あらすじいつも自然と周りに人が集まる人気者の優征には、人知れず強く憧れている同級生がいる。それは、周りの友人たちが気にも留めないような、目立たない少年・中川で――… 少年から大人に変わっていく思春期。悩み、間違い、考えながらも、少しずついろんなことに向き合っていく少年たちを描いた物語です。
はやしわかさんは、第80回ちばてつや賞準大賞に選ばれた【コミックDAYS読み切り】しかたなしの極楽を読んで手触りの良いマンガを描く方だなと思いました。 『変声』は、そのはやしわかさんが2022年9月に出した同人誌です。その後、11月には各電子書店でも販売が開始されました。 一応ジャンルとしては公式に創作BLとされていますが、性的な描写もなく普段BLを読まない方であっても読み易い部類でしょう。 変声は、思春期に著しく身体的な変化が起こるのに伴って精神的にも未成熟で不安定な時に起こるひとつの現象です。私自身、ソプラノで歌うのが好きだったので喉の違和感と共に声が変わっていくのは悲しかった覚えがあります。 変わって欲しくないのに変わるもの。 変わって欲しいのに変わらないもの。 矛盾に満ち溢れた世界ですが、それらの矛盾に向き合わなければならない時は誰にも否応なく訪れます。 しかし、矛盾に満ちていてすらも美しくあるのがこの世界。そんな美しさの一端を滲ませる感情が、この作品では印象的に描かれます。 その誰もが名を知りながらも、中身についてはよく解っていない不思議な感情。それを見開きで紐解くシーンがとても好きです。 ″息のできる場所を 見つけたよ″ というモノローグなども、心地よく響いてきます。 はやしわかさんの今後の活動も頗る楽しみです。