結婚で“奥さん”になり、出産で“お母さん”になった。名字も名前も失い、家庭を守ることがすべての彼女に、名前を思い出させてくれた眩しい少女。それは、娘の同級生―。そんな人妻の恋を描いた[リリー・マルガリーテとかすみ草]と、その娘から見た二人を描いた[ジプソフィラの儚い思惑]。厳格な女上司と新米OL、夜は攻守逆転する二人の日常を切り取った[after9]、冴えない喪女をプロデュースする優等生の思惑[一輪の薔薇がある風景]。ほか2作も含め、対照的な二人が惹かれ合い、誰にも言えない秘密を共有するまでを描いた、著者デビュー短編集。