とすると2020年の時点ですら約60000になっていて今も加速度的に増え続けているなどと言われます。 コロナ禍にあっても、不安や困窮から冷静な判断をしにくくなっている状態で玉石混淆の情報が錯綜し、何が正しく何が間違っているのか多くの人が惑う中で分断や対立が起こってしまいました。最近急速に発達しているAIによるフェイク動画や画像なども今後はより氾濫していき、ますます真実を見極めるのが難しく、大事な時代になっていくでしょう。 そんな情勢下において、この物語で語られることは非常にクリティカルです。人は、他の人が気付いていない真実に自分だけが気付いているという甘美な果実の旨味からはなかなか逃れられません。 本作の主人公である渡辺は非正規雇用のいわゆる社会的弱者ではありますが、小学生のころの成功体験を基に論理的思考をする癖をつけてきた人物です。そんな彼が、いかにして陰謀論に堕していくのか。社会から受け入れられてこなかった人間が、少しでも自分を肯定してもらえるとどうなるのか。 そこには、現代社会や資本主義の、あるいは人間自体の構造的な脆弱性があります。そして、その脆弱性を利用して利益を得ようとする悪意が必ず存在し、そこも実に巧妙に描かれます。 客観的に離れた立場から見ている分には論理的な矛盾なども冷静に指摘できるものですが、いざ自分がその場で肉体的・精神的・経済的に弱まって判断力が低下した状態で同様のことをされた際にどうなるかと考えると、誰しもが自分は絶対大丈夫などとは決して言えないのではないでしょうか。 確かに女の子も出てくるのですが、この作品をラブ「コメ」と言ってしまうのはあまりに救いがなさすぎる気もします。読んでいると、共感性羞恥に近い諸々の感情も生じてきます。それでも、圧倒的に目の離せない筆力は流石の魚豊さんです。 反面教師として、戒めとして、大事なことが記されている物語です。ジャンプ史上屈指のギャグ漫画魁!!男塾 宮下あきらstarstarstarstarstarマンガトリツカレ男男塾の授業はクソ面白い 直進行軍が特に良い身分の違う2人のロマンスは一夜にして全てが逆転する #1巻応援緋色の枷のラーレ みどり子sogor25王宮で奴隷として働く少女・ラーレにはある秘密がありました。 それは次期国王である王子ルスランと2人きりで会う関係であること。 身分差がありながらも互いに想い合っていた2人ですが、 そんな2人の日常はラーレの兄を名乗る男の襲撃で大きく変わります。 国王を討ち取り玉座に就いたその男はルスランをラーレの奴隷にすると宣言し、 事あるごとにルスランの殺害をほのめかしてラーレの心を縛り付けます。 身分差のある両片想いから立場が完全に逆転し、次々に新たな事実が明かされる展開に驚かされながらも、そのままではいられなくなった2人の関係に明るい未来が待っていることを期待せずにはいられない、そんな作品です。 1巻まで読了おしゃピクきっかけの美しい友情物語おしゃピクしませんか? 南マキstarstarstarstarstar野愛Get Ready?の南マキ先生作品ならハズレはないだろうと読んでみました。予想通り面白いです。 会話のテンポがよくてほのぼのコメディとして楽しめるのに、登場人物1人1人の心情が丁寧に描かれていてグッとくる作品です。 友達が少ない不器用OL、インスタグラマーの姉御肌な主婦、お人よしで食べるのが大好きな女子高生、クールな女子小学生、年齢も生活もバラバラな4人がおしゃピクを通して仲良くなっていくお話です。 自分のこんなところ人には見せられないな、こんなこと言ったら嫌われるかな……と取り繕ったり武装していたところごと愛されたらうれしいよね、友達に対してこうでありたいよね、という素敵な友情が描かれているのが素晴らしいんです。 コミカルなのに気がついたらホロっときちゃうから南マキ先生はすごいなあ……。 全2巻でサクッと読めるのに心が温かくなる作品です!おしゃピクしてみたい! モヤっとした気持ちも残った様な。。空飛ぶタイヤ 池井戸潤 大谷紀子starstarstarstar_borderstar_borderPom 文庫も読んだことがないのですが、2巻でまとめたのが凄いなと思いました。 