歌舞伎俳優・片岡吉右衛門に2人目の子供が生まれようとしていた。男なら晶、女なら千晶。生まれてきたのは男の子・晶であった。時は流れ、高校生となった晶はある日、母親の交通事故のため新幹線で京都へ向かう。その途中、新幹線事故に遭遇し、意識を失う。意識がもうろうとする中、聞いた懐かしい声。「死なれちゃこまるのよ、晶…」。気がつけば病院の中。目にした新聞には、自分が怪我人を助けたという記事が出ていた!? 一方、晶のレントゲン写真を診る医者はあることに気がつく。晶の体には症例も稀な「ヴァニシング・ツイン(消滅した双子の片割れ)」が存在していたのだった。母親の病室で知らされた衝撃の事実。晶とともに生まれてくるはずであった双子の女の子、千晶。晶の中に千晶がいる!? 次第に表に出てくるようになった千晶。彼女の目的は果たして……!? 遠野一実がお贈りする、華麗な梨園を舞台に繰り広げられる、はかなくも悲しい、ミステリー・ラブストーリーの傑作、第1巻(全2巻)。
晶とともに生まれてくるはずであった双子の女の子、千晶。晶の中に千晶がいる……。千晶が晶の身体を介して表に現れるのは、幼いころから思いを抱き、踊りの才能を認められ坂西流に預けられ育った空也に会うためであった。千晶は晶の身体を自在に操り、その口を借り歌舞伎役者の道を歩むと宣言。踊りの稽古を通じて空也に近づいていく。そんな中、空也と坂西流の後継者であり空也の婚約者でもある咲耶は、実質上の襲名披露会でもある、坂西流若扇舞踊会で「道成寺」を演じることになる。厳しい稽古が続く中、身体の不調を隠し続けてきた咲耶が倒れてしまう。代役には晶が選ばれた。そして本番当日。「ヴァニシング・ツイン」が内蔵を圧迫する苦しみに耐えながら、晶(千晶)は見事に踊り続けるが、ついに晶も倒れてしまうのであった。千晶が他人の身体を借りてまで欲しかったもの。それは……。遠野一実がお贈りする、華麗な梨園を舞台に繰り広げられる、はかなくも悲しい、ミステリー・ラブストーリーの傑作、完結編!!