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夜毎の乱痴気騒ぎ。朝の4時までキス。ラム酒に1滴の生き血。悩ましく歌うシャンソン。裏通りのカヴァレット。路上の闇に咲く仇花達。1925年、ドイツのベルリンは退廃的な狂乱に満ちていた。4年間の留学を終え日本に帰国する事になった遥彦は友人のハインリッヒにパーティーに連れて来られた。そこは女人禁制の男性だけのパーティーだった。その2人連れは、この奇妙な場でも一際目を引いた。金髪碧眼のいかにもアーリア人と言った顔立ちの青年と、何が気に入らないのか神経質そうに眉をひそめている小柄な少年。そしてその不快げな表情が彼の孤高な美しさをより一層際立たせていた。それが運命の出会いだとは遥彦も少年も知るすべもなかった…!?
遥彦の元に逃げ込んで来たパウル。パウルは男装した少女で本当の名前は清音と言った。大使館付き武官として日本に駐在していたドイツ青年と日本女性との間に産まれたハーフだったのだ。清音の母は、ただ1度の恋のために家族を捨て、国を捨て、海を渡った。だが幸福は束の間だった。恋人が母と乳飲み子だった清音を残して死んでしまったのだ。束の間の幸福の想い出の中に生きる事しかできなくなった母は死を選んだ。天涯孤独となった清音は売春宿から逃れヘルベルトにかくまわれていたのだ。何故私はこの時、私だけがこの哀れな少女を救ってやれると思ってしまったのだろうか。出国の準備を進める清音に売春組織の手が迫り、そして悲劇が訪れる…!?