定時制を描いた作品に名作が多いのは、そこに通う人々が多くの困難や苦しみなどそれぞれに込み入った事情を抱えているからでしょう。 この『仲宗根くんが前を向かない』も、王道のボーイミーツガールではありながらも出逢いの場所が定時制かつ舞台が沖縄ということで独自のスパイスが効いています。 一見、怖いヤンキーでありながら気さくで優しい仲宗根くんと、東京のしんどさから逃れて思い出のある沖縄の地へとやってきたヒロインの紗夜。クールで消極的な紗夜の心の卵の殻を仲宗根くんが少しずつ砕いて行きます。 同じクラスだけど2歳差というのも、普通の学園恋愛マンガではないシチュエーションが生み出す趣深さのひとつです。しっかりとふたりの考え方や良さを描いた上で距離が縮まっていくので、彼らふたりともを好きになり応援をしたくなります。 紗夜がとても良い黒髪ロングストレートヒロインなので(ツヤベタも美しいです)個人的な大加点が入るのはさておくとしても、モー子さんの絵が良くて主軸となるふたりはもちろん他のクラスメイトなどのサブキャラクターも魅力的です。 バイトをするときに笑顔を作ろうとして作れない紗夜や、桃香のTシャツに描かれたゆるキャラなどの細かい笑いどころも好きです。 沖縄に行ったときの熱気と喧騒、そこから離れてクールダウンしたときの何とも言えないような心地を思い出す作品です。 今後、彼らが美しい海を始めとする素晴らしいロケーションの下で更に絆を深めて行くのが楽しみです。
兎来栄寿
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