読めば読むほど専門用語が多くて、正直私には少し難しい話だったのだけど、、諦めない情熱的な心と行動が人を動かすのだろうか。。 そして何かこう、人間の悪巧みしている時の顔はあまり見たくないなぁ〜と思いますね。 たとえ闘ったとしても、失った人は帰ってこないのだし、辛いお話だなとも思います。 調べてみたら映像化されているみたいなので、そちらも見てみたい。がんばりょんかぁ、マサコちゃんの感想 #推しを3行で推すがんばりょんかぁ、マサコちゃん 魚戸おさむ 宮﨑克starstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ 読み始めた直後のある「この漫画作品はフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係ありませんが、実在する人々の切なる想い、祈りには大きく関係しています」の文の時点でグッときた ・特に好きなところは? 本編には全く関係ないが、裁判長が「家裁の人」の桑田義雄っぽかったこと ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 漫画の詳細に関してはあえて触れないですが昔のスピリッツっぽい漫画だとは思ったね 「やぶさかではございません」感想やぶさかではございません Maritaニーナ2巻まで読了。これは非常に良きラブコメだ!過去のトラウマにより、いまだに恋愛経験ゼロのアラサー女子、不思議さん。愛し合いたい気持ちは山々なのに、いざ男性に言い寄られると思わず顔が硬直して距離をとってしまう。そんな彼女に熱い視線を送るのは、バイト仲間で、さわやか年下イケメンの上下くん。彼はなかなかお近づきになれない不思議さんのことが、気になって気になって仕方ない! このふたりが、絶妙に不器用で真っ直ぐで、見ているうちについ応援したくなっちゃうのだ。 丁寧な日常描写34歳無職さん いけだたかし名無し無職暮らしの一日 本当何気ない一日が描かれていて特段変わったことが起きるでもない。 でも丁寧に細かく描かれているから読んでて不安にならないし落ち着く。 のんびりいこうや〜って気になります。「あかねさす柘榴の都」感想あかねさす柘榴の都 福浪優子ニーナスペインが舞台と知り、興味津々で読んでみた。…おかげで今、めちゃくちゃ旅行に行きたくってしょうがない(笑) 母を亡くしたばかりの14才の少年ナツキ。見知らぬ叔母と暮らす為に、ひとりスペインへとやって来た。無愛想なアルバとの暮らしに、最初は戸惑うことも多かったナツキだが、少しずつ互いを知り絆を深めていく様子が丁寧に描かれていて良かった。また、個性豊かな周囲の人達が、そんなふたりを温かく見守ってくれているのも微笑ましい。 それにしても、作中の食べ物がどれも美味しそうで、深夜に読んでお腹がすいてしまった。 …先日トゥロンを見つけて思わず購入した。激ウマだった(笑)此ノ木先生の良作の1つSE 此ノ木よしるstarstarstarstarstar_border宮っしぃシステムエンジニアの主人公の就職先の社長が女子高生で天才SEで、そこからラブコメ始まってと要素もりもりだが、開発するものがオナ◯ールというところで、「うん、此ノ木よしる先生ですね」って感じの良作 マジメにSEしつつも開発しようとするのが未来のオナホってところが、先生らしくて、やっぱマジメにアホエロ要素あるのが良い所ですよね 短い巻数ながらキレイにまとまっているので、「変女」などを楽しめた人はこれもオススメです 悲しい記憶からの解放エスの解放 倉多江美starstarstarstarstarかしこ特にすごいと感じたのはセリフです。登場人物達の会話がとても自然なので文字数が多くても読みやすく、同級生の自殺に触発されて悲しい記憶が呼び覚まされた主人公の複雑な心理についても分かりやすく研ぎ澄まされた言葉で語られているのが素晴らしいです。精神が不安定になった主人公を救ってくれた男の子の一言はものすごく心に残りました。初めて倉多江美を読みましたがハマりそうです。