あらすじ

2001年―― 風薫る5月。スカイトラベル社の若い女性ツアー客が行方不明になった。折しもその晩、ウエスト・ヴィレッジのアパートで火災が起き、遺体が発見される。そばにあったバッグとパスポートのコピーから、行方不明の女性と思われ、ノブたちは慄然とするが――。NY市警の捜査がすすむうちに、1993年に起きた爆発テロ事件が浮上してくる。輝くメトロポリスの光と影。どこまでもピュアなNYラブストーリー。
窓-WINDOW- 硝子の街にて(1)

喧噪(けんそう)のタイムズ・スクエアで、疾走する車列へ彷徨い出た、ひとりの日本人女性……。彼女を助けたのは、NY市警刑事シドニー。彼女の心を救ったのは、ノブこと伸行(のぶゆき)!?記憶喪失の彼女の過去に、なにが起きたのか。次々と浮かぶ事実に翻弄されるふたり。孤独な愛と封印された愛憎が引き起こした哀しい結末!!

雪-SNOW- 硝子の街にて(2)

「ゴミに埋もれても、人間は死なない」殺人課の刑事シドニーが口にすると含蓄(がんちく)があるように聞こえるから、ノブも黙ってしまった。乱雑なシドニーの部屋を後にして、大雪に凍えるNYの街路で死にかかった男がノブに言ったのは「近寄るな、ユキオンナ」!?ファッション業界の醜聞(スキャンダル)!?トップデザイナーの死。大雪の日、少年が見たものは!?ノブとシドニーの“友情”と“純愛”のNYストーリー。

虹-RAINBOW- 硝子の街にて(3)

土砂降りの中、バスを走らせてツアー客を迎えに、ケネディ空港へ向かったノブを待ち受けていたのは、警官の射殺事件と、5年ぶりに再会する父親の姿だった。(――泣いているのは、誰だろう?)警官の死。父と息子。過去と現在。ノブの脳裏の中を伸びていく多くの言葉が、彼らを事件の真相に導いていく。――どこまでもピュアなノブとシドニーの、“友情”と“純愛”のNYストーリー!!

家-BURROW- 硝子の街にて(4)

記憶の庭に眠る真実とは……!?友人の晴れやかな結婚式の日、シドニーの携帯電話のベルが悲劇を知らせた。殺害されたのは、結婚を間近に控えた花婿。彼の過去に隠されていた、砕けちった幸福と、逃避のはてに辿りついた心の避難所。それはノブもシドニーも、犯人さえもが持つ小さな隠れ家だった。すれ違ったそれぞれの想いは……!?どこまでもピュアなノブとシドニーの、“友情”と“純情”のNYストーリー!!

朝-MORROW- 硝子の街にて(5)

アメリカの路上、携帯電話で自分の勤める会社の倒産を知らされた、日本人の男性。次の瞬間、彼の身体は、車に撥ねられていた!絶望のあまり、男はふらふらと車道に飛び出したのだろうか?それとも、誰かが故意に、彼の身体を押したのだろうか?疑問が氷解する間もなく、ノブたちは、彼の妻が同様の事故に遭うのを目撃する!どこまでもピュアなノブとシドニーの、“友情”と“純愛”のNYストーリー!

空-HOLLOW- 硝子の街にて(6)

ノブが運転手をつとめるタイムズ・スクエアでの買い物ツアーで、女性客が姿を消した。目撃者の話では、彼女は偶然知り合いに出会い、そのまま2人でどこかへ行ってしまったらしい。米国に詳しい連れがいるのなら、と少し安堵したノブたちだったが、シドニーの話を聞いて、状況が一変する。彼女の連れは、殺人事件で指名手配中の男だったのだ!──どこまでもピュアなノブとシドニーの、“友情”と“純愛”のNYストーリー!

燕-SWALLOW- 硝子の街にて(7)

NYを発ち、東京へ到着した伸行。待っていたのは6年も孫との再会を願っていた祖父母だった。11年間過ごした家に戻ってみると、ここもやはり“故郷”なのかと自問する自分がいた。伸行にとって、故郷とは、シドニーと幼い日々をともにしたNYしかありえないはずだったのに……。ノブの突然の出奔(しゅっぽん)に戸惑うシドニー。殺人事件の解明のため、彼も東京へ赴く。“友情”と“純愛”のピュアストーリー!

