『グランド・ブタぺスト・ホテル』『ムーンライズ・キングダム』のウェス・アンダーソン監督最新作『犬ヶ島』を『ドラゴンヘッド』『東京怪童』の望月ミネタロウが完全コミカライズ
映画版とは違う描写もあるし、望月先生らしさも感じられて楽しいのだけど、唐突に終わってしまうのが残念。これだったら最後のページで無理やり解決させなくても良かったんではと思う。
ドラゴンヘッドを境に、線の多くて動的な暗いコマ作りから、線の少ない静的な明るいコマ作りへとペンタッチを改め、さらにはペンネームまでをも改めた望月ミネタロウですが、近年では静的なペンタッチにさらに磨きがかかり、ほとんどコマのなかで繰り広げられる人形劇といわんばかりになっています。 そんな望月が新たに選んだ主題が、映画監督からストップモーションアニメの監督に触手をひろげるウェス・アンダーソンの最新ストップモーションアニメです、そして、このめぐり合わせは何と起こるべきして起こったことなのでしょう。 ウェス・アンダーソンというひとは映画監督の時代からすでにストップモーションアニメのような画面をつくっていました、それこそ役者さんに人形劇の人形のような演技をさせるんですね。はたしてそんな映画が面白いのかというと、これがほんとうに面白い。本来ならカメラが追うべき人間が止まっていることで、かえって、カメラに映るそれ以外の全体が、つまりは物語の全体が躍動してくるのです。人は止まっているのに列車は走っているとか、人は止まっているのに自動車が家に突っ込むとか、そんな当たり前の物の動きがいっそう躍動してみえるのです。 望月が静的なコマ作りで目論んだものとは、まさしく、生まれもジャンルも異なるウェス・アンダーソンと知らず知らずのうちに共鳴してのことだったのではないでしょうか、望月はコマを静止させることで、かえって、コマからコマへの連結を躍動させしめたのです。ゆえに、ウェス・アンダーソンと望月ミネタロウの邂逅は必然的なものと言わざるを得ないと思うのです。
映画版とは違う描写もあるし、望月先生らしさも感じられて楽しいのだけど、唐突に終わってしまうのが残念。これだったら最後のページで無理やり解決させなくても良かったんではと思う。