パティシエとパパパパセクスキャラメリゼ 楔ケリstarstarstarstar_borderstar_borderるる※ネタバレを含むクチコミです。叔父夫婦の親友と大学生MILK TEA 熊猫starstarstarstarstar_borderるるなんか好きー! 表紙から育児BLに見えるけど、この子は叔父夫婦の 子供のヒロくん。 パパよりパパの親友の成幸に懐いてるのウケる😂 保が成幸に惹かれているのは読んでて見えたけど 本人は無自覚。 「翔(叔父)の代わりだった」という成幸の言葉に傷ついて自分の気持ちに気づく場面はこちらも読んでて心が痛くて涙出た😿 成幸ズルいわー。でも好きでも親友達の甥だし まだ恋愛未経験で未来もあると思ったら言えない って気持ちも理解できる。 でも親友の代わりなんて言っちゃうのはズルい。 こんな良い子を傷つけないで😭 保が同級生とデートするなんて聞いてようやく2人の間が進展した。 大学卒業したら同棲しちゃえばいいのに🤭 そんな2人ももっと読みたかったな。 適当な先生の適当な愛情が本気になったヤクザ教師とハメられ王子 シギ乃starstarstarstarstar_borderるる元ヤクザの長男、蛇淵先生はとにかく適当。 担任挨拶初日にクラスにインフルぶち撒けるとか 信じられないことばかり😅 そんな先生が一目惚れしたのがコミュ障がかった 矢部くん(のヘソw)。 適当に両思いになって関係を続けるけど 友人ハジメくんやサイコパス加古谷先生に バレたりしていく中で矢部くんは気持ちの すれ違い、真剣さのようなもの?の認識の 違いに気づいて辛くなっていく。 突き放してようやく先生も自分が初めて本気で好きなことに気づくというダメダメさ。 でもそこから怒涛の溺愛バカップル😂 蛇淵先生と出会って自分も先生を目指す、 先生らしいことしてこなかった自覚もある先生 からしたらこんなに嬉しいことは無いよね。 最後までハピエンで良かった。 ただ加古谷先生のスタンスは嫌い。 拗らせているからって浮気し放題なのは 気持ち悪い。 あとハジメくん、良い子なのに可哀想だったな。 こればかりは仕方ない。 同性をパートナーとして受け入れられない人がいるのは当然だから眞広くんは悪くない。 どこかで眞広くんを超える最高の子から大切に思われて欲しい。 葬儀について、生と死について。おとむらいさん 大谷紀子starstarstarstarstarPom 売れない女優さんが、お葬式屋で働くお話。 いやー、4巻全てで涙しました。 生きるって、尊い。って、単純な言葉だけど思う。あ、葬儀を行うことにはそう言った意味合いもあるのかとか学びも多々ありました。 生まれたら、死に向かって歩いて行ってるのは分かってるけど中々ピンとこない死の話。読んだからと言って、はい、分かりました。って訳では勿論ないのだけれど、このお話が自分の胸に刻まれたのは確かです。 コミカルな場面もあるので、重くなりすぎず読みやすかったです。パパが料理上手なイケメンに流されたおいしく召しあがれ【コミックス版】 ろむstarstarstarstarstar_borderるる子育てBL好きなので楽しかった。 千春は流されて先生アレックスのこと好きになってしまった。 親子揃ってメンクイと見た😂 そして同僚典嗣に対するふうくんの態度ウケる。 いつまでも懐いてくれない😂 何も考えずにサラッと読める。 あぁ…この作者は…JKハルは異世界で娼婦になった 山田J太 平鳥コウピサ朗※ネタバレを含むクチコミです。異世界会計!女騎士、経理になる。 三ツ矢彰 Rootportstarstarstarstarstar_borderゆゆゆ年末調整、源泉徴収、確定申告、青色白色… そんな言葉が増える年度末。 あなたも女騎士を真似して言おう。 「くっ殺せ!!」 オークに捕まり、くっころ(くっ殺せ)展開! 辱めにあって云々と思いきや、オークに経理のアルバイトとして雇われる。 複式簿記を教わり、簿記2級に合格。 魔国のほうが民度も進んでいる。 魔国からしたら、人間たちが襲ってきているだけだもんな。 