あらすじ

人の心の声が聞こえる青年・一成は名家の令嬢だが口のきけない少女・七名と婚約するが、1年の間に七名の声が出なければ婚約を解消しようと密かに考えていた。ある日、七名の弟が七名を連れ戻しにやってきて…!?
君ノ声 1

時は大正。人の心の声が聞こえる京極一成は、その力を活かして商社を経営する敏腕社長だ。事業は順調だがその力のせいで人を信じることができず、彼はかなりひねくれた性格をしていた。一成は資産と人脈を目当てに名家である諏訪部家の令嬢に縁談を申し込むが、縁談相手の諏訪部ななからは心の声が聞こえないうえ、彼女は声を出して話すことができなかった。戸惑う一成だが、勢いで二人は夫婦になってしまい…? 不器用で幸せなふたりの結婚生活が始まる。

君ノ声 2

人の心の声が聞こえる青年・一成は名家の令嬢だが口のきけない少女・七名と婚約するが、1年の間に七名の声が出なければ婚約を解消しようと密かに考えていた。ある日、七名の弟が七名を連れ戻しにやってきて…!?

君ノ声 3

取引先との商談に七名を連れ出したことを悔やむ一成の前に、七名の父・諏訪部家当主が現れる。七名を娶る気なら諏訪部家との縁を切るように告げられた一成は「時間が欲しい」と告げ、七名に自分は「人の心の声が聞こえる」ことを告白する。「隠し事があるなら話してほしい」という一成の言葉に対し、七名は一成を想い本当のことを告げることができなかった。それから一成と七名の想いはすれ違い、周りの人々が心配するほどぎこちないものに変わってしまって──!?

君ノ声 4

クロードに連れ出された七名を見つけた一成だったが、クロードの手下によって動きを阻止されてしまう。一方、七名は一成の元へ向かおうとするが、クロードに抱き締められたことで叶わなかった。「貴方が私のものにならないのなら、貴女の手で終わらせてほしい」七名への想いが溢れるあまり、クロードは七名にナイフを握らせその刃を己に向けて──!?

君ノ声 5

やっとの思いで一成を見つけ出した七名だったが、一成は記憶を失っていた。七名は、そんな一成を献身的に支えていたなな恵から、「二度と彼に近づかないで」と警告されてしまう。一成の回復を祈り、毎日のように人知れず屋敷の近くまで見舞いの品と手紙を置きに足を運ぶ七名。その様子を見ていたクロードの手下によって一成と七名は再会を果たすも、彼から告げられたのは「なな恵と結婚する」という七名にとってつらく悲しい言葉で──。

君ノ声 6

記憶を取り戻した一成は、仲間たちに自身の耳について告白する。しかし、一成と七名の能力を知ってもなお、仲間たちの態度は変わらなかった。一成と七名の間を引き裂こうとしたクロードの心からの謝罪を受けた七名はクロードを許し、和解する。そうして、ふたりが穏やかな生活を過ごし始めたある日、元諏訪部家従者の塔真が一成の前に現れて──!?純愛を極めた大正恋物語、ここに完結!!

君ノ声

異能夫婦の想いを伝える物語

君ノ声 森永ミク
六文銭
六文銭

うまれつき他人の心が読めてしまう主人公が、 唯一読めないのが縁談相手の令嬢で、のちに夫婦となる女性。 この女性は声も出せないため、何を考えているのかわからず戸惑う主人公。そして、またこの女性にも密かな能力として心が文字として視えるという特殊能力を持った夫婦の話。 特に、人の心が読めることで、周囲の人たちの悪意にさらされていたこともあり、性格がヒネくれてしまった主人公。 その力を利用し商魂たくましくビジネスで成功をおさめたが、常に疑心暗鬼で、他人を信用することができない、なんとも悲しい状況。 そこに、全く心が読めない、かつ声も出せないから何を考えているかわからない女性が現れ、人生最大級に戸惑います。 いつもなら、それが善であれ悪であれ、手にとるようにわかる人の心が、彼女に対しては全くわからない。 だからこそ、聞きたくなるし、知りたくなる。 不幸な境遇にありながらもけなげに生きる姿に、心が見えなくても思いが伝わり、二人は夫婦として生活することになる。 普段と勝手が違うことで誤解を重ねながらも、不器用に一途に思いあう夫婦の形は、異能を通して、本来の人のあるべき姿を描いているようで、じんわり響きました。 また、奥さんのほうも、実は心が文字として視える能力があるのですが、言葉を発することができないので、主人公はわかっていない状況。 声を発することができなくても気持ちが伝わり、奥さんがそっと彼の悲しみに寄り添う、この姿もまた良いですね。 お互い特殊能力がありながらも、一方で制限されているからこそ、描ける表現だと思います。 奥さんのほうが声を出せるようになれば、主人公も彼女の心がみえるようになるそうで、今後どうなっていくのか、特に二人の想いが最後どうやって伝わるのか楽しみです。