あらすじ
【ちいさな家族のいのちを救う】英国王立獣医大卒のエリート新人&冷静沈着寡黙なベテラン獣医凸凹獣医師コンビが織り成す心温まる医療現場の日常ドラマ。ーー英国王立獣医大を卒業したエリート新米獣医・宗野 圭吾(そうの けいご)。自他共に認めるスーパー新人の圭吾は、同じ病院に勤める先輩獣医師・池ノ谷 律(いけのや りつ)が大嫌い。誰からもちやほやされる圭吾のことを“新米”と扱い、プライドを刺激してくるからだ。どうにか律を見返してやりたい圭吾は、あえてその気に食わない先輩の下で働くことに。プライドの高い新米獣医師の成長記録を綴ったヒューマンドラマ。※本作品は単話配信しているものに、加筆修正・描き下ろしを加えたコミックス版です。重複購入にお気をつけ下さい。
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先日、これまでずっと元気で数秒前までも楽しく飛び跳ねていた我が家の愛犬が突然意識不明になってしまい動物病院へ駆け込みました。 そのとき、最初に診てもらったところは 「診療費がやたら高く必要なのか解らない検査を一杯する」 「ガンがあったのに見逃されて、他の病院に行ったらもう少し早く発見できていればと言われた」 など評判が芳しくないところでした。しかし、緊急でそこ以外に選択肢がなかったために仕方なく行きました。 結果的には、もう二度とそこへは連れていくまいという診療を受けました。セカンドオピニオンのために改めてかかりつけへも行ったところ、同じレントゲンを撮っての診断ひとつとってもまったく違うものでした。 最初のところは「心臓に肥大があるかも」として、もし原因が心臓の疾患であったなら余命は長くて1年ということで覚悟を決めていたのですが、セカンドオピニオンでは「心臓に異常はありません」ときっぱり言い切った上で最初のところではまったく触れられなかった「気管の形が少し変です」という指摘と共に適切な治療を施してくださり、その後は大事なく順調な回復を見せてくれています。もし、最初のところだけで治療を進めていたらどうなっていたかと考えるとぞっとします。 そんなことがあった直後に読んだこちらの作品は、あまりにも身につまされました。 犬や猫を始めとして、さまざまな動物が来院するシーナ動物病院。そこに訪れる飼い主たちの切実な気持ち。我が子のために少しでも良い治療を受けさせたい。少しでも良い先生に診てもらいたい。お金なんて、たとえ自分がどうなろうといくらでも払いたい。 でも、飛び抜けた知識を持つイギリスの王立大卒の宗野であっても、少しプライドが先立ってしまうと本当はもっと上手くできることができないこともあります。 彼を窘める役割を担う池ノ谷も、かつて起こった苦い経験があるからこそ厳格すぎてときに人に嫌われてしまう部分があります。 人間のやることなので完璧はありませんし、本当は誰もが根本では命を救いたいと願っているはずなのに、悲しいすれ違いや摩擦は往々にして起こってしまう。 「お前こそ俺を何だと思ってるんだ? お前と同じ獣医だよ」 というセリフに、その辺りが詰まっています。過ちを通して人は成長していきますが、その前に大事な子を喪ってしまった飼い主には、そんな事情など関係ないということも痛いほど解ります。 私はペットショップは無くなって欲しいと願っていますが、本作で描かれている面も一理あります。悪意ある人間や蒙昧な人間を根絶することは原理的にほぼ不可能な中で、どういう選択をしていくか。読んでいてあまりに辛く、泣けてきます。 それでも、ペットを取り巻くさまざまな問題を取り扱いながら前を向いて現実的にできる営為をする中で可能な限りの命を救おうとする姿が、美しい絵で紡がれるこの物語から目を離すことはできません。 獣医という職業の大変な面も含めて真摯に描いた作品で、動物を飼っている人、飼いたいと思っている人、また職業マンガが好きな人にもお薦めです。