くっ殺せ! ちなみに、勇者が税金と会計制度に悩まされる巻末おまけ漫画もおもしろかった。 僧侶がいるので薬草は嗜好品!経費になりません!お仕事BL (イチャイチャ少なめ)相対フライトサイン【ペーパー付】 むないたstarstarstarstar_borderstar_borderるる2人とも爽やかだしストイックで仕事が好きで一生懸命なのはよく分かった。 お互いに信頼しあってるし熱さは無いけど穏やかな愛情もあると思う。 でもBLとして読んだらちょっとLOVE少なめ。 仕事柄離れていることがほとんどだしね。 もう少し「愛情」が見たかった。 民明書房 よ永遠に魁!!男塾 宮下あきら名無し学校である必要があるのか?と思うほど破天荒な荒くれ学生を集めた男塾。 当然学生は勉学などせずに、何故か次々と現れる謎の格闘集団と戦いを繰り広げる。 倒せば魅力的なキャラは仲間になり、次に更に強大な敵が現れるというバトル漫画の王道だった。 バトルにアクセントをつけたのは、新たな敵の格闘術の解説に引用される民明書房! 昔、1年上の不良に伝説を見ていた世代のオッサンなら誰でも知っているはず。 胡散臭い解説とアナグラム満載の当て字の流派名や起源をいかにも史実のように大真面目に記載しているのが最高だった。 ネットが無かった時代に盗用とか捏造とかを遥かに超えた偉大な架空書房よ永遠に!青山広美の漫画は読みやすさと面白さが洗練されているバード-砂漠の勝負師- 青山広美starstarstarstarstarさいろく絵柄の好き嫌いはあるだろうけど、この『バード-砂漠の勝負師-』は序盤の引き込み方が映画的で面白い。 ヒロイン(般若組)が蛇と戦う理由、天才マジシャンの正体などなど最初の展開が尋常じゃなく早い。 この詰め込み方でどうなっていくんだ!?と思ったが、近代麻雀だから麻雀にさっさと行かなきゃいけなかったのかもしれない(笑) 麻雀の対局になってからは重たい空気の中1つ1つイカサマの戦いの正体が暴かれていく。これもまた面白かった。 すごい漫画だ。全2巻でサクッとスッキリ終わるのもちょうどよかったかもしれない。力道山がやって来た―はるき悦巳短編全集の感想 #推しを3行で推す力道山がやって来た―はるき悦巳短編全集 はるき悦巳starstarstarstarstarマンガトリツカレ男・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ この短編集は何回読んでもいいな。確か劇画村塾メンバーが描いていた THAT'Sコミックに掲載された「政・トラぶっとん音頭」やマンガ少年に掲載されたじゃりン子チエなどとは作風が違う「待つ戦士たち」が読める。表題作の力道山がやって来たは読むたびに面白く感じるし、個人的には俺が読んできた読切の中でも特に好きな「オッペラ甚太」だな ・特に好きなところは? 「オッペラ甚太」中学生ぐらいの時にビッグコミックで読んで無茶苦茶面白かった記憶しかない。あらすじとしては声があり得ないくらい大きい少年が出世して故郷に帰ってくるという派手さがほとんどないマンガですが無性に好きなんだよな。 マンガを好きになったきっかけの一作であることは間違いない ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! はるき悦巳の長編のじゃりン子チエは面白いですが、短編も面白いのでぜひ読んで欲しいところです。 となりの猫さん #1巻応援L.A.猫物語 the walking cat nohostarstarstarstarstar_border兎来栄寿アニメ化も話題となっている『となりの妖怪さん』のnohoさんが『ねこぱんち』誌上で2018年から不定期連載されていた猫マンガが遂に1冊の本になりました。 1950年代のロサンゼルスのダウンタウンを舞台に、1匹の大きな猫を通してさまざまな人間模様を描いていく作品です。 「ブラシくん」「パンケーキちゃん」「ニッパー」「ウィリアム」「ヒッチコック」など、街の人々からは思い思いの名前で呼ばれている猫。