寿司 虚空編

よくわからなくても面白いが、そこで終わると非常に勿体ない

寿司 虚空編 小林銅蟲
完兀
完兀

今や狭い世界で広く知られることとなった数学的題材「巨大数」を扱った、世にも奇妙な寿司漫画である。 ぶっちゃけ読んでもよくわからない人がほとんどだと思う。でもよくわからないまま読んでも面白いのだからすごい。このことは、本作を読むのに巨大数への理解が必要ではないともいえるのだけど… でもよくわからないまま読み進めるだけじゃなく、扱われている巨大数への理解を深める挑戦もしてみてほしい。でなければ大きな機会損失になりかねない。 この漫画が提供してくれる機会、それは「世界が広がる感動と衝撃」である。 物心ついた頃、普段目にしている家周辺の空間の外へ初めて飛び出たときに体験するあの感覚。 小さかった頃、自分の知っている世界は実は地球上の非常にちっぽけな範囲だけなのだと気付いたときに得たあの感覚。 利口になってきた頃、あんなにも大きいと思っていた地球の外には、全知識を動員してもどうにもならないぐらい広大な宇宙が広がっているのだと思い知らされたときのあの感覚。 人生でそう何度もないような、あの劇的な感覚を与えてくれる可能性がこの漫画にはある。私は味わった。まさに『わかり』の状態だ。 この漫画、絵やストーリーが最高だと評価される可能性は極めて低いだろう。 しかし「最高の体験を導いてくれる漫画」になる可能性は充分にある。少なくともクラス1の数の逆数で表される範囲ぐらいはある。 それがどれぐらいの大きさになるかは、本作を読み進めて確かめてみて欲しい。単行本未収録の話がpixivコミックに公開されているのでそちらもお忘れなく。

すずめの戸締まり

映画すごく良かった。新海誠監督最新作の漫画版

すずめの戸締まり 新海誠 甘島伝記
Nano
Nano

映画を数時間前に観てきて、本当にすごく良かったので漫画版も拝見しました。 漫画版はアニメ映画版より一層細かく丁寧に描かれているなと思いました。背景やキャラクターなどの絵の描き込みはもちろん、主人公の鈴芽や草太さんの台詞・表情などなど、漫画だからこその表現がたくさんあって面白いです。 君の名は。と天気の子と続いて映画館で観てきましたが、今作のすずめの戸締まりが一番好きかもしれません。でも前作天気の子の時も一番好きと言ってたので、新海誠監督は私の中の一番好きを毎回更新してくるほどの良作を生み出していく天才なんだなと思いました。 何を言ってもネタバレになりそうでうまく言えないんですが、すごく心に響きました。小説版も買ったので映画を思い出しながら読もうと思います。映画もまた観に行きたいです。 気になるけどまだ観れてないなって人はぜひ漫画版を読んでみてください。まだ2話なので全然間に合います。 ネタバレにならない程度の映画感想↓ タイトルの出方でもう鳥肌が立って泣いた。 背景ずっと綺麗で見るところが多くて目移りする。 草太さんと芹澤さん顔がいい。 畏みとかお返し申すとか呪文?祝詞?が日本らしくてかっこいい。 もう1回と言わず何度でも観たい。

闇金ウシジマくん外伝 らーめん滑皮さん

ウシジマくん好きならぜひ!

闇金ウシジマくん外伝 らーめん滑皮さん 真鍋昌平 山崎童々
六文銭
六文銭

ウシジマくんのラスボス的存在のヤクザ滑皮を主人公としたスピンオフ作品。 「らーめん滑皮さん」というくらいだからグルメ漫画かな?と思ったのですが、微妙にちがう。 本編読んだことある人ならご存知かと思いますが、滑皮さんは食べ方が汚いので、とても食レポする感じじゃない。 そして、案の定、しない。 相変わらずズバズバと汚く食べて、味に対しても、まずいとか、食える、くらいしか言わない。 その点は、探偵の戌亥(いぬい)も出てきて、こっちがしっかり食レポしている。 これが、微妙にウケました。 らーめん滑皮さんというか、戌亥だなと。 本編には出て来ない、滑皮さんの意外な一面(部下との関係含)が見れたのがよかったのと、本編に出てきた登場人物の、その後が読めたのが個人的に良かったです。 風俗で稼いだ3000万を盗まれた瑞樹 オサレエンペラーことG10 そして、滑皮に保険金目当てで当たり屋をさせられた愛沢。 皆、最後悲惨な感じで幕引きし、しかもしっかり描くことなく余韻だけ残して終わるものが多かったので、その後どうなったのか?というか、死んだのかな?と思っていただけに、この登場は純粋に嬉しかったです。(パラレルワールド的な解釈かもですが・・・。) 特に、愛沢が再起して、ラーメン屋(しかもそこそこ繁盛している)やっているのが意外で、本作のキーパーソン的な立ち位置まで出世しているのも面白い。 なんにせよ、ウシジマくんに出てきたクセの強いキャラたちが、再登場したり意外な一面を見せたりするので、原作ファンの人は読んで損はないと思いました。

野望の群れ

金!暴力!SEX!そして復讐のピカレスク・ロマン!

