カメラ趣味には大きく二つの指向がある。一つは最新の機材で厳密な撮影を行う指向、もう一つはゆるさや味わいを求める指向。この作品の指向は、後者。 この作品に登場するのはフィルムカメラ。主人公が別れの間際に姉から貰ったのは、トイカメラと呼ばれる物。トイ=おもちゃだが、撮るのが簡単という訳では無い。普通のカメラに慣れていると戸惑う代物で、失敗も多く……というのは作中の通り。 ままならないこのカメラを託された高校生の妹は、入学の桜の下で美少女と出会う。 性格の明暗はあるものの、二人ともどこか不器用。二人の会話の拙さ、思いが言葉にならない感じは、もどかしいが自分の普段の会話を見ている気がする。 二人は撮る/撮られるの関係性を通じて仲をじんわりと深めていく。この二人にそれぞれの、離れて暮らしている姉を加えた四者の関係は、「離れている」事で色々な事が少しずつ繋がったり、分かったりするのが面白い。 それぞれが心に抱える「ままならなさ」と、フィルムカメラの微妙な間・もどかしさ・味わい・待つ楽しみなどが絡み合い、そのもどかしさがクセになるような、不思議で楽しい読み味だった。
カメラ趣味には大きく二つの指向がある。一つは最新の機材で厳密な撮影を行う指向、もう一つはゆるさや味わいを求める指向。この作品の指向は、後者。 この作品に登場するのはフィルムカメラ。主人公が別れの間際に姉から貰ったのは、トイカメラと呼ばれる物。トイ=おもちゃだが、撮るのが簡単という訳では無い。普通のカメラに慣れていると戸惑う代物で、失敗も多く……というのは作中の通り。 ままならないこのカメラを託された高校生の妹は、入学の桜の下で美少女と出会う。 性格の明暗はあるものの、二人ともどこか不器用。二人の会話の拙さ、思いが言葉にならない感じは、もどかしいが自分の普段の会話を見ている気がする。 二人は撮る/撮られるの関係性を通じて仲をじんわりと深めていく。この二人にそれぞれの、離れて暮らしている姉を加えた四者の関係は、「離れている」事で色々な事が少しずつ繋がったり、分かったりするのが面白い。 それぞれが心に抱える「ままならなさ」と、フィルムカメラの微妙な間・もどかしさ・味わい・待つ楽しみなどが絡み合い、そのもどかしさがクセになるような、不思議で楽しい読み味だった。