あらすじ家族を殺した「白髪」の男・エイナルへの復讐を果たす為、イングランド軍に協力するルーク。そして遂にエイナルはヴァイキングの王・スヴェンと相対し…!!? 永きに渡り「復讐」に囚われ続けた二人の男「ルーク」と「エイナル」。二人の「復讐の旅路の果て」に待ち受けるものとは…。これは激動の中世ヨーロッパの歴史に描かれなかった、二人の復讐の物語。
今でこそ「北欧」というと福祉が充実している幸福度の高い国であったり、サウナであったり、ヒュッケであったり、オシャレな雑貨であったりの穏やかなイメージが強いかもしれません。しかし、かつての北欧は圧倒的な「暴」の支配する土地でした。北欧神話などにもその影響は色濃く受け継がれています。 本作は『ヴィンランドサガ』と同じ11世紀初頭を舞台に、ヴァイキングの脅威に晒される側であったイングランド王国はロンドン北の小村から物語は始まります。 「狼の子」と呼ばれる狼に育てられた少年と、心優しい神父・クロウリーの出逢い。クロウリーによってルークという人間の名前を与えられた少年は少しずつ人間としての暮らしや知恵を教えられていきます。しかし、そこでヴァイキングによる悲劇がもたらされ、ルークは「戦狼(ヒルドルヴ)オーディン」と呼ばれる復讐鬼へと変貌していきます。 ルークの仇敵である白髪のエイナルは、笑いながら人を殺し村を焼きながら生首の山の前でダンスを踊る凄惨さを見せます。現代日本とはあまりに倫理観や死生観が違いすぎる過酷な世界ですが、だからこそ見知っておく価値もあります。人類がこういった歴史を歩んできた上で、今という時代があるということを。 本作で特に面白いのは、仇敵であるエイナルというキャラクターの掘り下げです。エイナルがいかにしてそのような人物となっていったのかという部分を読むと、人類の業の深さを感じずにはいられません。 よしおかちひろさんの勢いのある画風も、そんな峻厳な時代を描くのに非常にマッチしています。筆ペン的なもので描かれた部分の線の迫力など非常に際立っています。 北欧神話ではオーディンは最後にフェンリルに喰われますが、血に塗れた神話の神の名を冠したルークは本懐を遂げることができるのか。 帯コメントが幸村誠さんから寄せられているのは圧倒的な納得感です。『ヴィンランドサガ』を好きな方、歴史マンガが好きな方は特に、そうでない方にもお薦めです。