野望の群れ 司敬
完兀
完兀

昔どこかで「金!暴力!SEX!な漫画を教えてくれ」みたいなスレッドがあったと思う。この漫画は数少ない正答の一つだろう。 漫画紹介はこの口コミのタイトルだけで一応足りてしまうのだが、以下に補足と私見を書き連ねる。 漫画タイトルを見てピンと来た人もいるだろう。明らかに「野望の王国」の影響を受けて描かれた、というかそれが元となって生まれた作品である。特に第一話の導入なんか隠す気がなくてニヤリと来る。 しかし大胆にして最高のアレンジがある。「野望の王国」は主人公・橘と無二の友にして相棒の片岡が協力し、明確な目的が明かされぬまま裏社会でのし上がる物語だが、「野望の群れ」は言うなれば橘と片岡が敵同士になり、復讐するという明確な目的を果たすためにのし上がる物語になっている。作品全体を貫く物語の背骨はこちらの方が骨太だ。 闘争の空間もこちらの方がやや大きい。復讐相手が大企業の御曹司なので、闘争の空間には社会の表裏の両面が使われる。場所も東京を起点に北海道から九州、果ては海外(香港)まで広がる。素寒貧の一匹狼だった主人公が、度胸と頭脳と復讐心で裏社会を駆け上がっていくのは素直にかっこいい。 裏社会を駆け上がっていくのに重要な役割を果たしたのが「金」「暴力」そして「SEX」なのだ。この漫画、ライバルと取り合うメインヒロインの他にも登場人物に女性が複数登場する。そして大体主人公とSEXする。謀略のために利用してやるだけのSEXだ。主人公以外にもSEXシーンがある。その大体が、付け入られる隙として主人公に利用されるSEXだ。無駄なSEXはそう多くはない。 細かいところをつついていけば、闘争の各元ネタなどここに書き連ねたいことはまだある。でもあまり長々と紹介していてもしょうがない。それを読む時間があるなら、作品そのものを実際に読んで欲しいのがファンの心だ。本作はありがたいことに、マンガ図書館Zなどの漫画配信サイトで全編無料公開されている。そう、タイトルでググればすぐ読めてしまうのだ。というわけで皆、今すぐにググって本作を読もう。それか「野望の王国」の方を読もう。

カスミ荘の漫画家志望達

漫画家を目指し集った若者たち※ただし1人除く#1巻応援

カスミ荘の漫画家志望達 大野そら うらたにみずき
六文銭
六文銭

トキワ荘にもじって、漫画家を目指す若者達を集めて格安シェアハウスを提供する「カスミ荘」 そこに集まった4人の男女+管理人の現役漫画家が住んでいる。 管理人以外は、最大3年か、漫画の連載が決まれば退去しなければならない仕組み。 個人的に期待を裏切るような展開が多々あって、そこが面白かった。 例えば、冒頭でゲームばかりしている2人の男。 漫画家になるのがいかに困難で継続していくことはもっとシンドいかを吐露していたので、いわゆる、夢はあるけど努力はしない自堕落な若者を描くかなと思いきや、実際はそうではない。 同シェアハウスに住む、19歳にしてメジャー雑誌で賞をとるなど夢にむかって着実にすすむ女の子への嫉妬とか、こじらせた恋愛模様かと思いきや、そこもちょっと違う。 何にせよ、少しずつキャラクター達がこちらの先入観を裏切ってくるような動きをするので、妙な魅力がありました。 主人公を軸に、漫画家の卵である他のメンバーとどう関わっていくのか?興味深いです。 また、男:女で2:2なのでラブコメ的な展開も今後あるのかな?などいろいろ幅が出てきそうで面白い。 自分も漫画好きなので、全員漫画に情熱をもっているのも、読んでいて共感したり、グッとくる部分があります。 やっぱ漫画っていいよなぁと素直に思わされます。 今後の展開に期待大な作品です。