作品情報著者兎屋まめarrow_forward_ios巻数1巻arrow_forward_iosカテゴリ青年マンガarrow_forward_ios出版社KADOKAWAarrow_forward_iosレーベルMFCarrow_forward_ios
世の中には、最早どうしようもなく距離を置く以外に対処のしようがない人や物事が存在します。しかし、それが実の親であり自分がまだ経済的に自立できない子供であった場合は最悪です。絶対に離れた方が良いのに、離れる術がなくその手段を考えることすら封じられたままそれが当たり前なのだと刷り込まれて心身を壊されていってしまいます。 本作の第1話はとにかく読んでいて辛いものでした。小学生の少女トワが、毒親の極みのような実母の星羅とその愛人であるみちおから最悪の虐待を恒常的に受け続ける惨状が描写されます。ゴミ屋敷でまともな暮らしもできず、学校に通う時間に酒を買いに行かされ、些細なことで当たり散らされ暴力を振るわれ、あまつさえ……。現実にも、今も同様の被害を受けて生きている子がいるのだろうと思うと居た堪れなくなります。 この物語は、そんな残酷な現実へ手向けられたひと匙の希望であり救いです。リカワリ星からやってきた異星人によって、母親の存在は乗っ取られ、体はそのままでも中身はまったくの別人になりかわりトワは新たな生活を歩み出すこととなります。 虐待だけでなく、保護者間のカーストやそれが子供たちに伝播してのいじめなど現代社会の闇の部分が多く描かれます。子供同士のやり取りや、心の移り変わりの部分にもリアリティを感じます。ただ、そうした不条理をリカワリ星人が縦横無尽に切り開いていってみせてくれる様はカタルシスがあります。 兎屋まめさんの絵も綺麗で、序盤の星羅の描き方のおぞましさの迫力、さまざまなヴィヴィッドな表情の描き分けも良いです。 余談ですが、街並みの様子からも治安の悪さで知られる東京の某所を舞台にしていると感じられるのは気のせいでしょうか。