2015年、戦後70周年に際して組まれたビッグコミックオリジナルの増刊号。各世代の漫画家が表現した「戦争マンガ 」16作が収録されています。過去作の再録だけでなく描き下ろし作品が半数近くあり、いずれも力作揃いです。戦中戦後の話だけでなく戦争の未来を描いたものまで幅広く、憲法9条を擬人化した「さよなら憲ちゃん」のような意欲作もあって面白いです。ちなみに、いましろ先生だけは釣り&愚痴のいつも通りの漫画になります(^ ^;)
重いテーマの作品が多いですが、収録順に趣向が凝らしてあり、最後まで疲れずに読み通しやすいです。収録作をまとめてみましたが、これが五百円で読めてしまうなんてお得すぎます。
以下、収録作
水木しげる「人間玉」
滝田ゆう「夢いちりん」
松本零士「晴天365日」
さそうあきら「奈々子戦記」描き下ろし
浅野いにお「きのこたけのこ」
高橋しん「LOVE STORY, KILLED.」
いましろたかし「自爆列島」描き下ろし
山上たつひこ「光る風」 呉智英さん解説付き
三島衛里子「橋のたもとで」描き下ろし
石坂啓「さよなら憲ちゃん」描き下ろし
比嘉慂「砂の剣」
あまやゆうき/吉田史朗「僕はあの歌が思い出せない」描き下ろし
竹熊健太郎/羽生生純「ほーむ・るーむ」
東陽片岡「五式戦じじいのブルース」描き下ろし
井上洋介「少年と戦争」
花輪和一「小日本鬼子穴」描き下ろし
<コラム>
いとうせいこう、無着成恭、横尾忠則、モーリー・ロバートソン、片岡義男、南信長「漫画と戦争」
<編集後記>
堀靖樹
----
漫画の合間には、著名人が戦争を語るコラム「わたしの戦後70年談話」もまた、読み応えありです。特に、無着成恭先生の「なぜ戦争はなくならないのか」という問いに対する回答が素晴らしい。仏教的な観点で人間、畜生、餓鬼に例えた説話は、おまけコラムには留まらない、大切なことが書かれているように思います。
最後の堀靖樹編集長の編集後記も良いこと書かれてます。
> 『こうして眺めてみると漫画家はやはり自由の民です。本能的にお上の胡散臭さを嗅ぎ分けてますし、自分の生死は自分の戦場で決めたいと考えています。だからこの増刊は時代のカナリアかもしれません。漫画家の想像力はもう何年も前から、日本の行く末に警鐘を鳴らしていたのです。
漫画は別にお国のためにはなりません。そして、その作品で仕事をしている我々、編集者もしかりです。だからこそ、この時代の「嫌な感じ」に声を上げましょう。そんな増刊号です』
戦後70年を過ぎても時代の「嫌な感じ」は増すばかりです。この本の持つ力がこれまで以上に必要になってくると思います。