宵-AFTERGLOW- 硝子の街にて(8)

6年ぶりの東京で自分を再確認した伸行は、再びNYへ戻ってきた。ツアーガイドとしての日常、そしてチェルシー24丁目――、バスルームでつながるシドニーとの共同生活。ダイアナ妃事故死が報じられたちょうどその頃、ツアーガイドのオフィスにFBIの捜査官がやって来た。ノブの上司、高田主任の銀行に勤める知人が殺害されたのだ!その知人には巨大な疑惑も囁かれていた……。どこまでもピュアなNYラブストーリー!

渦-BILLOW- 硝子の街にて(9)

最愛のひとがここにいる。だから信じる。どこまでもピュアなNYラブストーリー!映画「タイタニック」が大評判となった1997年末――、伸行はアパートに帰る時間もない状況になっていた。日増しに高まるイラクと国連の政治的緊張。終わったはずの湾岸戦争の火種……。シドニーの心に残る癒しがたい傷を前にしてもノブは何もすることができない。そんな伸行に、家政婦だった洋子から突然の連絡が入る。洋子の身に何が!?

烏-CROW- 硝子の街にて(10)

ノブの決意。そしてシドニーは……。どこまでもピュアなNYラブストーリー!!シドニーが捜索中に怪我をした。案ずる伸行は、シドニーの父親テッドにどうしても会いたいと思い、建築技師であるテッドの仕事場を訪ねることにした。その仕事場の近く、日本企業で殺人事件が起きる。その会社では、日本人経営陣に対する女性従業員からのセクハラ騒動がもちあがっていた。伸行は殺人現場に立ち合う。そしてシドニーも――。

矢-ARROW- 硝子の街にて(11)

同居生活を始めた伸行とシドニー。親友ヘンリーとケート夫妻の初出産を控えて喜びに沸く中、殺人事件が起きる。逮捕された容疑者はヘンリーの養父だった。親子の葛藤。偏見。事件は思わぬ問題を浮き彫りにしていく。一方、悪化する国際情勢に、シドニーを案じるノブの心は揺れる。1997年、中東問題に動揺するNYを舞台に2つの心の微妙な動きを描き出す。どこまでもピュアなNYラブストーリー。

禁-DISALLOW- 硝子の街にて(12)

どこまでもピュアなNYラブストーリー。1999年最初の日。伸行はハドソン川に浮かぶ越年クルーズの遊覧船のデッキで迎えた。シドニーも犯罪多発地帯のNY市警殺人課に勤務する。2人そろって新年を過ごしたのは午前3時を回ってからだった……。日本からの観光客の多いこの時期、ツアーガイドのノブはとても忙しい。だがシドニーは、しばらくNYを離れると告げる。シドニーは何処へ、何をしに行くのか?ノブの心は揺れる。

黄-YELLOW- 硝子の街にて(13)

NY、24分署の現職警官が殺された。シドニー、相棒のヘンリーは捜査を開始した。翌日、今度は伸行の勤める旅行会社のツアーバスが、発砲事件に巻き込まれた。観光客の安全確保に伸行が現場に赴く。バスに飛び散る血痕……銃社会アメリカの生々しい現実がそこにある。限られた目撃情報、ツアー客の証言が解決の突破口になるのか。2つの事件を結ぶ糸が意外にも浮上して……。どこまでもピュアなNYラブストーリー。

塵-WINDROW- 硝子の街にて(14)

コンピュータのY2K問題が大きな話題になる1999年11月。伸行の勤めるスカイトラベル社も年末年始の旅行シーズンを前に忙(せわ)しさを増していた。その最中、取引先企業の入居ビルで火災が起こり、死者も出た。遺体の中に出火以前に死んでいたと思われる検死結果が出て、事件、事故、両面の可能性をさぐりながら、殺人課警部補のシドニーも捜査に加わることになった。どこまでもピュアなNYラブストーリー!!

