あらすじ3300万超PV。胸をえぐる問題作。リカコは、いじめを受けるクラスメイトの笑顔に疑問を覚える。それは、どれだけ虐げられても脳が幸福物質を出す手術をしているからという事が分かり―― 3300万超のPVを記録し、話題騒然となったディストピアホラー「笑顔の世界」をはじめ、価値観を揺さぶる衝撃のホラー8本を収録。ホラー漫画の巨匠・伊藤潤二先生も認める、予想を超える結末と恐怖。異才・岬かいりの初単行本。
伝説的なバズりを記録した表題作「笑顔の世界」を始めとする、ちゃおコミやちゃおデラックスに掲載されたホラー短編を8編収録した岬かいりさんの待望の作品集です。 皆さんも、子供のころに読んでトラウマになったマンガの1つや2つはあるのではないでしょうか。私は『アウターゾーン』の「妖精」(という名の獰猛な小さいゴブリンのような怪物)が怖くて仕方なかったり、『ジョジョ』4部のしげちーのハーヴェストが億泰のズボンの下に侵入して足の肉を刮ぎ抉り取るシーンに生理的な嫌悪と恐怖を覚えたりしていました。 「笑顔の世界」を読んだことがある方ならお解りになるかと思いますが、本作は小さい頃に読んでいたらトラウマになっていただろうなと思う話が満載です。 ただ、元々の発表媒体がちゃお系だったにも関わらず、単行本のレーベルは裏少年サンデーになったのは時代の流れでしょうか。帯が伊藤潤二さんなのはホラー系を描く作家としては最高級の誉れだと思いますが、表紙の絵も間違っても小さな女児が「かわいい〜!」といって手に取らなさそうな露骨なものになっているのは個人的にはちょっと惜しい気持ちもあります。 あえて、表紙詐欺で作中のかわいい部分を押し出した形のものにして「かわいい〜!」と思って買ったらとんでもないことになった、という体験をしておくこともまた人生においては大事な経験ではないかと思うからです。現実は、もっともっと理不尽で残酷なのですから……。 という余談はさておき、岬かいりさんのホラー系短編はただ露悪的というわけではなく、かなり社会情勢や社会問題にも寄り添いながら批評的な意味合いも持っているお話が多いのが面白く、推せるところです。 「笑顔の世界」はもちろん、マスク社会で他人の素顔が都市伝説同様になってしまったという「口裂け女」や、中学受験における競争社会性を描いた「地獄の落とし穴」などは特に顕著です。「地獄の落とし穴」の最後のコマなどは非常に味わい深さがありますね。 本日、ちゃおコミに掲載された読切「社会の秘密」も併せてお楽しみください。 https://ciao.shogakukan.co.jp/webwork/47206/