『耳をすませば』などでも「ムーン」と呼ばれている猫が他の人には「おたま」「ムタ」などと別の名前で呼ばれるシーンがありましたが、動物が色んな人からたくさんの名前で呼ばれるのはあるあるですね。「あだ名が多いのは人気者の証拠」という話は人間にもありますが、呼び名が多いのは愛されている証拠でもありましょう。 本書の中では「探偵事務所のヒッチコック」と認識されているお話の占める割合が多いので便宜上ヒッチコックと呼びますが、猫ならではの気まぐれさでケーブルカーの中でも警察署でも教会でもどこへでも自由気ままに闊歩するヒッチコックは行く先々でたくさんの人々に出逢い、可愛がられます。 『となりの妖怪さん』でも見せるnohoさんならではの何とも言えない穏やかで優しい空気感の良さは本作でもたっぷり味わえます。その上、何せ主役が「猫」ですのでヒーリング効果は抜群です。 後半は少しサスペンス混じりのお話もあり緩急はありますが、全体を通して暖かさが沁みる物語たちです。 基本的な画力が高い上に、猫に対する解像度も高くある程度のリアルさを持った上でとてもかわいいという絶妙なバランスです。 猫好きの方はぜひ読んでみてください。表題作がメチャクチャヤバいダイエット 大島弓子starstarstarstarstar寸々表題作が凄すぎる。認知が歪み気味な女友達の世話をする(友達に対して母性が芽生えてしまう)女と、それに巻き込まれる彼氏。 角松天くんが一歩引いた倫理観を持っていることで「友達をお世話をする」ことに対する批判的な目線もあって良い。<<4041424344>>
アニメ化も発表された『チ。』や、『ひゃくえむ』の魚豊さんによる待望の最新作1巻が発売されました。 今回は、いわゆる「陰謀論」マンガです。単体でも挑戦的でまさに現代に相応しいテーマなのですが、それを『チ。』の後にやる。人間の知的探究心がいかにして世界を切り拓き動かしていくかという物語をやった後に、それが間違った方に転がったらどうなるかという危うさを描く。素直にすごいな、と思いながら1話から楽しみに、一方で恐ろしく思いながら読んでいました。 現代社会には、情報が蔓延しています。し過ぎています。現代人が1日に触れる情報の量は江戸時代の人間の1年分・平安時代の一生涯分に相当するとか、2002年のインターネット上の情報を10とすると2020年の時点ですら約60000になっていて今も加速度的に増え続けているなどと言われます。 コロナ禍にあっても、不安や困窮から冷静な判断をしにくくなっている状態で玉石混淆の情報が錯綜し、何が正しく何が間違っているのか多くの人が惑う中で分断や対立が起こってしまいました。最近急速に発達しているAIによるフェイク動画や画像なども今後はより氾濫していき、ますます真実を見極めるのが難しく、大事な時代になっていくでしょう。 そんな情勢下において、この物語で語られることは非常にクリティカルです。人は、他の人が気付いていない真実に自分だけが気付いているという甘美な果実の旨味からはなかなか逃れられません。 本作の主人公である渡辺は非正規雇用のいわゆる社会的弱者ではありますが、小学生のころの成功体験を基に論理的思考をする癖をつけてきた人物です。そんな彼が、いかにして陰謀論に堕していくのか。社会から受け入れられてこなかった人間が、少しでも自分を肯定してもらえるとどうなるのか。 そこには、現代社会や資本主義の、あるいは人間自体の構造的な脆弱性があります。そして、その脆弱性を利用して利益を得ようとする悪意が必ず存在し、そこも実に巧妙に描かれます。 客観的に離れた立場から見ている分には論理的な矛盾なども冷静に指摘できるものですが、いざ自分がその場で肉体的・精神的・経済的に弱まって判断力が低下した状態で同様のことをされた際にどうなるかと考えると、誰しもが自分は絶対大丈夫などとは決して言えないのではないでしょうか。 確かに女の子も出てくるのですが、この作品をラブ「コメ」と言ってしまうのはあまりに救いがなさすぎる気もします。読んでいると、共感性羞恥に近い諸々の感情も生じてきます。それでも、圧倒的に目の離せない筆力は流石の魚豊さんです。 反面教師として、戒めとして、大事なことが記されている物語です。