あらすじ金遣いが派手でクラスの中心にいる美雪と、そんな美雪にいじめられている加奈。ある日、美雪が援交してホテルから出てくる現場を、加奈が偶然目撃してしまう。必死になって隠そうとする美雪に対して、加奈は「私と友だちになってもらえる?」約束を持ちかけてきて───。表題作『指先から滑り落ちるバレッタ』のほか、『あなたと星と夜明けに見た夢』『メルティーブラック』『アストロロジーは廻る』と、社会人から学生まで、多様な女性同士の関係性を描いた作品たち。ちょっぴりビターで、鋭く鮮烈な百合短編集。
つつい先生(=筒井いつき先生)の作品集の中では、白場が活きた画面だ。割と明るい光景、光溢れるシーンを印象的に描きながら、描く感情もどん底の救われなさからは少し遠い。女性達も明るい人がいつもより多い。 だからといって、しんどく無いとは言っていない。 報われない恋、秘めた苦しい心情が多いし、「悪い」事も描く。男の関与も多分にあるが、つつい先生の場合「男の気持ち悪さ」の描写が凄く、そこを読みたい方にはいつも通りの先生です、とお伝えしたい。 ●『あなたと星と夜明けに見た夢』…親友に請われて一緒にラブホ。無邪気にはしゃぐ彼女の一方で……切ない。 ●『メルティーブラック』…部屋の前でずぶ濡れのJKは隣人♂の彼女。「大人」へ背伸びする「子供」の彼女へ募る想いの苦しさ。 ●『指先から滑り落ちるバレッタ』…虐めていた女子に売春の現場を見られる。黙認の見返りに……見事に心をぶん回された。 ●『アストロロジーは廻る』…一人で生きると決めていたのに、星座占いに振り回される。こちらも一緒に心を殴られるが……。