あらすじ死を覚悟したとき、人は終の棲家としてどこを選ぶのだろうか。血の繋がりはないが、今まで育ててくれた母のために、弓子は自宅療養を選択した。母は6年前、乳がんを患った。<brr>術後5年間再発しなければほぼ安心と言われていたが、その5年目に新たな腫瘍が発見された。今後は、痛みや不快な症状を和らげる緩和ケアに移行する。つまり、それはもう為す術がないということ――。自宅療養に切り替えてからは、小康状態を保っていたが、ここからの回復は見込めない。やがて訪れるであろう別れを思うと、頬に涙が伝った。