転-WALLOW- 硝子の街にて(15)

やりきれない、この思い。どこまでもピュアなNYラブストーリー!!アップタウンの名門私立小学校で発砲事件が起きた。発砲した7歳の少年は行方をくらまし、密かに勤務先を退職していた少年の父も失踪した。恵まれていたはずの家庭に何が起こったのか。少年は、なぜ発砲したのか。NY(ニューヨーク)市警殺人課警部補のシドニーは捜査を開始するが、その途上で、少年の父が株の取引に関係していたことがわかる。

兆-FORESHOW- 硝子の街にて(16)

2000年8月中旬――。日本のお盆休みのため、ノブは連日ツアーで忙しい。そんな折、シドニーの陸軍士官学校時代の先輩、ケネス・カストナーがアパートで遺体となって発見された。自殺かと思われたが、FBI捜査官のジェイスンが、他殺に違いないと主張する。ジェイスンと同じく湾岸戦争のときに兵役拒否をし、民間企業に勤めたケネスに、いったい何が起こったのか?さまざまな兆しが、大きなうねりとなって新世紀につづく。

潮-FLOW- 硝子の街にて(17)

2000年12月、21世紀まであとひと月。年末年始の繁忙期を前に、同僚の野々村清美と山科誠の結婚式も間近い。出張中のノブの父・石田泰行(いしだやすゆき)氏が泊まっているNY(ニューヨーク)の高級ホテルで、気鋭の女性カメラマンが殺害された。その対応に追われるシドニーを残し、手術を受けた祖父を見舞うため、ノブは束の間東京へ戻る。そこでノブがした、ある決意とは。どこまでもピュアなNYラブストーリー。

翳-SHADOW- 硝子の街にて(18)

2001年―― 風薫る5月。スカイトラベル社の若い女性ツアー客が行方不明になった。折しもその晩、ウエスト・ヴィレッジのアパートで火災が起き、遺体が発見される。そばにあったバッグとパスポートのコピーから、行方不明の女性と思われ、ノブたちは慄然とするが――。NY市警の捜査がすすむうちに、1993年に起きた爆発テロ事件が浮上してくる。輝くメトロポリスの光と影。どこまでもピュアなNYラブストーリー。

風-BLOW- 硝子の街にて(19) 9・11その朝

その日。二機の旅客機がツイン・タワーに激突した。ニューヨークを描き続けてきた著者、渾身の鎮魂歌。2001年9月11日。空はどこまでも高く、蒼く、爽やかだった。前夜、ささいな喧嘩をしたノブとシドニーの目に映ったものは、紅蓮(ぐれん)の炎を上げるツイン・タワー。NY消防局のスティーブはシフト明けだったが、出動命令がだされるやいなや、ビルへ向かって飛び出していく。それぞれの9・11が始まった。

悼-SORROW- 硝子の街にて(20) 9・11その夜

瓦礫(がれき)の山となったグラウンド・ゼロ。9.11の夜。宵闇のなかで崩落したツイン・タワーはどす黒い煙を吐き続けている。ロウァ・マンハッタン一帯が停電する中、スティーブは同僚とともに懸命の救助活動を続けた。災害発生から72時間、いわゆる“黄金の72時間”にどれだけの人間を救えるのか? ノブもシドニーも、互いの安否を気遣いながら、それぞれの仕事に立ち向かう。どこまでもピュアなNYラブストーリー。

暁-SUNGLOW- 硝子の街にて(21) 9・11その後

9.11から半月が過ぎた。グラウンド・ゼロはまだ燃えている。瓦礫の亀裂から煙が立ち上っているのだ。炭疽菌騒動も起き、NY(まち)は閑散としていて、スカイトラベル社も閑古鳥が鳴いている。そんな状況を変えようと、ノブはある提案をする。一方、シドニーが担当した事件には、テロで受けた精神的な疵痕がまざまざと残されていた。そんななか、スティーブの所属する第19分隊が閉鎖されるという噂が流れる。

友-FELLOW- 硝子の街にて(22)

ノブ&シドニーのNYラブストーリー、ついに完結!! 2002年3月11日。半年前に崩壊した2本のタワーが漆黒の闇に甦った。「光の追悼」である。感無量の想いで眺めているノブに、東京にいる父・泰行から緊急の電話が入った。祖父が危篤だという。ノブはすぐに東京へと向かった。その夜、警察無線を使った若い女性のヘルプコールが入り、シドニーは現場へと急行する。「硝子の街にて」シリーズ、いよいよ感動の完結編!