私的漫画世界|星野之宣|ヤマタイカ
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星野之宣(1955年生)は愛知県立芸術大学美術学部日本画科を中退しています。中退の理由は性に合わなかったからとされています。1975年に「鋼鉄のクイーン」でデビューし,「はるかなる朝」で第9回手塚賞を受賞しています。
初期の作品はスケールの大きな緻密な設定のSFがメインとなっています。描画タッチは時間とともに劇画風に変わっていき,レベルの高いSFとよくマッチしており,私の好きな漫画家の一人です。
話をSFに絞ると欧米の名作と同列に論じても良いほどの優れたアイデアとストリー性があると評価しています。SFはアイディアが命ですが,それも荒唐無稽に陥らない節度が必要であり,内容のリアリティとそれを支えるだけの作画力を併せもつ星野SFには魅せられています。
しかし,ある時期からSF作家のイメージを払拭するかのように古代史を題材にした伝奇ミステリーを手がけています。この創作の方向を変更するにあたっては親交の深い「諸星大二郎」の影響が大きいとされています。
星野自身も神話世界を題材にした「ヤマトの火」を手がけるにあたって,先駆者たる諸星大二郎の「暗黒神話」を参照しており,「これ以外に頼るよすががなかった」と語っています。
「ヤマトの火」は完結することなく中断しました,それに続く「ヤマタイカ」は1700年の時空を超えて二つの民族がせめぎ合う壮大な物語となっています。その後も古代史の世界を題材にした「宗像教授シリーズ」を手がけており,2000年代に入るとSFと古代史の世界を行き来する執筆活動を続けています。