あらすじ母が死んだ。私と、父と、年子の妹を残して。厳格で几帳面で、家族の変化を許さなかった母。そんな母が嫌いだった。その顔はまるで「能面」のようだった。あの能面顔は、女に絶望した女の顔だったのだろうか?ともあれ、ようやく私は自由になったんだ!これからなんだって…。
重苦しい空気が漂う。思わず息を殺してしまうような、緊張感。 「みっともない」が口癖の厳格な母が亡くなった。 光のない真っ黒な目で描かれた姉妹の表情からは、悲しみも喜びも読み取れない。 母からの抑圧から解放されてもいいはずなのに、呪いのように絡みついて離れない。 家の中のことは外からは見えない。家族から教わったことは常識として自分に染みつき、他者とは比べにくいから間違っていたとしても気づけない。 気づいたときには逃れられない呪いとなってしまっている。 救いのないラストシーンの様だけれど、あれは呪いを壊すための行為なんだと思いたい。救いなんだと思いたい。