絶望集落

色々惜しかった作品

絶望集落 蔵石ユウ 白山一也
六文銭
六文銭

民俗学とかに出てくる「経立(ふったち)」と呼ばれる、長年生きたことで妖怪や魔物といった怪異になってしまった生き物に、人間が襲われるという話。 本作では、主に猿がそれに該当します。 田舎の限界集落。 突如、崩壊する平和。 容赦なく襲ってくる人外たち。 この設定・展開と「食糧人類」の原作者ということもあれば、否が応でも期待値が上がるものですが、残念ながら3巻で終了。 納得半分、惜しいなと思う気持ちが半分なところ。 納得なところは、登場人物に感情移入できなかった点。 おそらく、女子高生・鶴田がヒロインなのかもですが、正直、彼女の立ち位置がよくわからなかった。 というのも、彼女は、祖父とともに猟師をしていた女子高生で、銃も使える設定。 そうであれば、彼女を軸に経立と戦うのか?と考えてしまうのですが、実際はそうではない。 特に山の中での経験から、冷静な立ち居振る舞いをするのですが、育ててくれた祖父が死んだとわかっても、経立に対し激情に駆られたり復讐心に燃えることもない。 村の人間が次々に殺されても、淡々と逃げることを考えるあたりが、どうにも腑に落ちず、応援したくなるような感情移入もできなった感じ。 (リアリティがあると言えばそうかもしれないですが) それ以外にもよくわからない狂キャラ(頭おかしくなったキャラ)が多く出てきて、そんなキャラに対して真っ当な正義感(この場合だと、経立と戦ったり、弱い人を守る意志のある正義)をもっているワケでもない主人公とヒロインがまざって、全体的にまとまりがない印象をうけました。 皆思い思いの行動している感じ。 ただ一方で、経立の残虐描写がエグいので、限界集落のなかで奴らに大勢で囲まれたり、突如目があったりすると、その緊張感が半端なく、次へ次へと読みたくなる仕掛けは凄かったです。 最後、どう終わるのか気になったのですが、全体的に消化不良で終わります。 もう少し続けて、謎だった部分を掘り下げて欲しかったなぁと思えるので、やはり色々惜しかった作品なんだと思いました。

食糧人類-Starving Anonymous-

人類VS人外ものの名作

食糧人類-Starving Anonymous- イナベカズ 蔵石ユウ 水谷健吾
六文銭
六文銭

個人的な感想で恐縮なのですが、正直コレ系の作品って冒頭からインパクトのあるテーマ・設定とショッキングなシーンがテンコもりなので、後半はダレる傾向にあると思っているんですよ。 最初の期待値を超えてこないというか。 でも、本作は最後まで読めてしまい、最初から最後まで裏切らない感じが面白かった証拠だと思います。 7巻で短くもないですが、長編ほどでもないのも良かった。 さて内容ですが、 とある星からきた虫みたいな異星人の食欲を満たすために、人間が食料になるという設定。 その異星人は、想像にもれず大きくて凶暴。 そこで国が、核処理場と偽って、人間を家畜のように繁殖・飼育できる施設をつくる。 主人公は、その施設に入れられてしまい、現実離れした世界に恐怖し脱出をはかろうとします。 同じように施設から出ようとする、ないしはこの施設と深い関係のある2人の人間、山引とナツメと出会い・・・という流れ。 この2人の人間が、特殊能力があったり色々いわくつきで、そこから展開されるストーリーは、想像の斜め上をいって飽きないんです。 (若干、ご都合主義的な部分もありますが、それはご愛嬌で。) 特に、最終的に上記の異星人と対峙するのですが、その倒し方が秀逸すぎて・・・ 過去こんな残虐な(色んな意味で)倒し方があったのか?と唸りました。 また、虫みたいな異星人のフォルムがキモい上に残虐で、そのグロ表現も本作の魅力です。 文明が高度に発達した星から来たとか言っているけど、腹減りすぎると共食いはじめるとか、その知性のカケラもない行動に不気味さを加速させます。 人外VS人類、パニックホラー、SFにピンときた人はおすすめしたい作品です。