あらすじアラフォー、バツイチで実家に帰省してきた朝子と、留学先から家業を継ぐためにピアノを断念し、帰国した千尋。昔、夏祭りの夜にほんの少しだけ交差した2人のこれまでの挫折と歩みが、いま再び音楽として重なり、奏でられ始める――。アラフォー×吹奏楽マンガ、初めてのデュオ!
中年女性主人公の名作がまたひとつ。 40歳にして4,5年の結婚生活に終止符を打って東京から何もない地元に戻ってくるも、新しい職はなかなか見付からず自身の調子や周囲の人間模様などさまざまなところで加齢の影響を感じずにはいられない主人公の朝子。昔すごく好きで楽しく吹いていたトロンボーンも、今では全然吹けなくなってしまっていました。 高校生までずっと委員長を続けてきて、部活も勉強も仕事もとにかく真面目にやり抜いてきた朝子。自分の存在を軽んじられても思わず作り笑いで濁してしまったり、無思慮な言葉に傷つけられる朝子に共感を覚える方も多いでしょう(田舎の悪い部分のリアルさも巧み)。 そんな朝子が「それでも本当に好きなもの」を支えに前に歩んでいく姿には、ポジティブなエネルギーを貰えます。人生の選択で迷った際は心が踊る方にすべきだし、本当に大切にすべきは自分の「好き」という気持ちであるなど大事なことを物語で示してくれます。 朝子に厳しく当たる青年の過去のエピソードに起因する関係性や、朝子との立ち位置のコントラストも秀逸です。すんなりと生きていない人だからこそ、誰かを勇気付けられることもあるんですよね。 令和3年のデータによると男の平均寿命は 81.47 年、女の平均寿命は87.57年。つまり、40歳というのは平均してまだまだ人生の半分にも満たないわけで、ここからまだまだ長い旅路が続いていくわけです。 丁度10月は『あした死ぬには、』の最終巻も出ましたが、この年代が主役の面白い作品はこれからますます需要が増していくと思いますし、これからの時代にますます価値を放つ一作だと思います。実写化にも向いていそうですね。