あらすじ文学を軸に言葉を交わし、八千代の掲げる目標を知った志方。彼女にならい文学を学ぼうとしたその時、志方はとある署名を求められる――。「これを…八千代樹利への処分に関する意見書です」 学生と教員。それぞれの立場と想いがぶつかり合うなかで、志方が叫ぶ『大学のあるべき姿』とは!? 大学の闇に立ち向かう緊迫の智略劇、第六巻!!
大学を舞台にした作品は数多くありますが、大学というアカデミックな場で現実的に起こっているリアルな問題をメインテーマとして扱っている作品は珍しいです。 本作では、大学の金銭的な問題や歪なパワーバランスによって生まれる闇の部分が描かれます。最高学府といえども、経営や研究を維持していくためには先立つものが絶対に必要です。そして、大学における研究はときに莫大な富を生む原動力となります。そこで動く金額の大きさやそれに付随する諸々は、望まずとも腐敗を招く要因となり得ます。また、閉鎖的な世界では一部の者の権利が不当に強くなることがままあります。そして、普通では有り得ないことも起こってしまい、あまつさえそれが闇の中に葬られてしまうことも。 そうした闇に対して、主人公が立ち向かうという構図はシンプルで共感しやすくなっています。大学というピンポイントな場所での出来事を扱ってはいますが、似たようなことは世界でたくさん起こっており、またこの作品で苦しんでいる人と同じ苦しみを持つ人もたくさんいることでしょう。「アカデミックハラスメント」というと難しそうと感じるかもしれませんが、多くの人にとっては想像以上に解りやすいエンターテインメントとして楽しめるはずです。 この作品の最大の美点は何よりも非常にテンポが良いことです。第1話からその良さが存分に出ているので、まず1話だけでも読んでみてください。1話で大きな目標が掲げられるのですが、そこで強く主人公に感情移入させられることで話に乗っていけます。サクサクと話が進んでいくのですが、しっかりと1話ごとに見せ場も強い引きも作られていて素直に「面白い!」と思える作品です。 実写ドラマ化なども非常にやりやすく映えるでしょう。作画こそまだ初々しさが出ていますが、キャラクターの魅力やマンガ力などもっと大事な部分の力量を感じる作者さんですので、今後も楽しみです。