そばの蘊蓄より、そばに纏わった人情話が温かで面白い。何度も読める作品ですね⚾️
そば屋、といっても普通のおそば屋さんではありません。めったに店が出ない神出鬼没の屋台のおそば屋さん。その店主も有能だった元旗本が早隠居して、家族に隠れて商っているという異色の存在。そんなそば屋のまわりでおこるいろいろな事件を、主人公の牧野がそば屋の店主として、また以前の人脈や剣の腕で解決していくお話。武家の顔と町人の顔を使い分ける主人公はかっこいい!家族や周りの人に正体がバレそうになったり、実際バレてしまったりするのもまた楽しい。ストーリーそのものは昔ながらの時代劇を見ているような勧善懲悪展開が気持ちいい!またそば屋で出すおそばも楽しみの一つ。主人公が結構なそば馬鹿で、屋台で出すそばが毎回工夫が重ねられているので、読んでるとそばを食べたくなります。絵も綺麗でテンポも良く、すいすいと読み進められる名作だと思います。
私、そばは大好きです。ですのでこの作品はおさえねばと勢い込んで読んだら、旗本のセカンドライフなんて想像すらしませんでした。かといって期待外れかというとそんなことはありません。そば好きが高じて担ぎ屋台の親爺になってしまった、牧野玄太郎という旗本の若隠居で元勘定方が主人公。彼がこの屋台・幻庵に顔を出す人の困りごとを解決するためにひと肌脱ぐという人情時代劇で、時代物にありがちな説教くささもなく、登場人物がわいわい楽しみながら人助けをしているのがいい。元役人だと遠山の金さんみたいな展開になりそうですが、玄太郎は見栄は気っても大暴れするようなタイプではなく、肝心なところは元同僚や後輩にお任せ。お願いするときのお土産はもちろんそば。権力乱用?もあったりして適度に力が抜けたところが良い味出してます。表紙にも描かれているそばばっかり食ってる芸奴は濃厚な玉子、端正な顔立ちの息子はほろ苦い薬味、といった風情。シンプルな話で後味よく、いつでもどこでも味わえる品。一度ご賞味ください。
そばの蘊蓄より、そばに纏わった人情話が温かで面白い。何度も読める作品ですね⚾️