チャンピオンズ~週刊少年チャンピオンを創った男たちの物語~

「週刊少年チャンピオン」を知れる稀有な作品

チャンピオンズ~週刊少年チャンピオンを創った男たちの物語~ 魚乃目三太
六文銭
六文銭

「ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~」でも書かせていただきましたが、マンガ、広くとって出版業界を知れるマンガが好きなんですよね。 (余談ですが、ルーザーズは双葉社の「漫画アクション」の歴史が知れるので、こちらもおすすめです) マンバさんのレコメンドで紹介され、自分にとってドンズバな内容だっただけに興奮して読ませていただきました。 「週刊少年チャンピオン」の歴代の編集長に、当時のことを語ってもらう形式。 結論からいうとすごく良かった! 秋田書店自らが語るくらいなので、情報として正しさが担保されていることはもちろんですが、何よりこんな本を出すくらいだから皆「週刊少年チャンピオン」の愛に満ちているのがヒシヒシと伝わってきて読んでいて胸が熱くなりました。 特に、名物編集長だった壁村耐三編集長のところは激アツなんです。 「ブラック・ジャック創作秘話」を読んだことある人は、彼の破天荒さ、水虫をマッチで焼く姿が特に記憶に刻まれていると思いますが、本作でも際立ってキャラが濃い。 それだけに、少年漫画雑誌としては後発のチャンピオンを1位まで押し上げた熱量を感じます。 また、当時は終わった人として扱われていた手塚治虫に再起を促し「ブラックジャック」を生み出したのは上述の書籍で知っていましたが、半蔵門病院での手塚治虫との最期のやり取りが本作では載っていて、これには目頭が熱くなりました。(ネタバレなので割愛しますが、あの言葉に人間性の全てが詰まっていると思います。) 暴力的で、破天荒でありながら、情に厚い、ザ・昭和な感じって、自分も昭和な人間なだけに、グッとくるんですよね。 滅茶苦茶な面もありますが、こういう点が、編集部内でいつまで愛されている理由なんだと感じました。 と、壁村編集長の話ばかりしてしまいましたが、他の編集長も特に現代につながる部分は雑誌不況の影響下もあるので、それに抗い試行錯誤していく様は興味深く読ませていただきました。 チャンピオンにかかわらず、漫画、作品づくりに関わる人の思いや情熱に触れたい方はぜひおすすめしたい作品です。 全部「人」がつくっているんだと再認識させてくれます。

ヘルさん

室井大資先生の新作読切!!!

ヘルさん 室井大資
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

久しぶりに室井大資先生の漫画が読める!! 少し前に『バイオレンスアクション』(沢田新名義で原作担当)が更新されましたが、今回は話も作画も全てご本人! 微妙な表情の変化や構図、間の表現などが魅力的で、漫画が上手いのでご本人の作画をまた見れて嬉しいです! 妻と子を奪われ、組織に復讐を誓い地獄の鬼と契約し「ヘルブレイズ」と呼ばれていた男は復讐を果たし、なぜかいまはどこか間の抜けた男・よしおと配信をしていた。 「ヘルブレイズ」略して「ヘルさん」は、復讐を果たし終えて燃え尽きてしまったがために、人生の目的を失い何もなく死んでないだけの毎日を過ごしていたが…。 https://twitter.com/Bessatsu_champ/status/1580025024362164224 壮絶な復讐を果たした男の「その後」を描く話で、新鮮でした! 喪失を抱え、復讐を果たして燃え尽き、死んでないだけの日常。 詳しくないんですが、この状態は燃え尽き症候群や鬱に近いものでしょうか。 室井先生、ご本人の一時期の状態に向き合う形でも描かれたから大変だったとか。 一方、よしおも人生で何かと負け続け誰でもない、何者にもなれない毎日を過ごしている。 どちらも違う形でもがいて、互いに感じ合うものがある。 こんな不器用で凸凹な二人が一緒にいると、売れてないお笑いコンビのようにも感じてくる。 ヘルさんは喪失の苦しみと再び失うかもしれない恐怖を乗り越えて大事なものを作って新しい人生を歩めるのか、そしてよしおは何者かになって何かを得られるのか。 ぜひ続きを読んでみたい!